2019クリスマスケーキ「完全予約制」にしたファミリーマート 廃棄はゼロになった?
2019年9月17日、コンビニ大手のファミリーマートは、クリスマスケーキやチキンを完全予約制にすると発表した。はたして廃棄は減ったのか。
1月10日付日本経済新聞「廃棄額5割減、本部の利益1割減」
2020年1月10日付の日本経済新聞では、「予約制を強化した結果、店舗利益3割増、廃棄額は5割減、本部の利益は1割減」としている。
対前年比で、店舗利益は30%増え、廃棄コストは50%減って、本部の利益は10%減ったということ。廃棄コストが減ったのはいいが、「完全予約制」にしても廃棄はゼロではないということだ。ただし、日経の見出しでは「店舗利益3割増」とポジティブな方を謳っている。
2019年12月24日と25日、31店舗を調査した結果は?
筆者は大学生と協力し、2019年12月24日の夜と25日の夜、コンビニやスーパー、デパ地下など31店舗を調査した。
確かに、大きなサイズのケーキは基本的に予約制にしたから減っていた。
だが、その代替品としてなのか、小さいサイズのケーキは、ファミリーマートの4店舗とも、24日夜21時台にも25日の夜21時台にも、棚にたくさん詰まっていた。
ファミリーマートオーナーは「売れるわけがない」「全部半額にしている」
筆者は、2019年、千葉県四街道(よつかいどう)市でファミリーマート四街道駅北口店を経営する、オーナーの高中隆行さんを取材した。
ー本部が出している大きなクリスマスケーキとか恵方巻きを予約にすると発表しました。大きなクリスマスケーキ、もともとそんなに売れないですか?
高中:ここは駅のところに大手ケーキ屋さんがありますから、売れるわけがない。近くのお店でどこも売っていなくて、「ああ、ここ(ファミマ )があってよかった」という立地ではないですから、売れるわけがないです。
ただ、2~3個発注しますよ。当然さっさと見切り(値引き)して売っちゃいます。なので、データ上は毎年2~3個売れていますけれども、全部半額で売っているんですよね。3個売れているけれども全部半額。見切りで半額にします。
高中さんは、クリスマスケーキに限らず、日頃から、消費期限の迫った食品は、廃棄をせず、半額など値引きして売り切る努力を続けてきている。
「やっている感」を出すだけでは本当の食品ロス削減ではないのでは?
目標を立てるのも大事だし、それに向かう過程も重要だ。
だが、企業として問われるのは、やった結果(成果)ではないだろうか。
クリスマスケーキ「完全予約制」とメディアでは報じられたが、実際は、予約にすることで売り上げの減少を恐れる店舗に対し、本部は当日販売も許可しているとのこと。2019年9月17日のファミリーマートの公式リリースを見ても、完全予約制とは書いていない。でも、2019年9月18日には、朝日新聞や東京新聞、テレビ朝日、TBS、日本テレビなどが「ファミリーマート、完全予約制」というキーワードで報道している。
タレントを起用し、「これをやりますよ」と華々しく花火を打ち上げ、人々の注目を集める。筆者も「ファミマ クリスマスケーキ完全予約制」の件でNHKから呼ばれて2019年にニュースウォッチ9に出演した。
廃棄額が5割減らせたのは素晴らしい。でも、本当の意味の「完全予約制」なら廃棄ゼロのはずでは?「完全予約制」という報道を見た視聴者も、そう想像したはずだ。
土用の丑の日のうなぎも「完全予約制」と謳っていたが、予約で売り上げが落ちる懸念をする加盟店に対し、本部は当日販売も許可したという。これも真の「完全予約制」ではない。 「完全」とは100%を意味するからだ。
「ファミマがクリスマスケーキを完全予約制にする」を報じたメディアは多数あった。が、実際どうだったかの成果を報じているのは現時点で日本経済新聞くらいしかない。ファミリーマートの公式サイトには、2019年9月に香取慎吾さんの企画は載っているが、成果報告のプレスリリースは掲載されていない。
無断発注が問題、公式サイトには「無断」の文字は無い
折しも2020年1月初旬、ファミリーマートの社員が加盟店に無断で発注していたという報道が40近いメディアで流れていた。これについて、ファミリーマートは公式サイトに2020年1月8日付で加盟店での弊社社員の発注についてと載せている。「無断」発注だったから問題なのに、あえて「無断」という文字を抜いて「発注」と書いている。
参考
加盟店での弊社社員の発注について(ファミリーマート公式サイト)
「無断」というネガティブな表現を公式サイトのトップに載せておきたくないのだろうか。
食品ロス削減については法律も施行された。食品関連企業としてやるべき責務がある。でも「やります」「がんばります」という目標だけを華々しく発表して人々の注目や評価を集めておいて、やった結果どうだったのかを公式サイトに載せないのは、企業の姿勢として誠実ではないように思う。
ニュースが多く、ほとんどの人は表面上の理解しかしない
日々流れてくるニュースや情報量はとても多く、人々は表面しか見ない。「ファミリーマート」「クリスマスケーキ」「完全予約制」(あるいは予約強化)というキーワードだけを見て「ああ、すごい!」「いいことだよね」と表面上の理解と評価をする。
大阪府堺市で残った給食のパンを教員が持ち帰りしていたニュースもそうだった。表面だけ見て人々は「食品ロスを減らしているのに」「罰するなんて」と批判した。あの件は、食品ロスを減らすメリットだけで語れるのだろうか。筆者はそうは思わない。
環境によさそうなことを謳いながら、実際はそうではないことを「グリーンウォッシュ」という。最近ではSDGsに取り組むようなアピールやパフォーマンスをしながら、実際はそうではない「SDGsウォッシュ」の企業も出てきている。
われわれ消費者は現場を見て食品ロスを減らしているお店を評価しよう
野球のダルビッシュ有(ゆう)選手は、インタビューで日本高校野球連盟に対して次のような意見を述べていた。
ダルビッシュ選手の言葉は、一部コンビニの「食品ロス削減」にも通ずるところがないだろうか。
われわれ消費者は、企業の公式発表や目標だけを鵜呑みにするのではなく、現場や成果そのものを見なければならない。コンビニであれば、店舗とその商品棚だ。「やります」「がんばります」というだけならいくらでも言える。
食品ロスはクリスマスだけ起きているのではない。1年365日、現場の店舗で日々売り切る努力をし、食品ロスを現実的に減らしている店舗こそ評価すべきだろう。
関連情報
2020年1月10日付 日本経済新聞 クリスマスケーキ予約強化、店舗利益3割増 ファミマ
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