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三権分立の幻想を捨て議院内閣制を深化させるべし

田中良紹ジャーナリスト

フーテン老人世直し録(340)

霜月某日

 安倍総理の明恵夫人が名誉校長を務めていた「森友学園」への国有地売却について、会計検査院は22日に「値引きの根拠不十分」とする検査結果を参議院に報告した。同じ日に大阪地裁は7月に逮捕され詐欺罪で起訴された籠池夫妻の保釈申請を却下した。

 このタイミングで籠池夫妻が保釈されメディアの前に姿を現せば、「適正でない話」がさらに大々的に報道されることになり、しかも国会が開かれている最中だから野党を勢いづかせることになって安倍政権には都合が悪い。

 会計検査院の報告を受け麻生財務大臣と石井国土交通大臣は「重く受け止める」と同じ言葉を発し、財務省はすぐに国有財産の処分手続きを見直す方針を公表した。これでこの問題を「幕引き」にしたい態度がありありである。

 予算が適切に使われているかどうかをチェックする会計検査院は、建前では内閣、国会、裁判所のいずれからも独立している。しかしこうした一連のタイミングを見ると、会計検査院も裁判所も財務省も国土交通省も権力を持つ側は見事に連携していることを伺わせる。

 我々は学校で民主主義の基本は三権分立にあり、立法、司法、行政が互いにチェックし合って暴走させない仕組みだと教えられた。日本国憲法にそう書かれているからである。しかし現実の政治を取材するとそうではないことを嫌というほど思い知らされる。

 かつてフーテンはロッキード事件を捜査する東京地検特捜部を取材したが、政治家の悪を摘発する特捜部をその頃の日本人は政治から独立した存在と錯覚し「正義の味方」として大いに声援を送った。

 しかし検察はそもそも司法ではなく内閣の一機関であり、政治から独立しているどころか法務大臣や総理大臣の指揮下にある。田中角栄氏が逮捕されたのは総理を辞めた後だからであり、あの事件を指揮した稲葉修法務大臣も三木武夫総理大臣も田中の政敵であった。

 検察が政治権力の都合によって動かされることはそれ以前の「造船疑獄」でも明らかだが、「造船疑獄」以来検察とかかわりを持った佐藤栄作は政敵を次々に摘発してくれた検察のおかげで長期政権をものにした。ところが国民は検察を政治から独立した存在と考え、「巨悪を眠らせない」組織と見る癖がいまだに抜けない。

 そもそも日本の政治制度はイギリスと同じ議院内閣制で、国会で多数の議席を持つ者が内閣を組織するから国会を制した者が行政も支配する。司法だけは独立していると思われがちだが最高裁判事の人事権を握るのは内閣である。つまり三権分立は建前に過ぎない。

 学校では三権分立よりイギリス型の議院内閣制を教える方が現実的だと思うが、我々はほとんどイギリス型の議院内閣制について教えられていない。一方で戦後日本を占領したアメリカの大統領制による政治の影響を強く受けている。

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ジャーナリスト

1969年TBS入社。ドキュメンタリー・ディレクターや放送記者としてロッキード事件、田中角栄、日米摩擦などを取材。90年 米国の政治専門テレビC-SPANの配給権を取得。日本に米議会情報を紹介しながら国会の映像公開を提案。98年CS放送で「国会TV」を開局。07年退職し現在はブログ執筆と政治塾を主宰■オンライン「田中塾」の次回日時:11月24日(日)午後3時から4時半まで。パソコンかスマホでご覧いただけます。世界と日本の政治の動きを講義し、皆様からの質問を受け付けます。参加ご希望の方は https://bit.ly/2WUhRgg までお申し込みください。

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