「子どもを産める者しか結婚できない」20代若者の半分以上が「結婚したくてもできない」不本意未婚問題
下がり続ける出生数
先ごろ、2023年1月から10月までの人口動態速報が出たが、予想以上に出生数が減っている。前年同期間比で、出生数は▲5.3%で、このまま推移すれば、2023年の年間出生数は72万人台へ突入するかもしれない。
また、婚姻数は同機関比▲5.2%で、こちらも年間婚姻数は47万組になるだろう。年間婚姻数が50万組を割るのは、戦前の1933年以来で実に90年振りのことである。
基本的に、日本においては、婚姻数と出生数は完全にリンクする。婚姻数が減れば自動的に出生数は減るのである。
何度もお伝えしているが、私が独自に算出した「発生結婚出生数」という指標によれば、1婚姻あたり(その後離婚があろうとも)1.56人の子どもが生まれる計算である。逆にいえば、婚姻数が1つ減れば、1.56人の出生が消えることになる。
これに対して、「人によっては生む子どもの数が違うのだから一概には言えないのではないか」という反論がきたりするのだが、以前の記事(【的外れな上に逆効果な少子化対策】少子化は第三子が生まれないことが要因ではない)で説明した通り、結婚がひとつ発生すれば73%が第一子を出産し、57%が第二子を出産し、26%が第三子を産むという傾向は、少なくとも直近15年間は不動である。
つまり、出生数の増加をはかるためには、婚姻数を増やさない限り絶対に実現不可能なのは統計上も明白なのであるが、なぜかこの件をひたすら無視しようとする界隈がいる。
対初婚第一子出生率
今回は、より厳密に、婚姻数といっても妻の初婚数と出生数との関係についてお伝えしたい。
婚姻数を増やせば出生数はあがると申し上げたが、それは当然ながら出生対象年齢の婚姻が増えないとどうにもならない。シニアの再婚が増えても、それは個人のしあわせは増えても、出生増にはならないのだ。
1990年から10年ごとの(直近は2022年数値)妻の15-49歳までの初婚数と同じく15-49歳までの第一子出生数の推移を比較してみる。あわせて、対初婚数に対する第一子出生率とを合わせたものが以下のグラフである。
ご覧の通り、妻の初婚数が激減しているのに比例して、第一子出生数も減っている。至極当然である。初婚がなければ第一子は生れてこないからだ。
しかし、2010年においては、初婚数より第一子出生数が上回っている。これは単年での比較なので、2010年以前に初婚した夫婦が2010年に第一子を産んだ場合が含まれるからだが、同時に、これは初婚数自体が減っていることを示している。2022年にはさらにその差が広がっている。つまり、初婚数は減っているのだが、その減った初婚数の中で第一子を産む割合が増えたということだ。
対初婚第一子出生率を見ていただきたいのだが、1990-2000年までは、1を切っていたが、2010年に1.02となり、2022年には1.25となっている。わかりやすくいえば、1990年代よりも2022年に初婚した夫婦の方が、より多く第一子を産んでいることになる。とはいえ、初婚数自体は1990年対比で半減である。言い方を変えれば、今は「出生できる夫婦しか結婚しなくなっている」と見て取れるのである。
裕福じゃなければ結婚できない
これも繰り返しお伝えしていることだが、世帯年収900万以上の児童のいる世帯数は2000年とほぼ変わっていない。子どもの数が減っているのは、かつて出生ボリューム層だった年収中年層の出生だけが減っているからである。有体にいえば、「裕福じゃなければ結婚も出産もできなくなっている」ということなのだ。
そして、より細部を見ていくと、この初婚数の減少はほぼ20代の初婚数の減少によって占められている。これを晩婚化というのは間違いであることは、以前の記事(晩婚化など起きていない。起きているのは若者が結婚できない状況である)に書いた通りたが、簡単に説明すると、20代の初婚達成率は大幅に減少しているが、さりとて、30代以上の初婚達成率が増えているかというと全く増えていない。「晩婚化」というのであれば、少なくとも後ろ倒しになっていないといけないはずだが、35歳以上の初婚も40年前とたいした違いはないわけで、これは「晩婚化」ではなく、むしろ、「20代の若者が20代のうちに結婚できなくなったから」だと解釈できる。
フランスとの差は20代の出生率
少子化対策でよく「見習え」といわれるフランスだが、なぜフランスが日本より、合計特殊出生率が高いかというと、この20代での出生率の違いだけなのである。20代だけで0.3も高い。つまり、フランス並みに20代での出生率があれば、今の日本の出生率は1.6以上になるということだ。(参照→フランスと日本の出生率の差~日本の20代が結婚できない問題)
これは、日本より低出生率が心配な韓国でも同様で、20代の出生率が極端に低いがゆえの、0.78という出生率になっているのである。
言い換えれば、日本も韓国も、20代の出生改善がなければ、出生数も出生率もはあがらないということである。
「結婚したくない」わけではない
では、日本の20代が「結婚したくない」と思っている人ばかりかというとそうではない。むしろ若いほど「結婚したい」と思っている割合が高く、加齢とともに「結婚意思」は失われていくのだ。2021年の内閣府の調査でも、年代別でもっとも結婚意思が高いのは20代で、男54%、女65%もいる。
問題は、もっとも結婚意思の高い20代が、20代のうちに結婚できない問題なのである。これを私は不本意未婚と読んでいるが、男女とも1980年代までは「結婚したい」と思う20代はほぼ100%結婚できていた、しかし、今や5割以上が「結婚したいのにできない」という不本意未婚者である。
もっといえば、一部の裕福な若者だけが結婚・出産できて、中間層以下ができなくなっているという若者の経済環境の格差問題なのであり、20代の半数以上が可処分所得300万円にも達していないという現実の問題である。それは、すでに結婚して子どものいる夫婦に児童手当を拡充したところで解決する問題ではない。
出生数が減っているのは婚姻数が減っているためであり、婚姻が減っているのは20代の若者の経済的不安が増加しているためである。ここを見て見ないフリをしているうちは、婚姻数は今後どんどん低下して、自動的に出生数も激減していくだろう。
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