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「コレステロール高め」のあなた、それDHA/EPAサプリのせいかも。7万人データで判明【最新論文】

黒澤恵(Kei Kurosawa)医学情報レポーター

健康のために飲んでいるサプリがアダに?

サプリ飲んでますか?

2020年の日本におけるサプリメントの総売り上げは1,600億円を超えているそうです(株式会社矢野経済研究所調べ)。1,600億円といえばTwitter社の3カ月間売り上げとほぼ同額です(NHK報道)。自分の体調や年齢に合わせたサプリを飲んでいる人は少なくありません。

でもそのサプリがもしかすると「悪さ」をしているかもしれないという、驚きのデータが報告されました。血液をサラサラにすると言われている「DHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸」ですが、悪玉コレステロールを増やしている可能性もあるのです [文末文献1]。

【注意】本記事は最新の医学論文についての紹介あり、研究結果の内容はあくまでも「論文筆者」によるものです。また論文の解釈は論者により異なる可能性もあります。あくまでもご自身の見解形成の参考としてお読みください。

脳梗塞や心筋梗塞の危険性を高める悪玉コレステロールがDHA・EPAサプリで上昇?

「悪玉コレステロール」(LDLコレステロール)は血管壁の内部に入り込み、「プラーク」と呼ばれるコブを作ります。そしてそのプラークが破裂すると、内部に溜まっていたコレステロールや死んだ細胞などが血中に放出され、血液は凝固して血流は途絶。それより先の血管から栄養や酸素を受け取っている細胞は死んでしまいます(脳梗塞や心筋梗塞)。

だから悪玉コレステロールはできるだけ増やしたくありません。これはすでによく知られていますよね。その悪玉コレステロールが、なんとDHA・EPAサプリで増えてしまうかもしれないのです。

この論文が掲載されたのは、「米国心臓協会雑誌」(JAHA)という学術誌。米国心臓協会(AHA)といえば権威・信頼性とも、世界で一二を争う由緒ある医学団体です。報告したのは澳門科技大學(中国)のTianjiao Wang氏たち。6月2日掲載の論文を簡単にご紹介します。

信頼性の高い「ランダム化比較試験」を統合解析

Wang氏たちが今回解析したのは、DHAサプリとEPAサプリがコレステロールや中性脂肪に与える影響を調べたランダム化比較試験と呼ばれる研究です。文献データベースから90の試験(参加者数は7万人以上)を探し出し、それらのデータを統合しました。

ランダム化比較試験:比較する2群(以上)に参加者をくじ引きで振り分ける試験。どちらかの群が有利になるような人為性を除外できるので信頼性は高いと考えられています。

するとDHA+EPAサプリは、飲む量が増えるほど中性脂肪(の血中濃度)を減らしていました。これは良い影響です。

1日3000mg以上摂らないとDHA+EPAサプリは逆効果の可能性も

しかしその一方悪玉コレステロール(LDLコレステロール)は、DHA+EPAサプリの1日摂取量がおよそ3,000mg(3g)を超えないと濃度が上昇していたのです。

このグラフから読み取れば、EPA・DHEサプリで悪玉コレステロールが5mg/dL以上も上昇していた人もいたことになります。

ただし長期間観察した場合、中性脂肪を下げる「良い働き」と悪玉コレステロールを増やす「悪い働き」のどちらが、血管により大きな影響を与えるのか、その点は明らかではありません。

ただ「食事も生活も気をつけているのにコレステロールの値が良くならない」「中性脂肪はドクターから褒められるのに悪玉コレステロールだけ注意される」、そんな経験をしていたらサプリを見直してみるのも一つの方法です。

サプリや薬剤については次のような論文紹介記事も書いています。こちらもぜひ、お読み下さい。ではまた!

今回ご紹介した論文

DHA・EPAサプリに悪玉コレステロールを増やす可能性 [無料・英語]

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医学情報レポーター

医療従事者向け書籍の編集者、医師向け新聞の記者を経てフリーランスに。10年以上にわたり、新聞社系媒体や医師向け専門誌、医療業界誌などに寄稿。近年では共著で医師向け書籍も執筆。国会図書館収録筆名記事数は100本超。日本医学ジャーナリスト協会会員(いずれも筆名)。

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