『踊る大捜査線』は令和に引き継がれるか 懐かしかったねで終わるのか #専門家のまとめ
連続ドラマの1997年初回放送から27年、今年12年ぶりに再始動した「踊るプロジェクト」。フジテレビの人気シリーズ『踊る大捜査線』の新プロジェクトとなり、新作2部作『室井慎次 敗れざる者』(10月11日より)、『室井慎次 生き続ける者』(11月15日より)が劇場公開された。
新作2部作の興行収入は合わせて35億円を超えるくらいになりそうだ。前作『容疑者 室井慎次』(38.3億円)とほぼ変わらない好成績であり、「踊るプロジェクト」への注目度の高さが示されていた。
そうしたなか、織田裕二が刑事・青島俊作を再び演じる『踊る大捜査線』シリーズ映画最新作『踊る大捜査線 N.E.W.』が2026年に劇場公開されることが12月4日に発表された。『室井慎次 生き続ける者』のラストから、踊るファンはわかっていただろう。それでもいっさいネタバレせずにプロジェクトを見守っていたなか、満を持しての公式発表にSNSもネットニュースも大いに沸いた。
ココがポイント
エキスパートの補足・見解
社会現象的なヒットとなった『踊る大捜査線』は、脱サラした刑事を主人公にする当時の一般的な刑事ドラマとは異なる視点と、フジテレビらしくもあるゆるさ(コメディ要素)が話題になった。
2003年に公開された『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』が打ち立てた興収173.5億円は、20年以上経ったいまなお2位に50億円以上の差をつける邦画実写記録の頂点に君臨している。
テレビ局による連続ドラマの映画化の先駆けとなった作品であり、2000年前後の洋画シェアが7割近かった映画興行における邦画ブームのきっかけを作った1作でもある。
そんなシリーズの12年ぶりの再始動プロジェクトには、『踊る大捜査線』というIPを令和に引き継ぐ狙いがあるだろう。ただ、本シリーズが一世を風靡した当時とは、市場環境が異なる。すでに多様なスタイルの刑事ドラマがシーンをにぎわせているなか、往年のファンだけでなく、若い世代を取り込むことができるのか。
青島という特異なキャラクターが活きる、いまの時代の新しい刑事ドラマに生まれ変わることが期待される。かつてと同じことの繰り返しになれば、踊るファンの「懐かしかったね」で終わってしまうだろう。シリーズを未来につなぐためには、令和の若い世代に受け入れられなくてはならない。
「踊るプロジェクト」の本筋は、シリーズを生み出し育ててきたレジェンド制作者たちが、次なる時代の若手へバトンを渡すことではないだろうか。2026年公開の『踊る大捜査線 N.E.W.』から、若手クリエイターによる新たな伝説がはじまる。そして、連続ドラマになって戻って来る。そんな未来を期待してしまう。