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[高校野球]気が早いですが……見えてきた来春センバツ出場校

楊順行スポーツライター
2017年のセンバツ決勝は史上5回目の同一都府県対決(写真:岡沢克郎/アフロ)

 来春、第97回選抜高校野球大会の出場校選考に重要な資料となる、10地区の秋季大会がほぼ終わった。九州大会は優勝が沖縄尚学、準優勝がエナジックスポーツ。沖縄から10年ぶりの2校出場となることがほぼ確実だ。地区大会の結果と地域性などを考慮すると、一般枠での選考は無風が予想され、下記のようになりそうだ。

■北海道(選考枠1)

優勝/◎東海大札幌

■東北(3)

優勝/◎聖光学院(福島) 準優勝/◎青森山田(青森) 4強/○花巻東

■関東・東京(6)

関東優勝/◎横浜(神奈川) 準優勝/◎健大高崎 4強/◎浦和実(埼玉) 4強/◎千葉黎明(千葉) 東京は早稲田実と二松学舎大付が決勝に進出。優勝校は確定で、早稲田実の優勝なら6校目は東農大二(群馬)か。二松学舎大付の優勝なら、6校目は微妙

■東海(3)

優勝/◎大垣日大(岐阜) 準優勝/◎常葉大菊川(静岡) 4強/○至学館(愛知)

■北信越(2)

優勝/◎敦賀気比(福井) 準優勝/◎日本航空石川(石川)

■近畿(6)

優勝/◎東洋大姫路(兵庫) 準優勝/◎天理(奈良) 4強/◎智弁和歌山(和歌山) 4強/◎市和歌山(和歌山) 8強/○大阪学院大(大阪) 8強/○滋賀の滋賀学園もしくは滋賀短大付

■中国(2)

優勝/◎広島商(広島) 準優勝/◎米子松蔭(鳥取)

■四国(2)

優勝/◎明徳義塾(高知) 準優勝/◎高松商(香川) 

■九州(4)

優勝/◎沖縄尚学(沖縄) 準優勝/◎エナジックスポーツ(沖縄) 4強/◎柳ヶ浦(大分) 4強/◎西日本短大付(福岡)

 創部101年目の千葉黎明、対照的に3年目のエナジックスポーツ、さらに浦和実も春夏通じて初めての甲子園なりそう。大阪学院大は、出場すれば久々、29年ぶりになる。

アベック出場未達成県は……?

 原則として1県1代表の夏と違い、センバツでは例年、いくつかの都道府県からアベック出場がある。2024年なら北海道から北海と別海(21世紀枠)、青森から青森山田と八戸学院光星、愛知から豊川と愛工大名電、石川から星稜と日本航空石川、京都から京都国際と京都外大西、和歌山から耐久と田辺(21世紀枠)がそれで、出場32校中10校を占めた。来年のセンバツでは和歌山、沖縄からの2校出場がほぼ確実だ。

 大正初期から隆盛する中学野球人気を受け、もう一つ全国大会を開催したらどうか……と、センバツの前身にあたる「全国選抜中等学校野球大会」が創設されたのは1924年。ただ、全国大会をうたいつつ当初は招待試合の色が濃かった。当時は夏の代表枠が少なかったから、実力校の多い地区では、全国大会出場にふさわしい力があっても、基本的に一発勝負の地方大会で敗退することもある。そこで地域の枠にあまりとらわれず、真の実力があると見られるチームを選考委員が選ぶ、という形式で夏の大会との差別化を図った。

 第1回の出場8校は、いずれも異なる都府県からの出場だったが、第2回以降は同県から2校どころか3校出場もザラで、1県から4校出場なんてこともあった。たとえば33年には、出場32校のうち和歌山県から海南中、海草中(現向陽)、和歌山商、和歌山中(現桐蔭)、37年には20校のうち愛知県から中京商(現中京大中京)、享栄商(現享栄)、愛知商、東邦商(現東邦)の4校が出場している。

 これに対し、北海道からの初出場が第15回大会、38年の北海中だったのはまだいいとして、東北からの初出場は戦後、55年の一関一(岩手)まで待たなくてはならない。東北が冷遇されたのは、地域間の実力差がそれだけ顕著だと見られていたのだろう。草創期のセンバツ出場校をながめると、ほとんど関東、東海、近畿、四国のチームで争われていたといっていい。

 現在では、21世紀枠を除き、一般枠での選考は1県最大2校までという内規がある。18年のセンバツでは滋賀から近江、彦根東が一般枠で選考され、21世紀枠の膳所を加えて3校が出場したが、これはきわめてレアケースだ。このときの滋賀は初めてのアベック出場で、23年のセンバツでは長崎も初めてアベック出場。いまだに2校同時出場を果たしていない県は、北から山形、富山、鳥取、島根の4県のみだ。

 もっとも、21世紀枠での出場を除く一般選考での2校出場となると、未達成の県がいくつか増える。21世紀枠込みのアベック出場は(県名、出場年と出場校、○は21世紀枠)、

・岩手 2017 盛岡大付 ○不来方

・福島 2013 聖光学院 ○いわき海星

    2022 聖光学院 ○只見

・新潟 2011 日本文理 ○佐渡

 この3県から一般選考で2校選ばれるには、東北・北信越それぞれの秋季地区大会で優勝し、ベスト4にもう1校入るのが最低条件だろう。ただ北信越なら石川、福井、東北なら宮城や青森などライバルが強力で、一般選考でのアベック出場には3県ともなかなかハードルが高い。新潟はそもそも、47都道府県のうち唯一、令和になってのセンバツ出場がなく、アベックどころかまずは1校でも出場したい。

 ほかに山形、島根も、中止になった20年のセンバツに選考されていたから記録上は令和の出場「あり」だが、実際は試合をしていない。もし山形中央が選出されれば、山形にとって令和のセンバツでは初の試合となる。来春センバツの出場がなさそうな宮崎は、唯一令和の甲子園未勝利県。初勝利は、来夏以降に持ち越しになりそうだ。

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は64回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて55季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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