なぜ出社したがる人が減らないのか? テレワークだと「付き合い残業」「アピール残業」ができないから
■昭和的な「頑張っているアピール」
「テレワークでいちばんの問題は、残業アピールができなくなったこと。これがすごく痛い」
とある30代後半のサラリーマンから聞いた。
気に入られるために、上司が帰るまで付き合う残業を「付き合い残業」と呼ぶ。そして、上司が残業しようがしまいが、遅くまで残業していることで「頑張ってます」とアピールするのを「アピール残業」と呼ぶ。
どちらも、仕事の生産性を低くする悪しき日本の「昭和的」組織慣習だ。
ただ、残念なことに、たとえ「付き合い」のためだろうが、「アピール」のためだろうが、上司という生き物は、部下が遅くまでオフィスに残っていると、
「頑張っているな」
と思ってしまうもの。
営業のように、ハッキリと成果が数字としてあらわれる職種ならともかく、そうでないなら、遅い時間まで仕事をしていると、認めてやりたい気持ちになってしまう上司は多い。
これは、早朝でも同じだ。
朝早くからオフィスに出ている部下を目にしただけで、
「頑張っているじゃないか」
と思ってしまうものなのだ。
■「頑張っている」とは、どういうことか?
それにしても、なぜ残業はアピール材料になるのか?
日中、どんなに頑張って仕事をしていても、上司は、その仕事の中身を詳しく知らないと、「頑張っている」かどうかは評価できない。
しかし、時間外にオフィスにいるだけで、「頑張っている」と上司に見られるのは、何かを犠牲にして仕事をしていると思われるからだ。人は、「何か自分の大切なこと」を犠牲にしている人を見ると「頑張っている」ように見える。
だから、朝の早い時間から、もしくは夜の遅い時間までオフィスにいると、大切な自分の時間を犠牲にして会社のために尽くしているという「印象」が周囲に伝わる。
そのため、上司はついつい「頑張っている」と部下を評価してしまうのだ。100%ハロー効果だとわかっていても、部下にそういうレッテルを貼ってしまうものである。
そして成果などでアピールできない小賢しい部下は、率先して残業でアピールする。一度このアピール手法に手を染めると、なかなかやめられない。それが最もラクで、手っ取り早い方法であるとわかっているからだ。
■サラリーマンが生き残る術(すべ)とは?
ところが、である。
コロナ禍において、テレワークが義務付けられたとたんにアピール材料が減った。
在宅で早朝から仕事をしていても、夜遅くまで残業していても、上司は見てくれない。しょうがないから、朝早くとか、夜遅くに狙い撃ちしてメールを送るぐらいしかアピール手段はない。しかし、そんな夜討ち朝駆けのメールなどに効果などないだろう。
顔が見られないと、当然注目されるのが仕事の「成果」である。
プロ野球の試合だとわかりやすい。
実際に球場やテレビで観戦していたのなら、選手が頑張っているかどうかは肌で感じられる。しかしリアルに観戦していないのなら、翌日のスポーツ新聞で数字をチェックするしかない。
「4打数0安打か。しかも2三振。全然ダメだな」
と、ただ数字だけで評価されるのだ。
実際は、敵チームのファインプレーに阻まれたバッティングがあったとしても、観られていなければ評価されない。
残業は、「残業をしている姿」を見せるからこそアピールができる。なので単純に「残業時間」として数字で表現されると、何もインパクトがない。それどころか、現在は真逆の反応が返ってくるぐらいだ。
「残業が多い! 1ヵ月に40時間も残業だなんて、いったい何をやってるんだ」
と数字だけチェックされ、叱られる。
私は企業の現場に入って、目標を絶対達成させるコンサルタントだ。「付き合い残業」など絶対にさせないし、当然、残業アピールなど「マイナスポイント」と評価する。
テレワークが普及した結果、「生産性が落ちた」と評する日本人が多いが、それはこれまで、不要なパフォーマンスやスタンドプレーに明け暮れていた社員が多かったからだ。
もう時代は令和なのだ。平成も終わった。昭和的な発想はもうやめて、「義理人情」よりも、数字で表せられる「成果」でアピールすることが求められる時代だ。
テレワークをやめさせ出社回帰が進むが、それで本当に生産性がアップするのか、正しくデータで検証することが重要だ。