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なぜスペインはクバルシを“選外”にしたのか?ペドリの前例と復調...タイトル獲得に向けた本気度。

森田泰史スポーツライター
欧州の頂点を目指すスペイン代表(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

EURO2024の開催が、迫っている。

4年に一度、欧州の頂点を決める大会で、優勝候補の一角と目されているのがスペイン代表だ。前回の大会においては、イタリア代表に敗れてベスト4敗退。だが、この度のビッグトーナメントに向けては、若手選手が台頭してきており、タイトル獲得の可能性は十分だ。

ボールをコントロールするクバルシ
ボールをコントロールするクバルシ写真:ムツ・カワモリ/アフロ

ただ、本大会の前に、スペインの招集メンバーが物議を醸した。パウ・クバルシ、アレイシス・ガルシア、マルコス・ジョレンテが選外になったのだ。

■クバルシの選外

とりわけ、クバルシがメンバー外になったのは、周囲を驚かせた。今季、バルセロナで大きく成長した17歳のセンターバックは、現在、スペインで最も将来を期待される選手の一人である。

ロビン・ル・ノルマン、ナチョ・フェルナンデス、ダニ・ビビアン、アイメリック・ラポルテ。ルイス・デ・フエンテ監督は、4名のセンターバックを招集リストに含めている。

「選ばれなかった選手たちに対して、私はアンフェアだった。しかし、選ばれた選手たちに対しては、フェアだった。それが私の感覚だ」

「プライオリティーが置かれているのは、A代表だ。五輪代表については、サンティ・デニア監督に一任されている」

これはデ・ラ・フエンテ監督の言葉だ。

■ペドリのケースと前例

デ・ラ・フエンテ監督は、あくまでフル代表が最優先だと強調した。しかし、クバルシの選外で思い起こされるのは、ペドリ・ゴンサレスのケースだ。

ペドリは、2020−21シーズン、バルセロナで大きく飛躍した。2021年夏には、EURO2021と東京五輪で、“ダブル出場”を果たしている。だが、そのシーズン、公式戦73試合に出場したペドリは、その後、度重なる負傷に苦しめられることになった。

今回のクバルシ招集を巡っては、スペインのフットボール連盟(RFEF)とバルセロナの間で、協議が重ねられてきたと言われている。最終的には、代表チームが折れ、クバルシのEURO行きを見送った格好だ。

ドリブルするファビアン・ルイス
ドリブルするファビアン・ルイス写真:ムツ・カワモリ/アフロ

一方、そのペドリは、EURO2024に向けて、輝きを取り戻しつつある。最後のテストマッチで、北アイルランドに5−1と快勝したスペインだが、ペドリはドブレーテ(2得点)で勝利に大きく貢献した。

この3シーズン、ペドリは負傷に悩まされていた。バルセロナでトップデビューを飾った2020−21シーズン(リーグ戦出場37試合)に比べ、21−22シーズン(12試合)、22−23シーズン(26試合)、今シーズン(24試合)と試合出場数が減っていた。

パスコースを探すペドリ
パスコースを探すペドリ写真:ムツ・カワモリ/アフロ

「僕はいつも試合に出るために準備してきた。でも、ケガというのは、フットボールにおいて、最悪な出来事だ。フットボールを楽しむということが、できなくなってしまうからね。いま、自分の状態は良い。ゴールで、ケガは過去のことだというのが分かったと思う。フィジカルコンディションは上がっている。EUROのスタートが待ちきれない」とは北アイルランド戦後のペドリのコメントだ。

「デ・ラ・フエンテ監督とは、世代別代表の頃からの関係だ。出会った初日から僕に対して信頼を示してくれた。ケガをしている間は、何度か連絡をもらった。『落ち着きなさい』と励ましてもらった。そういった信頼は、より強くなって戻ってくるために役立った」

■ペドリの復調の要因

スペインは、現在、【4−3−3】を基本システムにしている。ただ、中盤にはロドリ・エルナンデス、ファビアン・ルイス、ペドリがいて、彼らに流動的なプレーが求められている。たびたび、【4−2−3−1】に形を変えて、ペドリにはトップ下のポジションが与えられる。

ペドリが輝くのは、やはり、高い位置でプレーしている時だ。ゴールに近いところでパスを受け、ラストパス、創造性、イマジネーション、アイデアで相手の守備網に穴を開ける。そういうタスクが、課されるべきだ。

今シーズン、バルセロナでは、ガビの負傷等もあり、多くの役割をこなさなければいけなかった。スペイン代表では、タスクが明確になり、かつ自分に適している仕事であるため、伸び伸びプレーしている。

初戦で対戦するクロアチアとスペイン
初戦で対戦するクロアチアとスペイン写真:ロイター/アフロ

スペインはEURO2024で、グループBに属している。クロアチア、イタリア、アルバニアと同組だ。

スペインの初戦は現地時間6月15日だ。相手はクロアチアである。

決して簡単な相手ではない。そして、容易なグループではない。曲者揃いのグループだ。だがラ・ロハの情熱は、すべてを呑み込むべく、熱く燃え上がろうとしている。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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