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「同じくらいの年齢vs年の離れた夫婦」離婚しがちな夫婦の年の差とは?

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:イメージマート)

年の差離婚

前回の記事で、日本の婚姻における年の差婚の割合について書いた(→芸能人の年の差婚はいつも話題になるが、実際一般人の結婚の場合「何歳までの年の差」が限界?)。

結論としては、同年齢または年齢差±5歳がほとんどを占めるということであったが、では離婚の場合はどうだろう。

今回は離婚における年の差の割合について見てみたい。

前回同様、2022年の人口動態調査から夫と妻それぞれの離婚者の各才別の数字(年齢不詳は除外)を再集計した。離婚数ではなく、特殊離婚率(離婚数を婚姻数で除した値)にて、1995年と2022年とで比較してみた。

ちなみに、1995年の全体の特殊離婚率は25%、2022年は35%であり、全体の離婚率は2022年の方が10%ポイントも高いことを前提にしてほしい。

1995年も2022年も、もっとも離婚率が低いのは「同年齢婚」である。夫婦のいずれかがす年上であっても、夫婦間の年齢差が大きければ大きいほど離婚率は高まるようだ。

1995年と2022年との違いでいえば、1995年は「21歳以上妻年上婚」がもっとも離婚率が高く、2022年は逆に「21歳以上夫年上婚」がもっとも離婚率が高くなっている。

あまり年の差がありすぎる結婚というのも、長続きはしないのだろう。

3組に1組は離婚する

離婚を推奨するわけではないが、さりとて、別に「離婚が少ない方がよい」という話でもない。

前述した通り、日本の特殊離婚率は1990年代後半よりずっと35%程度以上をキープしている。これが「3組に1組は離婚する」といわれる所以である。これに対し、人口千対離婚率を引き合いに出して「3組に1組も離婚していない」などと言う一部の有識者がいるが、それは間違いである。

人口千対離婚率とは、普通離婚率と呼ばれるもので、これは、人口千人当たりに対する離婚数(パーセントではなくパーミルという単位)であり、国際的な比較の際にはこちらが使用される。この指標自体を使うことは別にいい。2022年に日本の人口千対離婚率は1.47である。

しかし、この人口千対離婚率は、そもそも分母が人口なので高齢者も未婚者も含む。高齢者に関しては、たとえ熟年離婚が増えているとはいえ、離婚は54歳までで90%を占めている。離婚をほとんどしない高齢夫婦を分母に入れたままの指標が正しく離婚の実態を表しているとはいえない。また、未婚者が増えている現状の中で、結婚もしていない者を分母に含んでそれが正しい離婚の指標となるかは甚だ疑問である。

別途、有配偶者だけを分母とする「有配偶離婚率」を正しい指標とすべきという有識者もいるが、それもまた高齢者を含むので正しくない。離婚の可能性のない者を分母に入れてどうする?という話なのだ。

結論からいえば、離婚に関しては特殊離婚率を見る方がよい。この件については、何度も説明しているが、改めて最新のデータによって説明しよう。

1995年から2022年までの28年間の総婚姻数は、1924万組、総離婚数は660万組である。この期間の累計特殊離婚率は約34%となる。もちろん、この離婚数の中には、1995年以前に結婚した夫婦も含まれているが、28年間の累計においては誤差の範囲だ。つまり、この28年間で結婚した夫婦のうちの34%は離婚をしていることになる。まさしく「3組に1組は離婚」しているのだ。

特殊離婚率の数字は、「結婚が何組作られ、何組壊されているのか」を知る重要な指標なのである。

提供:イメージマート

日本人は離婚しがち

そもそも、「近年、離婚が増えた」というのも長い歴史から見れば正しくない。

明治期1883年(明治16年)から、大正~昭和~平成~令和の2022年までの長期の離婚率推移は以下の通りである(太平洋戦争中のデータはなし)。

一目瞭然だが、決して昔の日本人が離婚しなかったわけではない。むしろ、離婚は多かった。

明治以前の江戸時代の文献を見ても、さらに離婚率は高く、当時においては多分世界一離婚の多い国が日本だったろう。江戸時代はあまりに離婚が多いため、各藩では離婚禁止令が出されているが、まったく効果はなかった。

離婚が激減した原因は、明治民法によるもので、その詳細は過去記事に書いた通りなのでそちらを参照していただきたいが、こうして見ると、明治民法以降以降、昭和の高度成長期までの期間の低離婚率状態が長い日本の歴史的には異常だったと解釈すべきである。

自由な結婚、自由な離婚

明治後半以降、皆婚と低離婚時代が100年間だけ続いただけに過ぎず、むしろ「結婚する者もいればしない者もいる。離婚したければ自由にすればいい」という風潮の方が、日本人の原型に近いのかもしれない。

少なくとも1980年以降の統計上、恋愛強者は3割しかいない。それ以前の統計はないが、多分江戸時代もそれ以前も、恋愛強者はせいぜいずっと3割程度だったのだろうとも思う。

江戸時代が始まって間もなくの1657年の文献では、農村でさえ有配偶率は49%に過ぎなかった(信濃国)し、農村の場合、次男や三男は生涯未婚も多かった。古事記の逸話や万葉集における詠み人知らずの歌を見ても、全員が恋愛を謳歌していたとはとても思えないし、むしろ失恋の話は多い。

写真:アフロ

もちろん、昔は恋愛と結婚は直接的に結びつくものではなく、コミュニティ維持のための「恋愛なき結婚」も多かったとは思うが、むしろそういう形の結婚の方が離婚に至らないという面もあったろう。明治民法以降の日本の低離婚率もそうしてものかもしれない。

自由に恋愛し、恋愛から結婚に至るという形は、同時に離婚の自由とも表裏一体なのである。そして、それら3割の恋愛強者だけが恋愛し、結婚するような時には、離婚も3割になるのであろう。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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