秋ドラマで名演光る柳楽優弥、藤原竜也、田中圭 タイトルより俳優たちの芝居が視聴者を引きつける
終盤に入った秋ドラマ。今期も飛び抜けた話題作が生まれていないなか、作品タイトルやストーリーよりも、俳優たちの名演が視聴者をドラマに引きつけている印象だ。
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とくに金曜ドラマ『ライオンの隠れ家』(TBS系)の柳楽優弥。
鋭い目つきと剣呑な雰囲気をにじませる彼のオーラからは、『ガンニバル』(ディズニープラス)の口が悪く凶暴性あふれる警察官役のような役がイメージとすんなり重なると思っていた。
しかし、『ライオンの隠れ家』の市役所で働く平凡で真面目な優しい青年・小森洸人役がハマっている。両親を事故で亡くした彼が、自閉スペクトラム症の弟と、幼い男の子・ライオンとの3人で平穏に暮らす生活には、2人への優しい眼差しにあふれ、家族を大切に思う温かい心がしみるように伝わってくる。
第9話では、暴力を振るっていた父のもとからライオンを連れ戻すことができず、自分の無力さへの悔しさと情けなさにむせび泣く。その姿に心を打たれるとともに、この青年のキャラクターを演じるのが柳楽優弥だからこそ、ここまで深く感情移入できたことに気づかされた。
柳楽優弥が演じる小森洸人を目当てに毎週ドラマを見る視聴者も多いことだろう。もとの彼のイメージとのギャップもあるかもしれないが、こういうタイプの役柄にシンクロした柳楽優弥も光っている。知らず知らずのうちに視聴者に印象を残す、柳楽優弥の役者としてのすごみを改めて感じさせられた。
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そして、『全領域異常解決室』(フジテレビ系)の藤原竜也と、『わたしの宝物』(フジテレビ系)の田中圭。どんな役を演じても、それぞれの個性がにじみ出て、2人が演じるからこそのおもしろさが常に作品を引き立てる。
『全領域異常解決室』の藤原竜也は、特別個性的な役柄ではないからこそ、藤原のかもし出す味がキャラクターを形作っている。後半の急展開で、藤原演じる興玉雅が、人間ではなく、現在に生きる神の1人である天石戸別神とわかったときも「でしょうね」という納得感と安心感があった。
藤原竜也の存在そのものに神のようなオーラがある気がする。ストーリーの展開も秀逸なドラマだが、キャスティングの妙がすばらしい。
『わたしの宝物』で田中圭演じる会社員・神崎宏樹は、第1話とそれ以降で人柄が豹変しているが、どちらも現代社会のどこにでもいるであろう1人の男のリアルがあり、その外見から内面までをしっかり体現している。
もともと田中圭には、さまざまなタイプのふつうの人を、ふつうに演じるうまさがある。個性的なキャラクターを演じるのと違って、それは簡単ではなく、役者としての技量が試される。本作では、そんなふつうの男が幸せの絶頂からどん底まで突き落とされる様を、変に感情的になるのではなく、心の揺れを繊細に表現している。本作も田中圭ありきで成立している物語だろう。
ただ、3作ともそれぞれの役者たちが視聴の入口になっていたとしても、その物語がしっかりしていなければ、彼らは輝かない。作品に恵まれている彼らだが、そういう作品を引き寄せる力がある俳優という見方もできるかもしれない。
今期においては、そんな彼らがドラマシーンをけん引しているように見える。
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