「リファイニング建築」で再生した賃貸マンション その手法と建物特性を解説(補強工事編)
三井不動産が青木茂建築工房とともに取り組むリファイニング建築を活用した老朽化不動産再生コンサルティングサービス、その6例めとなる「シャトレ信濃町」が5月に完成。新たな賃借人の募集を開始した。
今回の「リファイニング建築」の注目点は、既存不適格の賃貸マンションを建て替えではなく、大がかりな補修・改装によって現状の大きさを維持させたこと。そして、建物の性能と魅力を上げて収益性を向上させたことにあるだろう。
「リファイニング建築」は、一般的には「工事費用が抑えられ、工事期間が短縮される」ことや「使用するコンクリートの量が減り、資源の有効活用ができるので地球環境にやさしい」点などに関心が集まりがち。しかし、不動産・建築関係者や賃貸経営者などプロからすると、別の側面に興味を持つはずだ。
たとえば、同マンションは「既存不適格」であると同時に築約50年の建物となる。そのことから、耐震補強が行われるは当然のこととして、気になるのは構造躯体や杭に関する調査・改善がどこまで行われたのか?ということ。
そして、工事で耐用年数がどこまで伸びたと認定されたのか?
それに伴い、建物オーナーが建設費をローンでまかなう場合、どのくらいの返済期間が認められるものなのか?
工事を始めるにあたり、建築確認申請は行われたのか?
同マンションは「一部1階駐車場だったところに住戸を新設」しているのだが、それは「増築」になってしまわないのか?
それよりなにより、大規模な工事を始めるにあたり、どうやってそれまでの賃借人に退去してもらったのか?
リファイニング建築を実施したといっても、築約50年という事実は変わらないので、高い家賃で借りてもらうための魅力付けはどのように行われたのか?
プロであれば、知りたい項目が次から次に出てくるはずだ。
そこで、「シャトレ信濃町」のリファイニング建築について、一歩踏み込んだ解説を試みたい。内容が多いので、リファイニング建築の内容を「補強工事編」「賃貸運営編」の2回に分けて解説する。
今回は、前半としてリファイニング建築の「補強工事編」だ。
もし建て替えたら、賃貸収益は大幅な減収に
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