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なぜダメ営業はこんなことも言えないのか? 商品紹介、会社紹介、自己紹介を15の切り口で徹底解説

横山信弘経営コラムニスト
(写真:イメージマート)

営業経験がない人は驚くかもしれないが、自社や商品についてうまく説明できない営業はとても多い。一般のビジネスパーソンよりはマシかもしれないが、商品のアピールポイントさえスラスラ話せない営業のほうが圧倒的に多いのである。

私は過去20年近く、組織営業力アップの支援をしてきた。そのうえで断言できる。会社紹介、商品紹介、自己紹介もまともにできない営業が、売れることはない。もしそれでも売れるのなら、営業本人ではなく、会社のブランドや商品の力のおかげと受け止めたほうがいい。

ではどうやって会社、商品、自己紹介をしたらいいのか? 今回はそれぞれを7、4、4の切り口を使って徹底解説する。とくに新規開拓が苦手な営業にとっては必読の記事である。ぜひ最後までお付き合いいただきたい。

■ダメ営業の商品紹介

まずダメな営業はどんな会社紹介、商品紹介、自己紹介をしてしまうのか? 3つのダメポイントを紹介しよう。

(1)覚えていない
(2)その場で考えながら話す
(3)抜け漏れが多い

たとえば「あなたの名前は何ですか?」と質問されたら、誰でも考えずに答えられるだろう。

「あなたの出身地は?」

「ご家族は何人ですか?」

と尋ねられたときも同じだろう。「突然そんなこと言われても」「ちょっと待ってくださいよ」「えーっと……」と考える人はいない。これらの質問にはストレスなく即答できるはずだ。

しかし、会社紹介、商品紹介、自己紹介のいずれかをしてください、と言われると、

「突然そんなこと言われても」

「ちょっと待ってくださいよ」

「えーっと……」

と考えてしまう営業はとても多い。なぜ、こんなことになるのか? 新規開拓をほとんどせず、「引き合い対応」ばかりやっているからだ。

車の営業でたとえてみよう。

日本車の代表的な存在であるトヨタのカローラ。この車を、トヨタも、カローラも、まったく知らない人に説明してくださいと言われて、販売ディーラーの営業ははたしてうまく話せるだろうか? 

モデルチェンジ後の変更点や、どんなオプションがあるかの説明ぐらいしかできない営業も多い。現在は高度情報化時代である。事前に調べて来店するお客様が多い。そのせいで営業はトヨタという会社をどう紹介したらいいのか、カローラをまったく知らない人にどう魅力を伝えたらいいのかを考える機会をなくしてしまっている。

■商品紹介7つの切り口

それでは、どのように商品の紹介をしたらいいのか。まずは商品紹介7つの切り口を解説しよう。以下の7つの切り口で考え、商品紹介のフレーズを発散させるのだ。

慣れない人は、難しく考えないこと。大事なのは頭の体操である。7つの切り口でアイデアを発散し、一つや二つに絞り込めばいいのだ。相手やシチュエーションに合わせて使い分けてもいい。

(1)有益性(ベネフィット)
(2)権威性(社会証明の原理)
(3)具体性(数字)
(4)独自性(差別化要因)
(5)話題性(最新のニュースから)
(6)意外性(常識と異なる視点)
(7)物語性(時系列でわかりやすく)

それでは、当社の商材名である「予材管理」を使って、7つの切り口で考えてみる。少しムリヤリ感があるが、ご容赦いただきたい。一つ一つ確認してもらいたい。

(1)有益性(ベネフィット)

「予材管理」とは、営業目標を絶対達成させるマネジメント手法である。

「予材管理」とは、営業目標を絶対達成させられるだけでなく、期末よりも3ヶ月も4ヶ月もはやく達成見込みにできるマネジメント手法である。

「予材管理」とは、目標の2倍の予材をあらかじめ仕込んでマネジメントするだけの、とてもシンプルなマネジメント手法なので新任マネジャーでもすぐに覚えられ、実践できる。

(2)権威性(社会証明の原理)

「予材管理」とは、2011年からダイヤモンド社、日経BP社の書籍やコラムがベストセラーになったことで注目された独自の営業マネジメント手法である。はじめて紹介されたダイヤモンド社の『絶対達成させる部下の育て方』は、現在でも増刷されるほどの超ロングセラーであり、いまだに書籍を読んだ経営者やマネジャーからの講演依頼が後を絶たない。

(3)具体性(数字)

「予材管理」とは、目標の2倍の予材をあらかじめ仕込んで絶対達成させる営業マネジメント手法である。

「予材管理」とは売上アップではなく、3期以上連続で事業目標を達成させられる組織を作ることを目的としている。

(4)独自性(差別化要因)

「予材管理」とは、営業個人のスキルアップに頼らず、マネジメントスキルの向上のみで目標を安定して達成させられる手法である。

「予材管理」とは、とくに歴史があり、技術力が高く、「引き合い対応」が多い成熟企業に向いたマネジメント手法である。

「予材管理」は、インデックス投資信託と似ており、短期的な視点で成果を実感することは難しいが、長く運用すればするほど実績が高くなる特徴がある。

(5)話題性(最新のニュースから)

「予材管理」とは、2024年の「大企業が注目するスキルランキング」で第二位にランクインした話題の営業マネジメント手法である。(※事実ではない)

(6)意外性(常識と異なる視点)

「予材管理」とは、35歳まで営業経験がまったくないITコンサルタントが、従来の営業マネジメントの概念を根底から覆す発想で創り上げた手法である。

(7)物語性(時系列でわかりやすく)

「予材管理」とは、1980年代、三和銀行の業績を圧倒的に押し上げたマネジメント手法を源流とした営業マネジメント手法である。この手法はアタックス・セールス・アソシエイツのコンサルタントと、多くのお客様の手により20年もの間、改良を重ねてきた。その成果もあり、現在の「予材管理」は、あらゆる業界にも使いやすいメソッドとして、特に成熟企業を中心に普及している。

どうだろう? 1つの商材をいろいろな視点で表現することにより、奥行が出てくるものだ。一人で7つの切り口でアイデアを発散させたら、他の営業が出したアイデアとも照らし合わせてみよう。相当量のアイデアが集まるはずだ。

(全員で考えるべきではない。必ず一人一人がアイデアを出すこと)

アイデアが出そろってから、全員で検討し、絞り込んでいくのだ。

■会社紹介4つの切り口

商品紹介のフレーズを考えたあとは、会社紹介のアイデアも発散させよう。その会社に就職するのならともかく、そうでないなら会社紹介に求めるのは「信用」と「信頼」である。

信用できるような実績があるのか。この業界で長く支持されているのか。社会的に認知度が高いのか。権威性の高い機関から認められた過去があるのか。このような過去から現在にかけての評価を全面に打ち出そう。

いっぽう信頼は未来に対する約束のこと。会社は何を目指しているのか。どんなビジョンを掲げているのか。お客様にどのような価値を提供しようとしているのか。これらを紹介フレーズに入れてみよう。

ただし忘れてはならないのは、商品に直接に関わる内容にすることだ。商品にあまり関係がないのに、

「当社はSDGsの活動に積極的です」

と言われても、お客様の心には響かない。全社を挙げて力を入れているので訴えたい気持ちはわかるが、まずは商品に直接関係のあるポイントに絞って、会社紹介のフレーズを考えよう。

(1)物語(過去)
(2)実績(過去)
(3)能力(現在)
(4)ビジョン(未来)

過去-現在-未来で分けると、頭が整理されやすい。では、4つの切り口にしたがってアイデアを発散してみよう。当社(アタックス・セールス・アソシエイツ)を例に、書き出してみる。

(1)物語(過去)

アタックス・セールス・アソシエイツは、75年以上の歴史があるコンサルティンググループ・アタックスの一員として誕生した。アタックスはアカウンティング(会計)とタックス(税務)の造語であり、会計士、税理士を中心に、企業の財務体質の改善をメインの事業として取り組んでいる。だから「予材管理」も損益計算書のトップラインである売上目標を絶対に達成させるメソッドとして確立している。

(2)実績(過去)

アタックスの顧問先は1700社以上にのぼる。歴史のある企業が多く、創業100年以上の顧問先もある。近年のメインテーマは「事業承継」だ。二代目、三代目の社長に代替わりした際にどう次のステージへと成長させるかを経営者と伴走しながら支援することに尽力している。その際の起爆剤として使われるのが「予材管理」だ。中期経営計画を絵に描いた餅にさせないため、「予材管理」によって安定して売上目標を達成させる必要があるからだ。

(3)能力(現在)

アタックスのコンセプトは「社長の最良の相談相手」になることだ。したがって、税務、会計、人事、営業、マーケティングなど、あらゆる経営課題について相談に乗ることができるよう、コンサルタントは教育されている。「予材管理」を導入する際も、この能力は大きく貢献する。なぜなら「予材管理」は営業組織だけが努力すれば運用できるわけではないからだ。目標の2倍の予材を仕込むためにも、製造部門や調達部門等、部門を超えて調整するため、社長と対等にコミュニケーションがとれる当社コンサルタントの力が求められるのである。

(4)ビジョン(未来)

現在も日本企業の60%以上が利益を出していない赤字企業である。経営目標を達成できていない企業は80%以上にものぼり、3期連続で達成できている企業にいたっては数%しか存在しない。そんな時代だからこそ、アタックス・セールス・アソシエイツは「絶対達成する会社を一社でも増やす」を理念に掲げている。「予材管理」を導入することで、財務体質が改善され、赤字企業が大幅に減る。そのことが社会貢献に繋がると思うからである。

どうだろう? 紹介する商品の信用、信頼を勝ち取ることができるような、そんな会社紹介のフレーズを考えてみよう。

■自己紹介4つの切り口

次に自己紹介のフレーズである。

自己紹介の切り口は会社紹介と似ている。だが個人の切り口なので、組織で統一できないところが大きく異なる。

とはいえ、営業である以上、会社紹介、商品紹介のフレーズと大きくかけ離れたフレーズにするのはよくない。たとえば

「私は、24歳のころから青年海外協力隊に参加し、3年間グアテマラという国に赴任していました。30年以上経った今でもスペイン語を話せます。そんな私ですが、どうぞよろしくお願いいたします」

と自己紹介したら、インパクトはあるだろう。初めて会った方にも顔と名前を憶えてもらえるかもしれない。しかし先ほど紹介した「予材管理」とは何の関係もない。こんな自己紹介では、営業コンサルタントとしての使命感が、まるで感じられないはずだ。

営業という立場で自己紹介するときは、自分視点で考えるのはやめよう。そのため自己紹介のフレーズを考えるときは、会社紹介、商品紹介のフレーズが決まってからにしたほうがいい。

とくに自分が扱っている商品に関わる自己紹介のフレーズを考えよう。切り口は会社紹介と同じ。以下の4つだ。

(1)物語(過去)
(2)実績(過去)
(3)能力(現在)
(4)ビジョン(未来)

では、それぞれの切り口にしたがってアイデアを発散してみよう。

(1)物語(過去)

私は35歳まで営業経験がまったくないITコンサルタントであった。ただ日立製作所で営業を支援するソリューション――SFA/CRMの設計開発・導入支援を経験し、営業の問題を異視点であぶり出すことができた。それが「予材管理」の着想に役立っている。

(2)実績(過去)

私は20年近く前に「予材管理」を考案し、200社以上の企業に導入してきた実績がある。「予材管理」に関わるセミナーや講演は1,000回を超え、「予材管理」を紹介するYouTubeチャンネルは登録者数2万人を超えている。

(3)能力(現在)

私は「予材管理」というシンプルなマネジメント手法を20年近く、多様な業界で使えるようにカスタマイズし、200社以上に導入支援をしてきた。現在も現場で支援を続けており、時代が移り変わっても「予材管理」を個別の組織に適応させる力がある。

(4)ビジョン(未来)

現在も日本企業の60%以上が利益を出せていない赤字企業である。目標を達成できていない企業は80%以上にものぼり、3期連続で達成できている企業にいたっては数%しか存在しない。そんな時代だからこそ、当社アタックス・セールス・アソシエイツは「絶対達成する会社を一社でも増やす」を理念に掲げている。私も当社の一コンサルタントとして「予材管理」の普及に努めていきたい。「予材管理」が導入されることで財務体質が改善され、赤字企業が大幅に減る。そのことが社会貢献に繋がると思うからである。

以上、自己紹介のフレーズを考えてみた。

これらの紹介フレーズは、1回や2回考えるだけでベストなものが生み出されるものではない。お客様の反応を見ながら、常にアップデートさせていく必要がある。まずは組織全員でアイデアを出し、持ち寄り、統一して、ブラッシュアップを続けてもらいたい。

ちなみに個人で考えるのに1時間以上は絶対にかからない。もし1時間以上かかるというのなら、考えすぎだ。中身の精度よりもスピードが大事なので1時間以内に終わらせよう。メンバーで集まって吟味する場合は30分以内で終わるだろう。

集まって読み合せるのは時間がもったいないので、事前に共有しておき、集まってからは吟味だけするのだ。正解などないので、まずは直観で決めてしまおう。

そしてフレーズが決まったら、よどみなくスラスラ話せるようになるまで繰り返し練習することだ。ここまで長文を読んでもらって申し訳ないが、フレーズの中身は1割だ。

「自信を持って紹介できるかどうか」

が9割である。どんなにクールな紹介フレーズを考えても、スラスラ自信を持って話せないのであれば、ほぼ意味がない。お客様が好意的に感じ取るのはフレーズの中身ではなく、営業の自信のある態度だからだ。

フレーズはすぐに決めてしまい、何ヶ月間も絶え間ない練習を積み重ねよう。毎日朝礼で唱和してもいい。頭ではなく、体が覚えるまで叩き込むことで、営業トークは見違えるように変わる。なぜなら営業トークは、商品紹介、会社紹介、自己紹介の組み合わせで成り立っているからである。ぜひ実践してもらいたい。

<参考記事>

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なぜコンサルタントのプレゼンは説得力があるのか? 「ピラミッドストラクチャー」徹底解説

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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