令和初の節分にお勧め!「恵方巻」ならぬ昭和の「巻きずし」
もうすぐ2月3日。令和初の節分だ。
筆者が生まれた昭和、「節分」といえば、豆まきがメインだったと記憶している。「鬼は〜外、福は〜内」というあれである。
平成になって、すっかり日本に定着した「恵方巻」。その発祥には諸説あるが、普及したきっかけとなったのが、1989年(平成元年)に大手コンビニエンスストアが「恵方巻」という名前で販売を始めたことだと言われている。
つまり、昭和の頃は「恵方巻」という名前はなかったことになる。
関西出身の昭和生まれの人たちに聞いてみた
「恵方巻、昔は関西だけだったよね」という声もよく耳にする。
それでは、昭和生まれで関西出身の方たちは、家で「恵方巻」のような太巻き(海苔巻き)を作っていたのだろうか。大阪府・京都府・奈良県・兵庫県の方にそれぞれ聞いてみた。
大阪府
京都府
奈良県
兵庫県
大阪・京都・奈良・兵庫、それぞれ伺ったのが1名ずつなので、参考程度ではある。
ツイッターで「昔、恵方巻を家で作っていましたか?」のアンケートを実施したところ、大阪府堺市の方から「太巻きを作って丸かぶりやっていました」というご意見を頂いた。関西の中でも、作る・作らないに差があるようだ。
奈良と兵庫の方は「家で作っていた」。具材は、かんぴょう、しいたけ、高野豆腐、卵、きゅうりなどが共通する定番で、定番の具材に生ものはない。
太巻きの具材は七福神にちなんで七種類の具材(福)を「巻き込む」という考え方もあるようだ。
奈良・兵庫のお二人とも「最近は買って済ませている」「買っている人も多いのではないか」とのこと。
では、家で作らないとすれば、どこで買っているのだろう?
60%近くが「スーパーで買う」
株式会社Wizleapが運営する総合保険メディア、ほけんROOM(ルーム)は、2020年1月20日〜21日、インターネットを通して、10代から60代以上の男女1,031名を対象に、恵方巻と食品ロスに関する意識調査を行った。
その結果によると、「2019年、恵方巻はどこで買いましたか」という質問に対し、最も多かったのが「スーパーで買った」で57.9%。6割近くがスーパーで買っている。
16.7%が「家で作る」
次に多いのが「家で作った」の16.7%。
「家で作った」と答えた男性は14名、女性は109名。
「家で作るのは高年齢層」・・・かと思いきや、女性109名のうち、50〜60代は6名のみ。20〜40代が103名と、女性全体の94%を占めている。
コンビニが3位。その他に寿司店が入っている。この時期、コンビニやデパ地下では大々的に恵方巻販売の告知を展開しているが、この調査の対象者に関しては、スーパーで買った人が多いようだ。
東京都の講演では「食べない」「買わない」が圧倒的
2020年1月25日、東京都練馬区主催で区民100名程度を対象に行った、筆者の講演でも聞いてみた。恵方巻を「家で作る」「店で買う」は少数派で、圧倒的に多かったのが「何もしない(買わない、食べない)」だった。
休日に、わざわざ時間を使って食品ロスのことを学びにくるくらい熱心な層なので、バイアス(偏り)はあるだろう。地域が東京ということもあるかもしれない。が、日本全国、必ずしも恵方巻を買う人・作る人ばかりではない、ということだ。
料理本には「巻きずし」
筆者が使っている料理本のうち、「日本料理」のテキスト(辻学園 学園長監修)には、「巻きずし」「細巻きずし」「だて巻きずし」などが載っている。
巻きずしの項には「その家らしさがよく出るのが巻きずし。楽しいことがある日の食卓に」とあった。寿司は寿司でも、にぎり寿司は外で食べるものというイメージに対し、巻きずしは、必ずしも外食とは限らないかもしれない。
恵方巻はバレンタインデーと同じく企業の販売戦略 消費者は冷静に
「恵方巻」は、バレンタインデーのチョコレート同様、企業が販売戦略の一環として作ったものに過ぎないのではないか。
上記調査結果だけ見ても、スーパーで買う人が6割近くを占める。なのにコンビニや百貨店は、ポスターや垂れ幕、チラシを作り、押せ押せで売ってくる。顧客の強いニーズがあって売っているというより、彼らが売り上げを上げたいから売っているだけなのでは?
であれば、われわれ消費者が、その販売戦略に乗せられるのはどうなのだろう。
スーパーなら、期限が迫ったものを見切り(値引き)販売をしてくれる。もし店内調理をしているスーパーであれば、2月3日夕方近くに、店頭在庫や客の入りを見ながら作る数を調整することが可能だ。
2019年には経済学者が恵方巻のロス金額の試算をし、10億円を超えるとのことだった。それだけ捨てておいて、「福を巻き込む」ことを望むのは難しいだろう・・・。
周りに踊らされず、自分の食べたい時に食べたいものを買うもしくは作るのが一番
この時期、恵方巻の値段は全体的に高い。寿司を食べるにしても、皆の真似をして、2月3日に買って食べる必要はない。
企業の売れ残り食品は、企業だけが処分費用を払うわけではない。税金を使って家庭ごみと焼却処分される自治体がほとんどだ。
昭和の時代、家で作る「巻きずし」の習慣は、地域によっては、少なからずあったようだ。筆者の家では、巻きずしはたまにしか作らなかったが、家族の誕生日には、いつも自家製の「ちらしずし」だった。小さい頃から生もの抜きの寿司を食べていたので、寿司は今でも大好きだ。余るほど大量に売って捨てられて欲しくないし、このまま食料廃棄の代名詞であって欲しくない。
大量生産・大量販売・大量廃棄の時代は終わった。
2020年1月17日、農林水産省は、小売業者に対し、恵方巻の需要に見合った予約販売を勧めている。大手コンビニ3社はじめとした26の小売業者が農林水産省の呼びかけに賛同し、恵方巻のロスを減らすと明言している。
2020年、令和初の節分は、家で巻きずしを作ってみてはどうだろう。巻きす(すだれのようなもの)がなくても、クッキングシートなどを使って簡単に巻く方法もある。
注:書籍の表記をそのまま引用したため、「寿司」「すし」「・・・ずし」など、表記が混在しています。