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金与正を批判した人々が相次ぎ失踪「家族ごと一夜にして消えた」

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
金与正氏(平昌写真共同取材団)

北朝鮮の金正恩総書記の妹、金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党副部長を批判した黄海南道(ファンヘナムド)の住民2人が保衛部に逮捕され、その家族までが行方不明となる事件が最近発生したと、デイリーNKの内部情報筋が伝えている。

道内の海州(ヘジュ)市在住の情報筋によると、「先月中旬、金与正同同志が平壌への『無人機浸透事件』と関連して出した談話文を見て批判的な発言をした市内の住民2人が、保衛部に逮捕された」とし、「その後、彼らの家族までが行方不明になったことで、地域の人々が不安を覚えている」と伝えた。

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情報筋によると、保衛部に逮捕された2人の住民は、国家に対する批判的なことも話し合える親しい間柄だった。

彼らは逮捕される前日にも会い、密かに北朝鮮当局を批判していた。それを盗み聞きした他の住民が保衛部に密告して逮捕されたという。

彼らは、特に最近の南北間の緊張に対する憂慮を表わし「この国が早く滅びるためには戦争が起きなければならない。戦争が起これば、人々は皆、韓国や中国に逃げるだろう」と発言したという。

さらに彼らは、韓国との「統一」「ひとつの民族」の概念を消し去ろうとする当局の措置についても意見を交わした。 金日成・金正日時代と比較しながら、「わが国の住民は誰もが統一を目標にしているのに、今日の国家は統一を望んでいない。国家は中途半端な形で残ることになり、我々の希望も消えた」と話したという。

そうかと思えば、彼らは率先して対韓国非難談話を出している金与正氏に対して「スカートをはいた女性があんな風にでしゃばるのは見たくない」「女に何がわかるのか」と女性蔑視的な発言を重ね、同時に「人民がどれほど苦労しているのか、国の経済的な状況はどうかをよく見て、助けてくれなければならないのではないか」などの批判を繰り返した。

北朝鮮当局が知れば、ぜったいに許されることのない内容と言える。彼らの消息は詳らかでないが、当局の取調べは凄惨をきわめるだろう。

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さらに、彼らの家族までが一夜にして消えたことで、「地域住民は驚愕し、恐怖に震えている」(情報筋)という。

家族らは管理所(政治犯収容所)送りになったか、僻地に追放されたと見られる。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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