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東京と全国の未婚男女の「幸福度・仕事の充実度・経済的満足度・恋愛充実度」の違いを比較してみる

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:イメージマート)

地方にはないものだらけ

コロナがあろうとなかろうと、人口の東京一極集中は変わりがない。

そもそも、国内の人口移動はほぼ9割が20代の若者によって決定される。つまり、東京に人口が集中しているということは、すなわち20代の若者が東京に集中しているということである。

日本の人口移動は若者によって決まる~東京圏からの人口流出など起きていないという事実

なぜ、若者が東京に集中するかについては、上の過去記事にも書いた通り、「魅力的な仕事を求めてやってくる」のであり、裏を返せば、地方には「賃金も安い上に魅力的な仕事もない。ついでに出会いもない」ということを意味する。

当然、年収の絶対額で比較すれば、東京は平均値も中央値ももっとも高く、ざっくりいえば、地方の平均値に対してプラス100~200万円が東京の平均となる。もちろん、それに伴って、家賃の相場など生活コストは地方より高いという面もあるが、地方は地方なりに、生活の足でもあるクルマの維持費が必要だったり、寒冷地であれば、光熱費が異常に高いという問題もある。一概に、絶対額での比較は難しい。

満足度から東京と全国を比較

では、絶対額ではなく、東京および全国において、満足度や充実度という視点から比較してみたい。

5段階評価のトップ2(かなり満足・まあまあ満足)を足した割合を満足・充実指数として、東京と全国の未婚男女とでその差分を比較してみる。

比較対象の項目は、幸福度、仕事の充実度、経済的満足度、友人などの人間関係の満足度、パートナーなど恋愛関係の満足度である。

先に、未婚女性から紹介しよう。

上にグラフの棒が伸びているのは東京の方が満足度が高いという意味である。

全体的に、全国よりやや東京の方が高いのであるが、それほど大きな違いはない。%ポイントの差分でも最大値は5ポイント程度にとどまる。

注目したいのは、未婚女性の場合は、「仕事の充実度」の点でいえば、40代の場合だけ東京が高いが、それ以外は特に東京ではなくても「仕事は充実している」といえる。「経済的満足度」に関しても、20代はむしろ東京より全国の方が満足度が高い。

絶対的な年収額では東京の方が高くても、未婚女性の場合は、それが特に地方から離れる動機ではないのだろう。

未婚男性の差分

一方、未婚男性で見ると女性との傾向の差が非常に興味深い。

未婚男性では、すべての項目について女性より圧倒的に東京との差分が大きいのだ。

まず、目を引くのが「仕事の充実度」での20-30代の差の大きさである。20代で7ポイント、30代では11ポイントも東京の方が高い。地方から仕事を求めて上京したのであれば、その目的を果たせている20-30代未婚男性が多いということだろう。

「仕事の充実度」の差の大きさに比べれば「経済的満足度」の差は小さい。仕事を求めて東京にきて、その仕事がやりがいのものである場合でも。20-30代の若者の給料がいかに満足できるレベルではないかがわかるというものだ。

ただし、30代まで高かった「仕事の充実度」でさえ40代以降の未婚男性になると極端に下がる。40代になると未婚男性は仕事への情熱を失うのだろうか?

いいや、そうではなく、30代までで「仕事の充実度」をMAXまで高め、それとともに給料もあげた未婚男性が結婚して「未婚ではなくなる」ことによる。つまり、元々「仕事が充実していない」未婚男性が40代以降も未婚のまま残るのだ。

同時に「パートナーなどの恋愛関係の充実度」に関しても、東京は全国より20代がもっとも高い。わかりやすくいえば、地方にいるより東京に来た方が恋愛は充実するのだ。仕事を求めて東京に来て、結果出会いがあって結婚するパターンが多いことの裏付けでもある。

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40代の恋愛充実度が高い?

ところで、40代未婚男性の恋愛充実度差分が20代並みに東京が高いことに気付いた人も多いだろう。「東京であれば40代の未婚のおじさんでもモテるのか?」と淡い期待を抱くかもしれない。

写真:イメージマート

しかし、残念にながらそうではない。

これはあくまでも、東京と全国の値の差分表示であり、絶対値としては、きれいに20代から50代にかけて恋愛充実度は下降する。40代で東京の差分値が高くなるのは、東京以上に地方の恋愛充実度が急降下しているためである。50代では東京も一気に値がさがり、差分上では、地方の方が50代未婚男性の恋愛が充実するという形に見えてしまうが、どっちにしろ50代でも40代でも、未婚男性は東京でも地方でも恋愛は充実しない。

40歳過ぎれば恋愛はない

あまり理解が深まっていないが、男の恋愛にも年齢制限があり、特に結婚に至る恋愛限界年齢は男であっても40歳である。それを過ぎると見合いなどのお膳立て以外での恋愛を経た結婚の可能性はほぼないか(芸能人でもない限り)。

写真:イメージマート

地方の自治体では、若者の流出を食い止めるための政策を練っているところもあるかもしれないが、特に男性の流出を食い止めるのであれば、給料の額など経済的要因だけではなく、そもそも「その仕事は楽しいのか?」という視点がないと的外れになるだろう。そして、20代未婚男性に関しては、「地方にいたら恋愛できない」という部分も無視できない。

※これの既婚男女パターンもあるがそれは後日公開したい。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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