なぜ猛暑にコンビニおでん売る?連日最高気温30度超え 日本気象協会は「最高気温29度以下で売れる」
2019年8月6日から、大手コンビニエンスストア各社がおでんの販売を始めたとの報道があった。全国のコンビニオーナーへ取材すると、「どんな食品を捨てていますか」と聞いた時、必ず挙げられるのが「おでん」。儲けも少ないという。
じっくり煮えた食べ頃に販売期限で処分する
千葉県四街道(よつかいどう)市で、ファミリーマート四街道駅北口店を経営する、オーナーの高中隆行さんを取材した。
高中隆行さん(以下、敬称略):おでんは全然もうからないです。おでんは、食べ頃、もうじっくり煮えているのを、「これはもう駄目ですね」と(販売期限で)処分しますから。食べ頃なのに、「もう販売時期を超えている」と。それはそうだけど、今、ここで食べるんならいいんじゃないの、と思いますけれどもね。
ー(筆者)メーカーの品も、消費期限の手前の販売期限で処分しますからね。
高中:形が崩れていたって、味は変わんないですからね。
高中:食べられる物を捨てる、というのが、もう・・・。親というよりも、祖父・祖母から、「出されたものは残さず食え」という習慣(教育)があるので。自分が買った物じゃないにしても、これを捨てちゃうの?というのは・・・。
ーおじいちゃん・おばあちゃんの教えというのが、根っこにあるんですね。
高中:特に本家が農家だったんで、「米粒を残すと目がつぶれるぞ」と言われましたから。
ー言われますよね。
高中:だから、ご飯は残さない。基本的には、(刺身の)ツマとかも、全部食べるのは当たり前でしたから。(コンビニは)販売期限切れでああ捨てるのかと。で、食べる。そうしたら、ぶくぶく太りますよね。
高中:台湾なんかは、ビニール袋でみんな持って帰りますよね。たぶん昔だったら、折りとかタッパーとか聞くことがあった。日本人は、そういうのも減りましたよね。残ったら持って帰るというのを。おじいちゃん・おばあちゃんは、たまに言いますけれども、若い人たちはそんなことは言わないですからね。もったいないな、というのは(あります)。
気象のプロ、気象予報士は「最高気温が30度を割り込めばおでんが売れる」
食料品は飲料は、気温や気象条件に売上を大きく左右される。
では、気象のプロである気象予報士は、真夏の猛暑におでんを売る戦略をどう見ているのか。
日本気象協会の気象予報士、小越久美(おこし・くみ)さんは、「立秋過ぎて、最高気温が30度を割り込むとおでんが立ち上がってきます(売れる)」と述べている。
2019年の立秋は8月8日。
では、8月8日以降の最高気温の予想はどうなっているのか。
国土交通省、気象庁の2週間気温予報によれば、東京都では、8月12日に最高気温29度と予想されているものの、8月18日まで、連日、最高気温30度を超える、と予想されている。
日本気象協会は、2019年5月の時点で、すでに「2019年7月は、前年並みほどの猛暑にはならない」と予測を発表している。
2019年8月2日付の日本食糧新聞の記事『森永製菓、冷夏で「冷やし甘酒」苦戦も「甘酒」好調で穴埋め 猛暑到来、攻勢へ』を読むと、「冷夏のため、(販売が)前年を下回った」とある。記事には「苦戦」と書いてあるが、この結果は順当なのではないだろうか。
もう少し気象データを活用しては?
2017年にコンビニを取材した時には「お盆明けからおでんの販売がスタート」と言っていた。
が、2019年には、お盆明けどころか、立秋より前の8月6日におでん販売がスタート。どんどん前倒しになってきているようだ。
気象のプロのデータを使ってはどうだろう。
日本気象協会のデータのおかげで、豆腐メーカーの相模屋食料では、年間30%の食品ロスを削減し、コストとしては年間で数千万円単位の無駄削減につながっている。
総務省の調査によれば、気象データをビジネスに活用している企業は、調査対象企業のうち、たった1%に過ぎない。
せっかくの気温予報や気象データをもっと活用すれば、経営コストの削減につながり、食品ロスも今より減らすことができるはずだ。