食品ロスで騒がれる2019年、クリスマスケーキの廃棄は減ったのか?31店舗の実態を調査した
2019年12月25日、テレビ朝日系列の『グッド!モーニング』に取材コメントで出演した。クリスマスケーキの食品ロスがテーマだ。
東京都内の大手コンビニ加盟店主(オーナー)の取材によれば、コンビニ本部からの締め付け(発注の強要)が厳しく、自爆買い(自腹で買い取ること)をせざるを得ない状況だと言う。
日本フードエコロジーセンター「少し減った」
食品製造工場から出荷されなかった残り食品や、店頭の売れ残り食品を受け入れ、家畜(豚)の飼料に加工している、株式会社日本フードエコロジーセンターの高橋巧一社長に、今年の状況を伺った。
2018年には、通常時に比べて、クリスマスケーキ関連の搬入量は2トン多いとお話されていた。
2019年はどうだったか。
搬入されるクリスマスケーキは、少し減っているとのこと。12月26日に放映されたTBSの「あさチャン」では、日本フードエコロジーセンターに搬入されるクリスマスケーキの映像が映っていた。現場を取材したアナウンサーは「甘い香りでいっぱい」とレポートしていた。減ったとはいえ、まだまだたくさんあるように見える。
日本全国でのクリスマスケーキの廃棄を、マクロ(大規模)に、かつタイムリーに把握することは、ほぼ困難だ。ミクロ(小さな単位)で実態をとらえるしかない。
そこで、インターンの大学生3名に手伝ってもらい、東日本と西日本のコンビニ・スーパー・百貨店・ケーキ専門店など31店舗について、12月24日と12月25日の両日に、どれくらい店頭で売れ残っているか、調査を実施した。
「完全予約制」のファミリーマートは・・・
大サイズのクリスマスケーキについて「完全予約制」を謳っていたファミリーマート。
うなぎに続き、大サイズのクリスマスケーキを予約制にしたのは、2019年初の試みとしてよかったと思う。
だが、大サイズを無くした代わりに、山崎製パンのショートケーキや800円台のクリスマスケーキなどは、12月24日の19:30〜21:30にかけてと、12月25日の14時〜21:30にかけて、棚に大量に詰められていた。地域の異なる4店舗を調べたが、1店舗をのぞいて3店舗は同じ状況だった。
下は、12月24日、クリスマスイブの夜21:30前のファミリーマートの棚。
下がクリスマス当日、12月25日の夜21:30前の、同じファミリーマートの棚。シュークリームは減ったとはいえ、ケーキはパンパンに詰まっている。あと数時間で日付は変わり、販売期限も切れるが、売り切れるのだろうか。
別の店舗では、苺のショートケーキのクリスマスケーキ(税込950円)と山崎製パンのショートケーキ2個入り(税込540円)が棚にたくさんあった。
米国などではクリスマスにターキー(七面鳥)を食べるが、日本ではクリスマスにチキン(鶏肉)を食べるため、毎年クリスマスイブの前後には、スーパーなどの商品棚にチキンがたくさん積まれる。
ファミリーマートでのクリスマスケーキとチキンの状況は次の通り。
12月25日14〜15時
ファミマA店:クリスマスケーキ、小〜中が3個(消費期限は2019年12月26日)、チキンは売り切れ。
ファミマB店:クリスマスケーキ(山崎製パンの2個入りのもの)19個、チョコレートケーキ(山崎製パンの2個入りのもの)5個、モンブラン中2個、ロールケーキ1個、チキンは無し。
12月25日16〜17時
ファミマC店:クリスマスケーキ、チキン 共になし。
ファミマB店:クリスマスケーキ(山崎製パンの2個入りのもの)22個、チョコケーキ(山崎製パンの2個入りのもの)8個、ケーキ中サイズ9個、チキン(もも肉)は多数あり。
12月25日夜19時以降
ファミマ E店(予約+当日販売)売り切れ
セブン、値引き店舗がある一方、店の前で女子4人が並んでいる店舗も
セブン-イレブン・ジャパンの場合、大きな箱のクリスマスケーキを数百円単位で値引きする店がある一方、一切値引きしない店舗もあった。したがって、12月25日夜の時点で、大きなケーキが売り切れている店もあれば、山積みになっているところもあった。
12月24日の夜、店の前にテーブルを出し、寒空の下、女性アルバイト4名が並んでいる店舗があった。特に積極的に売り込みをしているふうでもなかった。
クリスマスケーキとチキンの状況は次の通り。
2019年12月25日14〜15時
セブンA店:クリスマスケーキなし、チキン3本(消費期限 2019年12月26日)
セブンB店:クリスマスケーキ大1個(消費期限 2019年12月26日)、チョコエクレア6個入り6個(消費期限2019年12月28日)、チキンは無し。
2019年12月25日16〜17時
セブンC店:ケーキ無し(棚が空っぽ)、チキンも無し。
セブンD店:ケーキ大1個、ケーキ小(山崎製パンの2個入りのもの)7個(消費期限2019年12月27日)、中2個、チキン3本。
2019年12月25日夜19時以降
セブンE店:(予約+当日販売)売り切れ
ローソンはサンタクロースに扮した男性が呼び込み
2019年12月27日付の朝日新聞でローソン、見切り販売推奨へ 食品ロス減、利益増も狙うと報じられたローソン。
12月24日の20時〜21:30にかけて、サンタクロースに扮した男性と、普段着の男性が、店頭でクリスマスケーキの営業をしていた。
下は、12月24日夜20時〜21時にかけてのローソンの店舗。
そして同じ店の翌日25日夜の商品棚。25日の夜には小型ケーキは減っていた。大きなケーキは500円引きで販売し、売り切る努力をしていた。
クリスマスケーキとチキンの状況は次の通り。
2019年12月25日14〜15時
ローソンA店:クリスマスケーキ大4個、小6個(消費期限2019年12月26日)、チキン無し。
デパ地下は閉店数分前でも数十人の行列・・・
デパ地下には、12月24日の閉店前と、12月25日の14〜15時、16〜17時、閉店前に行ってみた。
どちらの日も、閉店数分前なのに、ケーキ店には数十人の行列ができていた。
複数のケーキ店が入っており、店によって差があった。24日には数十人の行列があったのに、25日には早くに売り切っていた店舗もあった。
チキンも含めた状況は次の通り。
2019年12月25日14〜15時
デパ地下A店:クリスマスケーキ、チキン多数あり。チキンは20%offあり。
2019年12月25日17時
デパ地下A店:チキン、ケーキともに大量にあり、行列もすごい。午後5時前なら、予約無しでも並べばまだ買える状況。
スーパー13店舗、うちスイーツ85個余る店舗や売り切る店舗
スーパーは、大学生と手分けして、13企業の店舗を廻った。
12月25日の夜にはもうクリスマスケーキがなく、関連スイーツが85個ぐらい余っている店舗もあった。
12月24日、手作り用として、スポンジケーキや生クリームなどの食材を積んでいるスーパーもあった。
おそらくクリスマスケーキを作る製造工程で出たのであろう、切れ端を商品化して売っているものもあった。ショートケーキ、チョコレートケーキ、モンブランの3種類があった。
クリスマスケーキとチキンの状況は次の通り。
2019年12月25日14〜15時
スーパーM:クリスマスケーキ4個のみ(消費期限2019年12月27日)、チキン無し。
スーパーS:クリスマスケーキの中サイズと小サイズ多数(消費期限 2019年12月27日)、チキン無し。
スーパーC:クリスマスケーキ(山崎製パンの2個入りのもの)12個(消費期限2019年12月26日のもの)、チキン多数あり。
コンビニでは税込540円で販売されていた山崎製パンの2個セットのショートケーキ、スーパーでは、同じものがほぼ半額で販売されていた。
2019年12月25日16〜17時
スーパーB:チキン多数、クリスマスケーキ中4
スーパーI:ケーキ、チキンともに大量にあり。
2019年12月25日夜19時以降
スーパーA:クリスマスケーキ 売り切れ(賞味期限2020年1月18日のスポンジケーキは7個あり)
スーパーT:クリスマスケーキ 売り切れ
スーパーS:クリスマスケーキ 売り切れ
スーパーK:12月24日のみの販売なので無し
ケーキ専門店は?
12月25日夜に調査したところ、ケーキ専門店は次のような状況だった。ケーキの号数とサイズについてはクックパッドの情報を参考にした。
ケーキ店A (予約+当日販売)12月25日19時頃売り切れ
ケーキ店B
・クリスマスケーキ 生クリーム 4号(直径12cm、2〜4人前) 3つ廃棄
・ショートケーキ 1つ廃棄
ケーキ店C
・クリスマスケーキ 生チョコ 5号(直径15cm、4〜6人前) 1つ廃棄
ケーキ店D
・クリスマスケーキ2つ廃棄
・クリスマスケーキ 6号(直径18cm、6〜8人前)1つ廃棄(消費者のドタキャンによる)
ケーキ店E
・小さなサイズのケーキその1 1つ廃棄
・小さなサイズのケーキその2 3つ廃棄
・モンブラン 1つ廃棄
・ティラミス 2つ廃棄
直接、店主に聞いたところ、ホールではなく、小さなサイズをクリスマス仕様にして、無駄をなくす工夫をしている店もあった。
調査を終えて
食品ロスを削減する対策について、大手企業は、「こうします」という大々的な目標や方針は掲げるが、じゃあ、実際やってみてどうだったのか、成果を公表しない場合も多い。「やります!」というプレスリリースさえ上げておけば、テレビなどのマスメディアが食いつき、大々的に報道してくれる。
ファミリーマートは、「完全予約制」で注目を浴びた。その決断は素晴らしい。マスメディアにも多く取り上げられたので、一般の人も好意的に受け止めていたが、12月24日夜と25日夜に店頭の現場を見てみると、確かに大きなケーキはないが、その代わりに小さなケーキがたくさん棚に詰まっていた。12月26日には棚は空っぽにするから、あの余ったものはどこへ行ったのだろう?うなぎ同様、検証結果が待たれる。
セブン-イレブン・ジャパンとローソンは、ファミリーマートと違い、大きなケーキは予約制にはしていなかった。これは店舗ごとに差が大きく、値引きして売り切る努力をする店舗は25日夜には無くなっており、そうでない店舗は売れ残る傾向にあった。ただ、セブンもローソンも、店の外で立って呼び込みをする姿は、まるで「昭和」だった。今、「平成」も終えて「令和」ですよね?寒空の下、そこまでアルバイトの人(かオーナー?)がする必要あるのかな?と思った。
デパ地下の光景には目をむいた。あと数分で閉店するのに、なぜ数十人も行列して、みんな、うなだれたように下を向いてスマホを操作して立っているのだろう。満員電車で疲弊して帰ってきた平日の夜、そこまでして、なぜ12月24日と25日に、ケーキを買って食べなければならないのだろう。クリスチャンは日本には1%しかいないのに(宗教年鑑による)、どうしてもこの日でないといけないのだろうか?クリスマスには食べないで、別の日にゆっくりと余裕を持って買ってきて楽しむという選択肢はないだろうか。消費者が「買わない」という選択をすれば、売り手も変わらざるを得ない。
販売者ばかりを責めるのではなく、われわれ消費者が、購買行動や消費行動を変える気概を持たなければならない。なぜなら、小売店の売れ残り食品や飲食店の食べ残しは、事業者が100%廃棄コストを払うのではなく、われわれ消費者が納めた税金も使い、家庭ごみと一緒に焼却処分されるのがほとんどだからだ。
スーパーもコンビニも総じて、チキンは、24日朝や25日朝にたくさん積んでおいても、売り切れる傾向にあった。これだけ並べるのに、どれほどのニワトリが殺されたのだろう。あるスーパーでは、12月24日の夜、店員とお客さんが会話し、「チキン売り切れちゃったのよ」とお詫びしていた。店の人同士は「(なくなっちゃって)見積もりが甘かった」などと話していた。いえいえ、売り切れることはいいことだと思うけど、日本に蔓延する「欠品イコール販売機会の損失」という考えがここにもあると感じた。
個人のケーキ店ですら廃棄があることに驚いた。筆者の近所のケーキ店では、朝はたくさんショーケースに並ぶが、夕方になると、もうほとんど残っていない。パン屋さんもそうだ。だからいつも予約している。クリスマスケーキは完全予約制にしたらいい。皆に注目を浴びるためのパフォーマンスの「完全予約制」ではなく、真の「完全予約制」だ。
切れ端を商品化して販売するのは、消費者にとってもありがたい。
2018年に比べると、2019年は、減る傾向にあった。とはいえ、Twitterには「廃棄のクリスマスケーキ をもらってきた」「大きなケーキを値引きせずに山のように積まれていた」といった声も多数見られた。
目標やロス削減施策を掲げた企業は、before→afterを数字で示して欲しい。大量の食品ロスを出さない店は、総じて、粛々と、その対策を進めている。前から減らしているから、そんなに劇的に数字に表れないのだと思う。
小説家の城山三郎氏が好んだ、経済学者ワルラスの言葉をここに引用したい。
2020年は、さらにクリスマスケーキの廃棄が減ることを心から願っている。
謝辞
クリスマスケーキの売れ残り調査には、インターンとして定期的に手伝って頂いている、下記3名の大学生に協力して頂きました。ありがとうございました。
明治大学 冨塚由希乃さん
法政大学 桑原慧さん
神戸市立外国語大学 辻田創さん
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