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「自信をつけて突っぱねる」。「にゃんこスター」アンゴラ村長が語る言葉の刃への立ち向かい方

中西正男芸能記者
デジタル写真集が異例の売れ行きを見せているアンゴラ村長さん

 コンビ結成5カ月で「キングオブコント2017」準優勝、一気に時の人となった「にゃんこスター」のアンゴラ村長さん(30)。5月に発売したデジタル写真集「151センチ、48キロ」(講談社)が異例の売れ行きを見せるなど、多方面で注目を集めてもいます。価値観が急速に変化する中で感じる女性芸人の意味。そして、SNSに押し寄せる言葉の刃について思いを吐露しました。

女性ということ

 まさか自分が写真集を出すとは思ってもみなかったんですけど、去年の12月ごろに講談社の方からお話をいただきまして。

 たまに雑誌でモデル的なお仕事をいただいた時みたいな、撮影現場で皆さんがチヤホヤしてくださる感じも経験はあるので(笑)、すごくワクワクする思いでやらせていただきました。

 私はアイドルではないので、特に体を絞ったりはせず、いつもの自分で撮影をする。特に太く細くもなく、平均的な体形のままを写すというのがコンセプトでもあったので、タイトルも今の自分の身長、体重である「151センチ、48キロ」にしたんです。

 どういう反響があるのかなとも思っていたのですが、発売されてびっくりしました。こんなに好意的な言葉をたくさんいただけるんだと。

 そのままの自分を出したら、特に女性から「無理に痩せなくてもいいんだと思いました」とか「ナチュラルなきれいさを感じました」とか、本当にありがたい言葉をもらえた。意識して作ったものではなく、ありのままの自分を出したらほめてもらえた。この感覚はすごく新鮮なものでした。

 芸人という仕事をする上で、女性ということは負い目でもなく、殊更強調することでもない。ただただ、そこも含めて自分にしかできない仕事ができたらと思っていたので、今回はまさにそれができたのかなと。変な雑味なく、純粋にうれしい思いでした。

言葉の刃

 女性コンビさんの解散とか、そういうニュースも目にする中で、いろいろと感じることもありました。もちろん、個々に事情や思いがおありだった上での結果なので、私には細かいことは分かりません。

 ただ、一般的に言われたりもしているのは、ネタとは関係のない部分、見た目などをあれこれ言われることが重荷になっている。そんな見立ても目にします。

 自分自身のことで言うと、あくまでもお笑いが好きで、お笑いがやりたくてこの世界に入りました。それだけなんですけど、人前に出るお仕事でもあるので、太っただとか、顔が嫌いだとか、いろいろなことを主にネットやSNSで言われたりもしてきました。

 コンビを結成してすぐに「キングオブコント」で多くの方に見ていただけた。その流れもあって、いきなり攻撃的な言葉をたくさん浴びることにもなりました。もちろん不慣れなことなので、戸惑って、そこに書いてある意見が全てなんじゃないかと思い込んだこともありました。

 携帯電話のメモ画面いっぱいに私のダメなところを書いて、それを何枚もスクリーンショットで撮ってTwitter、今のXに投稿したり。わざわざそれだけの労力を使って、そういうことを書くなんて、よっぽど私のことをイヤだと思っているのか。そういう人が他にもたくさんいるんじゃないか。どんどん自分をそういう方向に追い込んでいく精神構造もできてしまっていたのかもしれません。

 家から出て歩いてる時、すれ違う人がみんな私のことを嫌っているんじゃないか。「こんなヤツと会っちゃったじゃないか」と思っているんじゃないか。常にそういう思いもありました。

 人とすれ違う時に何となくチラッと見られるとか、こちらを見てサッと視線を外すとか、そんなことくらい日常的にあることなんでしょうけど、そのたびに相手の目になんとも言えない粘着質なものを感じるんです。サラダ油を指で触った時の何とも言えないネチャッとした不快な感じ。そういう感覚に苛まれていた時期もありましたね。

 ただ、そこから7年が経つ中で感覚も変わってきました。実際に街で会ってこちらに気づいてくださった方は、たいていうれしそうにしてくださる。

 となると、いろいろなことを言ってくる人はネットの中にしかいないんじゃないか。そして、意外とその数は少ないんじゃないか。それを体感として積み重ねていく中で、少しずつ思いが変わっていきました。

自信をつけて突っぱねる

 時間による変化もありましたし、自分で意識を変えていった部分もありました。「キングオブコント」で一気に見ていただけるようになって、そこからテレビでの露出が減ったころ。「乃木坂46」の堀未央奈さんの言葉を目にしたんです。

 堀さんもグループに入っていきなりセンターを任されたりしたけど、そこから表題曲を歌わないアンダーメンバーになった。その時の気持ちをおっしゃっていたんです。

 自分はいきなりセンターにしていただいたけど、実力が明らかに足りていなかった。だから、今の時間は本当の意味で実力をつける期間だと思っている。そんな言葉でした。

 烏滸がましい話なんですけど、その時の私の思いと一致していて心に突き刺さったんです。自信がない。だから、逃げる。それで終わり。そうじゃなくて、自信をつければ違う時間が始まる。

 「自信をつけて突っぱねる」

 その思いに至ったのは本当に大きなことでしたし、堀さんの言葉に出合わなければ、今はないと思っています。

 いろいろな言葉を受ける中で、自分がネガティブな人間ということも分かりましたし、文章投稿アプリで毎週思いを綴ると決めてそれが100本になったころ、積み重ねが自信になるということも改めて知りました。

 自信がついてくると、言葉に揺らがなくなった。それを自分の身をもって知ることができた。いろいろな思いもありましたけど、大きな経験だったと思います。

 そして、そんな中でやるべきことも定まっていきました。自分たちはネタで笑っていただく時が一番うれしい。そのために定期的にライブをやって、ネタを作ってということを続けてきました。どこまでいっても、自分たちの幹はネタ。その幹があると思えたからこそ、今回の写真集もお受けできたのかなと思います。

 まずは「キングオブコント」を目指して、さらにその先には全国ツアーとか、そういうことができたらただただ最高だと考えています。

 今回の写真集、相方のスーパー3助さんが見たか?「さすがに買わない」とは言ってましたね(笑)。

 ただ、内容的に「こういう写真が出たら、今後コントを見づらくなるんじゃないか」という写真があるといけないので、一応ゲラ的なものは見てもらいました。その結果、特にNG的なことはなかったので、ま、大丈夫なのかなと。どう思ったのか、細かい感想は聞いてませんけど(笑)。

 これからも自分にしか、自分たちにしかできない積み重ねを続ける。その結果、思っているような未来をいつか作ることができたらなと思っています。

(撮影・中西正男)

■アンゴラ村長

1994年5月17日生まれ。埼玉県出身。本名・佐藤歩実。ワタナベエンターテインメント所属。早稲田大学卒業後、別のコンビでの活動を経て、2017年5月にスーパー3助と「にゃんこスター」を結成。同年10月に「キングオブコント」で2位となり注目を集める。5月16日に発売されたデジタル写真集「151センチ、48キロ」(講談社)が異例の売れ行きを見せている。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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