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安倍と二階と小池の三角関係の今昔

田中良紹ジャーナリスト

フーテン老人世直し録(517)

水無月某日

 小池東京都知事が再選出馬を表明した。政党の推薦は受けずに無所属で出馬するという。自民党と公明党は推薦や支持を見送り「自主投票」にするというが、実際には支援することになる。「自主投票」は小池氏の意向を尊重した形だ。

 4年前に自民党を飛び出し、自民党と敵対する形で東京都知事選挙に勝利した小池氏だが、今や自民党は対立候補を擁立することもできず、推薦を断られても支援するというのだから小池氏の軍門に下ったかのようだ。

 小池氏は二階自民党幹事長とは新進党、自由党、保守党、自民党と同じコースを歩んできた。そのため二階氏とは都知事に就任して以来、常に良好な関係を維持している。従って二階氏が支援を公言するのは不思議でないが、注目は安倍総理もまた小池氏を持ち上げたことである。

 12日に小池氏が再選出馬を発表した後、記者団に感想を求められた安倍総理は「このコロナ禍の中で都民を守るために全力を尽くしている」と小池氏を評価した。確かに新型コロナの対応で後手に回った安倍政権と比べ、陣頭指揮に当たった各自治体の首長はそれぞれに存在感を発揮した。

 中でも人口の多い東京の小池知事と大阪の吉村知事はメディアに取り上げられることが多く、存在感はこれまでになく高まった。ただ中身を言えば、恐怖を煽っただけの小池知事と比べ、吉村知事の「大阪方式」には納得させられるところが多い。国民の人気度も吉村知事の方が上だ。

 安倍総理は自分の不人気によって知事たちの評価を高めたことを知ってか知らずか、小池知事のコロナ禍対応を評価した。小池氏が13年前に安倍総理をぶざまな退陣劇に追い込んだ因縁の相手であるにも関わらずである。

 政治家というのは状況次第でくっついたり離れたりするものだが、安倍総理と二階幹事長、そして小池都知事の3人の関係には興味深いものがある。その因縁劇の今昔を振り返ってみたい。

 安倍総理が初当選したのは1993年の衆議院選挙で、自民党が初めて野党に転落した時だ。この選挙で自民党は過半数を失ったがそれでも第一党だった。他の政党と連立を組めば野党には転落しなかった。しかし小沢一郎氏がいち早く日本新党の細川護熙を担いで8党派をまとめ上げ自民党は野党に転落する。

 二階幹事長の初当選はそれより10年前、小沢一郎氏の後輩議員として自民党田中派に所属した。政治改革を巡って自民党が分裂した時、二階氏は小沢氏に付いて自民党を離党、安倍総理が初当選した93年には運輸政務次官に就任する。その後、小沢側近となり新進党、自由党の結成に加わった。

 小池都知事は細川護熙氏が日本新党を作った1992年に参議院議員に初当選、翌93年の衆議院選挙で衆議院に鞍替えした。彼女も小沢側近として新進党、自由党結成に加わった。

 安倍総理と小沢氏にも因縁がある。安倍総理の父親である安倍晋太郎氏は小沢氏を高く評価し、息子の後見役に考えていた。衆議院議員に初当選した時、母親の洋子さんが小沢氏に頼みに行ったことがあると野上忠興著『沈黙の仮面』(小学館)は書いている。

 いずれにしても二階氏も小池氏もその後小沢氏と袂を分かち、安倍総理を含め3人とも今では小沢氏と対立関係にある。一方でこの3人は小泉純一郎氏から引き立てられ現在の地位を築いた。その小泉氏と小沢氏はこのところ反原発などで近い関係にある。

 二階氏や小池氏が保守党から自民党に入ったのは小泉政権時代だ。入党するとすぐに小池氏は環境大臣として初入閣し、夏の軽装「クール・ビズ」の旗振り役となった。二階氏は小泉総理から郵政民営化法案を審議する特別委員長を任され、郵政選挙では自民党の選挙責任者として自民党圧勝の功労者となる。

 この選挙は自民党分裂の戦いだったが、小池氏は自民党の民営化反対議員を落選させる「刺客」の第一号に名乗りを上げ、選挙区を宝塚から東京に代えて勝利を収めた。郵政選挙で大勝利を収めたにもかかわらず小泉総理は任期を延長することなく退陣し、後継に安倍氏を抜擢した。

 しかし就任直後に安倍総理が郵政民営化反対派の議員を自民党に復党させたことから小泉氏との関係が微妙になる。そして「お友達内閣」と揶揄された政治技術の未熟さから、安倍自民党は2007年の参議院選挙で小沢氏率いる民主党に大惨敗を喫した。

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ジャーナリスト

1969年TBS入社。ドキュメンタリー・ディレクターや放送記者としてロッキード事件、田中角栄、日米摩擦などを取材。90年 米国の政治専門テレビC-SPANの配給権を取得。日本に米議会情報を紹介しながら国会の映像公開を提案。98年CS放送で「国会TV」を開局。07年退職し現在はブログ執筆と政治塾を主宰■オンライン「田中塾」の次回日時:11月24日(日)午後3時から4時半まで。パソコンかスマホでご覧いただけます。世界と日本の政治の動きを講義し、皆様からの質問を受け付けます。参加ご希望の方は https://bit.ly/2WUhRgg までお申し込みください。

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