【Yahoo!ニュース 個人】6月の月間MVAとMVCが決定
■Yahoo!ニュース 個人、6月の「月間MVA(Most Valuable Article)」と「月間MVC(Most Valuable Comment)」が決定しました
社会の課題を伝えている・議論を喚起している・読者の心に響く……などの観点で選出している「月間MVA」。記事のアクセス数ではなく、目指す世界観「発見と言論が社会の課題を解決する」を体現している記事を、編集部を中心とした運営スタッフがアナログで選出しています。あわせて、すぐれたオーサーコメント「月間MVC」も選出しました。厳選5本の記事と1本のオーサーコメントを、筆者の受賞コメントとあわせてご紹介します。
※※※
6月のMVA
■「砂」が大金に変わる?希少化する「砂」の今(下村靖樹)
筆者による受賞コメント:月間MVAに選んでくださり、ありがとうございます。今回「砂」にたどり着いたのは、アフリカの紛争鉱物に関するデータを集めている際、偶然目にした国連環境計画の報告書がきっかけでした。ガバナンスやインフラが未成熟なアフリカは、時代の課題や可能性が顕在化しやすい地域です。引き続きアフリカの情報を発信していくと同時に、アフリカというフィルターを通して見えてくるテーマも見落とさないようにしたいと思います。
(下村靖樹)
選出理由:普段あまり気にすることのない砂。実は使われ方は多様で、希少価値が急速に高まっており、国によっては死者も出るほどの争奪戦が発生している現状を伝えました。温暖化などと同じく、これから世界規模で取り組むべき課題であることも教えてくれた記事です。
※※※
■離島で改革、与論高サッカー部に見る環境格差との戦い(平野貴也)
筆者による受賞コメント:少子化と地方の過疎化という日本の問題は、部活動をはじめとするスポーツにも大きな影響を与えています。これまでに何度か離島の部活事情を取材する機会がありましたが、与論高校や鹿児島の離島に限らず、全国の離島や地方で、部活動における存続の危機や活動の難化が進んでいます。現場では島への留学制度やクラウドファンディングなど興味深い打開策も行われており、記事をきっかけに離島のスポーツ事情に関心を持つ人が一人でも増えればうれしく思います。
(平野貴也)
選出理由:離島というハンデを抱えながら、インターハイ予選に挑戦した鹿児島・世論高校サッカー部のルポです。試合内容はもちろん、選手たちの島での生活や工夫を凝らした練習、どうすれば強くなれるかまで踏み込んでいます。筆者の取材力も感じられます。
※※※
■一介の若手サラリーマンが辞表を出したワケ。「僕、プロ野球チーム創りますんで」。(阿佐智)
筆者による受賞コメント:私自身、今回はいい取材ができたと感じました。現場に足を運ぶことの重要性を改めて教えていただいたという気持ちです。
(阿佐智)
選出理由:故郷・茨城にプロ球団を創りたいという一心で、大企業を辞め、無謀ともいえるチャレンジをした山根将大代表(32)の4年間を取材した記事です。あふれる情熱で1つ1つのハードルを越えていく姿は、多くの読者の共感を呼びました。
※※※
■キム・カーダシアンはKIMONOを商標登録できるか?(栗原潔)
筆者による受賞コメント:最初はツイッターで発見した小ネタという認識でしたが、思ったよりも大きなニュースとなり、政府も動かすような状況になったので驚きました。「文化の盗用」は線引きが難しい問題であると思いますが、今回のように商標権による独占が好ましくないケースは多いと思います。最終的にキム・カーダシアン側が市場の声に屈する形になったことは、理想的とは言えないですが、まずまずの結末であったと思います。
(栗原潔)
選出理由:米国タレントが立ち上げた下着ブランドによる「KIMONO」商標登録出願の動きをいち早くキャッチして伝えた、筆者の慧眼が光る1本。「文化の盗用」等の批判を受け名称変更するに至るまでの間も、弁理士としての知見をもとに情報を発信し続け、報道を牽引しました。
※※※
■「台湾ではタピオカドリンクが朝食」と放送 実際の台湾の朝ご飯事情は(田中美帆)
筆者による受賞コメント:近頃、台湾関連の情報や報道が増えていることは、すごく喜ばしいです。ただ残念ながら時折、海外の話だから不正確でも許されるだろうという、なんともカッコ悪い発想が見えることがあります。ともあれ、この記事が台湾理解の一助になればうれしいです。
(田中美帆)
選出理由:バラエティー番組で放送され真偽が話題になった「台湾ではタピオカドリンクが朝の定番」との情報について、現地在住の筆者が実際の朝ご飯の様子を写真付きで紹介しながら、丁寧に誤りを正しています。本当の台湾を伝えたいという愛情と熱意が感じられる記事です。
6月のMVC
■『サウジ空港を攻撃、26人負傷 イエメンの親イラン組織』の記事へのオーサーコメント(高岡豊)
筆者による受賞コメント:中東での紛争や政治問題には、我々が知らないうちに問題の当事者の片側だけの認識に基づくストーリー、善悪正邪の構図に基づいて情報が流通していることが多いです。諸当事者がそれぞれの政治的立場に沿って振る舞うことや私的な意見を表明することを否定しませんが、観察・分析レベルでは今回の例のような蔑称の使用は避けるべきではないでしょうか。分析や報道の場でことの善悪について判断を下してしまうと、紛争や政治問題の実態を隠蔽(いんぺい)・歪曲(わいきょく)することにもなりかねません。個人的な感情や見解とは異なる次元での観察を心がけていきたいです。
(高岡豊)
選出理由:記事中で空港を攻撃した団体に蔑称が使われている点を指摘しながら、イエメン紛争をめぐる報道に善悪正邪の価値判断が埋め込まれていることやその背景事情などを解説。複雑な中東情勢をフラットな目線で読み解く助けとなる、「なるほど、そうだったのか」と気づかされる専門性高いコメントです。