キム・カーダシアンはKIMONOを商標登録できるか?
ツイッターのTLで知りましたが、米国のセレブ、キム・カーダシアンさん(カニエ・ウェストの嫁)がKIMONOを商標登録出願しているようです。
カーダシアンさんは、KIMONO Intimatesというアパレル会社の経営に参画し、下着類に対してKIMONOという商標を使用しており(この時点で「文化の盗用」的観点からちょっと問題に思えますが)、さらに、その独占権も獲得しようと試みているわけです(一部ツイートで商標登録されたと書いているものが見られましたが、まだ審査中で登録されたわけではありません)。
言うまでもなく、KIMONOは日本語の「着物」に由来するわけですが、緩めのロングガウンやジャケットを表わす一般名詞として英語化しており、辞書にも載っています。
日本でも、指定商品に対して普通名詞化している言葉は商標登録できませんが、それは米国も同様でgenericな言葉(一般名詞)は登録できません。
ただ、普通名詞(一般名詞)か否かの判断はあくまでも指定商品に対してであり、たとえば、KIMONOをコンピューター・ソフトウェアや文房具を指定商品として商標登録することは可能です(実際、米国でもそのような登録例があります)。APPLEを、果物を指定商品にして商標登録することはできませんが、コンピューターが指定商品なら商標登録できることを考えるとわかりやすいと思います。
KIMONO Intimates社は既に何件かKIMONOを商標登録出願していますが、簡単にまとめると以下のとおりです(他にもKIMONO BODY等が出願されていますが、KIMONO単独のものだけをまとめました)(Yahoo!のオーサリングツールの制限で表組みが作れませんので見にくくてすみません)。
1. KIMONO(ロゴ)(タイトル画像参照)
出願番号: 88479867
出願日:2019年6月19日
指定商品(役務):かばん類、被服、被服・かばん・アクセサリの小売
審査状況:審査結果待ち
2. KIMONO(標準文字)
出願番号: 87886644
出願日:2018年4月20日
指定商品(役務):化粧品・下着類等の小売
審査状況:類似先願の審査確定までペンディング、類似先登録を理由とした拒絶理由通知あり、記述的であることを理由とした拒絶理由通知あり
3. KIMONO(標準文字)
出願番号: 87886640
出願日:2018年4月20日
指定商品(役務):下着類
審査状況:類似先願の審査確定までペンディング、類似先登録を理由とした拒絶理由通知あり、一般名称または記述的であることを理由とした拒絶理由通知あり
4. KIMONO(標準文字)
出願番号: 87886635
出願日:2018年4月20日
指定商品(役務):かばん類
審査状況:類似先願の審査確定までペンディング、類似先登録を理由とした拒絶理由通知あり、一般名称であることを理由とした拒絶理由通知なし
類似先登録と類似先願については、KIMONO Intimates社が権利者と交渉して(ちょうど前回の記事で触れた)同意書をもらうか、あるいは、出願を取り下げるか、登録を放棄してもらえば、この拒絶理由は解消します。
要は、被服についてはおそらく拒絶されるでしょうが、かばん類についてはKIMONOが商標登録されてしまうリスクがあるということです。(追記:審査経過をよく見ると、KIMONO Intimates社側は被服の指定商品をランジェリー類に限定して対応しており、「ランジェリーはkimonoとは全然特性が異なるので一般名称ではない」と主張しているので、登録されてしまう可能性もないとは言えなさそうです。)
万一、登録されてしまっても異議申立は可能なので、登録されるべきでないと考える方は是非ウォッチしておくべきでしょう。(追記:米国の商標異議申立は、日本とは異なり、利害関係者と出願人が弁護士を立てて争う形態になりますので、個人でできるレベルのものではありません、念の為)。