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「イイニクの日」を過ぎたいま、改めて「いい肉」とは何かを考える

松浦達也編集者、ライター、フードアクティビスト

さて昨日書いた「11月29日だから考えたい「いい肉」とは何かということ」の最後にこう書きました。

松阪牛ほどのブランドがあるならともかく、それほど強いブランドを持たない生産者がほとんどです。ではどうしたら生産者に、深い味わいの「いい肉」を育ててもらうことができるのでしょうか。いえ、最初に申し上げたように「いい肉」は生産者だけが作るものではないのです。

では「いい肉」とは誰が作るものなのでしょう。

「いい肉」とは、食べた人が満足できる肉である

この見出しに「食べ手が判断するのは当然だ」と思う人もいるでしょう。逆に「食べる人の感想は関係なく、肉の時点で良し悪しは決まっている」と考える人もいるかもしれません。どちらもある意味正しい見方です。

昨日の記事で、こんなことも書きました。

「いい肉」は生産者だけでも消費者だけでも成り立ちません。生産者がいて問屋や精肉店がいて、外食ならば飲食店、家庭でも調理する人がいて、ようやく食べる人の胃袋に届くのです

生体だった牛が、素材としての肉になり、料理としてわれわれ食べる人のところに届く。生産者の尽力は確かに尊敬すべきものですが、成体がわれわれのところに届くまでには以下のような流れがあります。

牛が肉となり、料理となって口に入るまで

1. (人工授精した結果)子牛が生まれる。

2. 繁殖農家が育成する。

3. 繁殖市場でセリにかけられ、肥育農家に引き取られる。

4. 肥育農家が肥育する。

5. 食肉センターで屠畜され、枝肉としてセリにかけられる。

6. 問屋に出荷される。

7. 精肉店/スーパーに卸される。

8. レストランのシェフ・家庭の調理人に届いて調理される。

9. 食べる人の口に入る。

これは一例で、繁殖・肥育一貫経営の農家は1~4までをワンストップ(ただし、繁殖、育成、肥育は別の技術なので、実際には分業に近いシステム)でやっている農家もありますし、問屋機能も果たしている精肉店や、直営の小売店を持っている問屋もあります。

とにかく工程だけでもざっとこれだけのステップを踏んで、牛は肉となり、料理へと姿を変えて私たちのところにやってきます。

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編集者、ライター、フードアクティビスト

東京都武蔵野市生まれ。食専門誌から新聞、雑誌、Webなどで「調理の仕組みと科学」「大衆食文化」「食から見た地方論/メディア論」などをテーマに広く執筆・編集業務に携わる。テレビ、ラジオで食トレンドやニュースの解説なども。新刊は『教養としての「焼肉」大全』(扶桑社)。他『大人の肉ドリル』『新しい卵ドリル』(マガジンハウス)ほか。共著のレストラン年鑑『東京最高のレストラン』(ぴあ)審査員、『マンガ大賞』の選考員もつとめる。経営者や政治家、アーティストなど多様な分野のコンテンツを手がけ、近年は「生産者と消費者の分断」、「高齢者の食事情」などにも関心を向ける。日本BBQ協会公認BBQ上級インストラクター

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