コンビニスーパー売れ残り廃棄に税金使われるのに「事業ごみは事業者負担で税金0」の誤解は企業に好都合?
税金で年間2兆円のごみ処理費
クリスマスケーキ、おせち、恵方巻き・・・と季節商品の廃棄(食品ロス)が続いた。廃棄のたびに税金が使われている。
と書くと、「何言ってんの?事業者ごみは事業者が負担してるから税金なんて使われてないんだよ!」「どこに税金使われてるのか説明しろ」と絡んで来る方が、毎回、登場する。
Twitterでは匿名で来る方がほとんどだ。コンビニ関係者の方まで「税金なんて一切使ってない!事業者(だけ)が払ってんだよ!」と書いて来られた。一般の方ならともかく、食品事業に関わる方まで、小売や外食からの食品ロス処理に関し「税金投入ゼロ」と誤解している事態は、尋常ではない。
何事に関しても、100%の理解は求められず、誤解されるのは避けがたい。が、ここまで誤解が広がっているからこそ、食品ロスは「企業が悪い」と叫ぶだけで、コンビニ・スーパー・百貨店・外食で起きる食品ロスが、消費者にとって「他人事(ひとごと)」化し、減りづらいのだと、身に染みて感じる。
筆者ですら、事業ごみの詳しい分類を知らなかったので、多くの人が誤解しているのはもっともだと思う。
事業系一般廃棄物は、事業者が負担するのに加えて、市区町村の財源(税金)を使って焼却・破砕などで廃棄処分されている。
つまり、我々が納めた、安くはない税金を使って、処理されている。
家庭系・事業系合わせた年間のごみ処理費は、年間およそ2兆円だ(環境省:一般廃棄物の排出及び処理状況等、平成28年度、について。正確には1兆9606億円)
食品リサイクルの専門家も「企業から来る食品ロスの多くが我々の税金を使って焼却炉で燃やされる」と強調
恵方巻き大量廃棄のテレビ報道や全国紙の報道でたびたび登場している、日本フードエコロジーセンターの高橋巧一社長も、
と述べている。2月上旬に取材に伺った際にも、「ここに運ばれてくるのはほんの一部。残りは我々の税金を使って焼却炉で燃やされる」ことを強調されていた。
事業系の廃棄物(ごみ)は「産業廃棄物」と「事業系一般廃棄物」の2つに大別される
ここでは「食品ロス」がテーマなので、食品に関してのみ言うと、食品メーカーが排出するのは産業廃棄物。
一方、コンビニ・スーパー・百貨店の売れ残りや、飲食店の食べ残し、調理残渣などは事業系一般廃棄物に分類される。
事業系一般廃棄物の廃棄では、基本的に事業者も廃棄コストを払うが、市区町村の財源(税金)を使われ、焼却・破砕などの処理がされている。 市区町村のクリーンセンター(清掃センター)などと呼ばれるごみ処理施設で処理される。
環境省「食品製造業から出される廃棄物のみ産業廃棄物、小売と外食からのものは事業系一般廃棄物」
環境省の「食品廃棄物の分類」を見てみよう。
食品製造業(メーカー)から出されるものだけが、産業廃棄物に区分される。これは事業者が廃棄コストを負担して処理される。
コンビニ・スーパー・百貨店などの小売や飲食店から出される食品ごみは、「事業系一般廃棄物」。これは事業者負担の他に、市区町村の財源(税金)を使って処理される。恵方巻きの時も「産業廃棄物」と誤解して書いている人がいたが、小売店から出る完成系の恵方巻きは事業系一般廃棄物。製造工場から出るもののみ「産業廃棄物」。
沖縄県那覇市の「事業系ごみの分け方・出し方」はイラスト入りで分かりやすい。
食品製造業者(メーカー)が出す廃棄物のみ、「産業廃棄物」に区分される。このうち、「動植物性残さ」に相当し、廃棄コストを負担して専門業者が処理する。これに関し、市区町村は、収集も運搬も処理も一切行わない。
全国の自治体のサイトで見る「事業系一般廃棄物に税金が投入されている」
全国の自治体によって多少異なるが、事業系一般廃棄物に市区町村の財源(税金)が使われているということが、わかりやすく書かれている。
食品の食べ残しや売れ残り、調理残渣などの生ごみは「事業系一般廃棄物」
兵庫県加西(かさい)市の公式サイトには、事業系一般廃棄物の分類として、食品の食べ残しや売れ残り、調理残渣などの生ごみが該当する、としている。コンビニやスーパー、百貨店の食品売れ残りや、飲食店の食べ残し・調理残渣はここに入るだろう。
栃木県宇都宮市の公式サイトでは、具体的な事業系一般廃棄物の事例として、「レストランやスーパーから排出された調理くずや食べ残し、商品の売れ残り等の生ごみ(焼却ごみ)」と書かれており、写真が掲載されている。
事業系一般廃棄物の「生ごみ」は家庭系一般廃棄物と共に焼却処分される
2019年2月5日の記事で書いた通り、埼玉県川口市では、事業系一般廃棄物の生ごみは、家庭系一般廃棄物と共に一箇所に集められ、焼却処分されている。
東京都世田谷区では事業系一般廃棄物には区の財源として1kg55円が投入
東京都世田谷区の「事業系一般廃棄物ガイドブック」の10ページ目に、「廃棄物の処理ってお金かかるんですか?」の問いに対し、次のような回答が書かれている。
京都市ではコンビニ・スーパーから出るごみの54%が生ごみ、飲食店も同レベル
京都市の「事業系ごみの分け方・減らし方」によれば、コンビニ・スーパーから出るごみのうち、54%が「厨芥(ちゅうかい)類」と呼ばれる生ごみだ。飲食店でも同様の数値となっている。
あるスーパーから持ち込まれた事業系一般廃棄物のうち、66.7%が生ごみ
栃木県宇都宮市の「事業系ごみ適正処理マニュアル」によれば、あるスーパーから持ち込まれた事業系一般廃棄物のうち、66.7%が生ごみだったと書かれている。
コンビニの売れ残り食品はすべて事業系一般廃棄物として処理
コンビニの売れ残り食品は、事業系一般廃棄物として処理される。
筆者がコンビニオーナー11名の座談会を実施した際、対象者が全国でも珍しい、「弁当などを見切り販売しているオーナー」だった。そのため、事業系一般廃棄物の処分費用は、比較的割安で、月に17,000円台~34,000円台だった。処分費用は自治体ごとに異なる。
食品製造業(メーカー)のリサイクル率は95%、小売は49%、外食は23%(平成28年度)
農林水産省の平成28年度食品廃棄物等の年間発生量及び食品循環資源の再生利用等実施率 (推計値)によれば、食品業界のうち、食品製造業のリサイクル率は95%、卸売業は65%、小売業は49%、外食は23%となっている。
製造業の廃棄物は、一箇所(工場など)から大量に排出されるため、回収しやすく、小売の小さな店舗や外食は、まとめての回収がしづらい。それも、リサイクル率の低さの背景にはある。
が、事業系一般廃棄物で一緒くたに出してしまえることも、リサイクル率の低さにつながっているのではないかと考える。食品製造業では、食品リサイクル法に基づき、容器包装のプラスティック、紙、そして食品部分と、分別して再生利用(リサイクル)しなければならない。
一方、小売や外食から出されたものは、容器もひっくるめて一括、焼却処分という現場を、全国の取材現場で、よく目にしている。
年間82万トン近く(2000年)から40万トン台まで削減できた、京都市の成功事例に学ぶ
拙著でも記事でも、何度も書いたように、京都市が年間82万トンから40万トンまで削減に成功した事例を見ると、家庭系のみならず、事業系の廃棄物も併せて、削減できるのだと思う。ごみ処理のためのクリーンセンターも、2000年当時の5機から3機に減らし、1機減らすことで年間100億円以上のごみ処理費を削減した。
16年でほぼ半減 京都市の530(ごみゼロ)対策は なぜすごいのか?
まとめ:小売や外食から出る食品ロスの廃棄に税金は使われている
まとめると、「小売や外食から出る食品ロスや食品廃棄に、市区町村の財源、すなわち我々の納めた税金が使われている」ということ。
多くの方が「事業ごみは事業者が全部負担していて税金は一切使われていない」と誤解している現状。
ひょっとして、企業にとって好都合だから、このままになっているのでは?「消費者は、自分らのお金が使われているのに気づいていない」と思っている企業の人もいるのでは、とすら思ってしまう(冒頭の通り、勘違いしている人もいるので全員ではないが)。
我々消費者側にとって、恵方巻きの大量廃棄を含め、毎日起こっている食品ロスは、「(企業は)いつまでバカなことやってるの?」と言い放つような、他人事ではないのだ。
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