「リファイニング建築」で再生した賃貸マンション その手法と建物特性を解説(賃貸運営編)
冒頭の写真は、ドアに設置された部屋番号。「101」号室なのだが、よくみると、「101」の「0」部分にドアスコープが配置されている。
ドア全体をみると、「101」という部屋番号の配置場所のバランスが微妙だ。
上の写真のとおり、部屋番号の表示はドアスコープの場所に合わせているため、左右の中心からずれている……そのアンバランスさがむしろ個性的と思えるドアは「シャトレ信濃町」のもの。三井不動産が青木茂建築工房と共同で展開する老朽マンションの「リファイニング建築」、その最新事例として5月に工事を完了した賃貸マンションである。
「シャトレ信濃町」は、新しい工夫により、建物の寿命を延ばし、建て替えに匹敵するほどの耐久性を得た。
一方で、「築約50年」という事実は変わらない。
半世紀前の建物ではあるが、リファイニング建築で、“新築同様”のお墨付きも得ている。だから、新築と同等の家賃設定となった。
新築並み賃料を可能にするため、「シャトレ信濃町」には住居の魅力を上げる工夫が凝らされている。ドアに付けられた部屋番号も、そのひとつ。遊び心があり、他とはひと味違う賃貸マンションを演出しているわけだ。
室内に入り、トイレのドアをみると、ドア枠が薄いことに気づく。それが、下の写真だ。
建物維持を考えれば、ドア枠はもう少し分厚く、丈夫にしておきたい。実際、高級マンションは、賃貸でも分譲でも、ドア枠は太いのが普通だ。しかし、このドアを見ると、細い枠が生み出す、上質な洒落っ気もわるくない、と思える。
そのような味付けが随所に凝らされているのも、リファイニングされた「シャトレ信濃町」の特徴である。
もちろん、部屋番号表示やドア枠の工夫には気づく人は限られる。多くの人は気づかないだろうが、月額で30万円を超えるような家賃を払う人間はそのような遊び心を喜ぶ。それこそが、「月額30万円以上払うなら、買ったほうが得」といわれながらも、高額賃貸が都心に増え続けている理由だろう。
「シャトレ信濃町」の工夫を紹介する2回目は、高額賃貸マンションの運営に関する独自の工夫を紹介したい。
建物に残された弱点を補うために
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