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森保ジャパンはブラジルに善戦したのか?ネイマールのフリーロールと「混沌」を創造された際に必要な対応策

森田泰史スポーツライター
決勝点のネイマール(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

日本代表は、善戦したーー。

そのような声があっても、不思議はない。キリンチャレンジカップ2022で、日本はブラジルと対戦した。試合は1−0でブラジルが制している。

前試合の韓国対ブラジル(1−5)から顧みて、森保ジャパンは「よくやった」と言えるかもしれない。大半の選手が欧州でプレーしているブラジルだが、シーズンを終えたばかりのアジア遠征で、しっかりと勝利を目指していた。

ボールを追うパケタ
ボールを追うパケタ写真:YUTAKA/アフロスポーツ

日本はブラジル相手に防戦一方だった。

「最初は前から行こうと思っていた。それからブロックを下げて、耐えるつもりだった」とは試合後の吉田麻也の弁だ。

ただ、「それしかない」と「その選択肢がある」には、雲泥の差がある。つまり、引いて守るしかなかったのか、引いて守る選択をしたのか、が問題だ。

■ブラジルのゼロトップ

ブラジルはネイマールとルーカス・パケタを前線に置き、【4−4−2】を敷いた。

その実、これは2人のゼロトップだった。

とりわけ、ネイマールには自由が与えられた。ピッチ上を思うままに動き回り、ボールを受ける。実質、「フリーロール」だった。

ネイマールがFWの位置で、トップ下の位置で、ハーフスペースでパスを受ける。日本はここを捕まえきれず、後手に回った。

いざ、ネイマールにボールが入ると、簡単には奪えない。ネイマールだけではない。パケタ、ラフィーニャ、ヴィニシウスが面白いようにパスを受け、攻撃を組み立てていく。

日本としては、中央を圧縮しては、いる。だが彼らは狭いスペースでボールロストしない。むしろ、圧縮してきたことを逆手に取り、2枚、3枚と日本のD F陣を一気に剥がしていく。その技術、スピード、力強さというのは、まさに「世界レベル」であった。

(日本の中央圧縮)

(ネイマールが引いて空いたスペースにウィングが走るブラジルの攻撃)

先の韓国戦でもそうだったように、ブラジルは複数のシステムを使い分ける。

【4−4−2】【4−3−3】【4−2−3−1】に加え、日本戦ではゼロトップまで使っていた。

(ブラジルのシステム可変)

確かに、日本の失点はPKからの1点のみだった。だが、あそこまでの攻撃の「圧」を試合序盤からずっと喰らっていると、ボディーブローのように効いてくる。

失点のシーンで、リシャルリソンにファールした遠藤航を責めることはできない。あの場面で、ブラジルはリシャルリソン、ネイマール、アラーナ、ガブリエウ・ジェズスと4選手がボックス内に侵入していた。まさしく「圧力」に屈する形でPKを献上してしまったのだ。

(全2051文字)

■混沌の創造と対応策

冒頭の問いに戻る。

「引いて守るしかなかった」あるいは「引く選択をしたのか」という問いだ。

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スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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