博多で40年以上愛され続ける豚骨ラーメンがある

　博多ラーメンと一言で言っても、そのスタイルや味わいは様々だ。そのラーメンがどう生まれて、どんな歴史を紡いで来たか。ラーメン店の数だけラーメンの形があり、作り手の数だけラーメンの味がある。

　1980年創業の『めんくいや』（福岡県福岡市中央区渡辺通2-3-27）は、福岡市内でも長い歴史を持つラーメン店の一つだ。創業者は久留米の人気店でラーメンを学び、山口県宇部市で独立開業。その後、福岡で屋号もスタイルも改めて、二代目が『麺喰舎（めんくいや）』として新たなスタートを切った。

　二代目店主の山羽和幸さんは、親を支えるためにラーメンの世界に入った。創業時代からの味は受け継ぎながらも、材料や製法などの改良も重ねていった。さらに皆が懐かしさを覚えるようにと、店内を「学校の教室」をイメージして親しみやすくした。

　「開業当初は売り上げがまったくなくて、どうしたら福岡の人に愛される店になるだろうと考えました。当時福岡にはラーメン居酒屋があまりなかったので、屋台のようにお酒を飲んでラーメンで締められる店にリニューアルしました」（めんくいや 店主 山羽和幸さん）

毎日でも食べられる安心安全なラーメンを作りたい

　山羽さんが目指したラーメンは、あっさりしていながらも旨味をしっかりと蓄えた、毎日でも食べられる日常に寄り添った味。それは子供の頃から毎日ラーメンを食べてきた山羽さんならではの想いからだ。

　「スープも麺も具もすべて、手作りで安心安全なものをご提供する。それが先代からのこだわりなんです。麺も自家製なのですが、添加物は極力使わず、保存料も一切使わずに作っています」（山羽和幸さん）　

　あっさりしているのにコクがある、『めんくいや』自慢の一品「博多ラーメン」は、頭骨とゲンコツを丁寧に炊き出した臭みのないスープに、しなやかで歯切れのある自家製細ストレート麺を合わせたもの。老若男女幅広い人たちに食べて欲しいと生み出されたラーメンは、創業以来40年以上に渡り愛され続けている。

若き三代目が味と暖簾を継承

　歴史を重ねていくには時代に合わせた変化や進化も不可欠だ。長年愛され続けている味を受け継ぎ、新たな歴史を紡ぎ始めているのが、息子で三代目の山羽泰智さん。高校卒業後に調理師学校で料理を学び、20歳から本店に入りラーメンの世界へ飛び込んだ。15年の経験を積んで2023年から全面的に本店のすべてを任されるようになった。

　「調理師学校で習ったのと違い、ラーメン店の仕込みは大量なので、慣れるまでは苦労しました。そしてこれからは調理や接客だけではなく、マネージメントや経営も携わっていかねばなりません。これまでの歴史に恥じないお店にしていかなければと思っています」（山羽泰智さん）

　老舗ラーメン店などで事業継承がうまくいかずに閉店を余儀なくされる店も少なくない中で、『めんくいや』は若き三代目が暖簾と味を受け継ぐ覚悟を決めた。店舗も全面改装して今まで以上に明るい雰囲気になり、泰智さんのアイディアによる一品メニューなど、長年愛されている店に新たな魅力が増えつつある。

　「地元福岡の方はもちろん観光客の方やどんな方にでも喜んで頂ける店だと自負しています。ラーメンで福岡の力になりたい。これからも福岡でずっと愛される店であり続けたいと思っています。そしてまだ知らない方には、天神や博多から歩けるところに安くて美味しい店があるよと伝えたいですね」（泰智さん）

※写真は筆者によるものです。

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