停滞期とみなされていた名古屋のマンション市況、ゆっくりと動き出したリアルな理由
東京、大阪の新築分譲マンション価格は相変わらず上昇を続けている。それに対し、名古屋の新築マンション価格は下がっている……そう考えている人は多いのではないだろうか。
たしかに、名古屋のマンション市況は東京、大阪とは異なる動きをしており、価格上昇が一段落した時期もあった。
しかし、「価格が下がり続けている」わけではなかった。そして、今、名古屋独自の新しい動きが出ている。
たとえば、名古屋駅に近い場所で新規販売されるマンションの価格が上がってしまったため、以前から販売を継続している超高層マンションに割安感が生じていること。そして、郊外エリアでも価格上昇が起き、新たな人気スポットが生まれたこと……東京、大阪の状況からは推測できない名古屋のリアルなマンション市況を解説したい。
名古屋独自のマンション市況は2014年頃から始まった
最新の名古屋マンション市況を説明する前に、これまでの状況をおさらいしておこう。
名古屋で地価上昇、マンション価格の上昇が始まったのは、2012年頃から。2014年3月に発表された公示地価では東京、大阪、名古屋の三大都市圏は6年ぶりに地価上昇が起きたことが認められた。以後、名古屋市内では住宅地で地価上昇が続き、2019年9月に発表された基準地価では、「名古屋市内の住宅地価が前年比2.1%上昇」で7年連続のプラスとなった。この頃まで、名古屋市のほうが大阪市より地価とマンション価格の上昇が顕著だった。
従来、不動産価格の上昇は東京→大阪→名古屋の順に波及したのだが、今回は東京から名古屋に波及し、大阪は置いて行かれた感があった。
名古屋市内で不動産価格がいち早く上昇したのは、リニア中央新幹線に対する期待値が高かったためだ。当初、リニア中央新幹線で品川―名古屋間が開通するのは2027年の予定だった。リニアが開通したら、名古屋の経済は一気に盛り上がる。その前、早めに名古屋のマンションを買っておこうという動きが出て、マンション人気が上がり、価格も上昇したわけだ。
その動きが一段落したのは、2022年。新規に発売される分譲マンションが増えすぎ、「供給過多」と呼ばれる現象が起きたときだ。
そのことは、2023年2月17日のYahoo!ニュース一時的にマンション価格が下がる「供給過多」が、地価上昇を続けるあの大都市で発生かで取り上げた。
記事では、「供給過多」により、名古屋の新築分譲マンションに「価格調整」の動きが出ていることを報告。そのインパクトが強かったのだろう、その後に「供給過多」「価格調整」をキーワードにする名古屋関連記事が多発した。
その結果、名古屋のマンションは勢いを失い、価格も下がっている、という印象を持つ人が多くなってしまった。しかし、実際のマンション市況には異なる動きが出ている。
名駅周辺では、2LDKが3988万円からのタワマンも
名古屋市内において、新築マンション価格が高騰している場所といえば、名駅(名古屋駅)周辺を思い浮かべる人は多いだろう。「驚くほど価格が高い場所」という印象もある。
しかし、実際はどうだろう。
現在「即入居可」で販売されている地上42階建ての超高層マンション「NAGOYA the TOWER」の場合、先着順販売住戸は約60平米の2LDKで5758万円。これから販売される住戸ならば5300万円台からの価格設定だ。
これは、2026年1月完成予定で現在販売中の「グランドメゾン名古屋駅」の住戸が「約61平米の2LDKが6290万円から」となっていること比べて割安に感じる。
名古屋駅の太閤通口(新幹線)側で、駅から徒歩10分の「リニアゲートタワー名古屋」(建物完成済み)ならば、約28〜71平米の1K〜3LDKが2348万円から7248万円。約57平米の2LDKタイプが5148万円など、さらに安い。
おかげで、「リニアゲートタワー名古屋」のホームページは現在、アクセスが殺到する人気ぶりだ。
しかしながら、「NAGOYA the TOWER」も「リニアゲートタワー名古屋」も値下げした結果、割安になっているのではない。新規販売時から変わらぬ価格で販売を続けているうちに、周囲の新築物件の価格が上昇。その結果、安いと判定されるようになったのだ。
名古屋市内の気になる動きはそれだけではない。郊外部でも興味深い現象が起きている。
ファミリー向け人気物件が多発する新たな注目エリア・瑞穂区
名古屋市内における新築マンション価格の上昇は、郊外部でも生じている。顕著なのは、郊外の高級住宅エリアとして知られる地下鉄東山線の沿線。なかでも覚王山駅周辺では、超高額マンションの新規発売が相次いでいる。
一例を挙げると、「ザ・パークハウス覚王山」は約88平米の1LDKが1億2890万円とか約102平米の2LDKが2億3500万円という設定。「パークコート覚王山山門町」では、4億6000万円もする3LDK(約153平米)が発売予定となっている。
地下鉄東山線沿線で、新築マンション3LDKがなんとか購入できる場所として人気が高い一社(いっしゃ)駅周辺でも、3LDKが6000万円台から8000万円台という新規物件が販売中だ。名駅周辺より郊外の落ち着いた住宅エリアのほうが、マンション価格は高いのではないか、という状況が生まれている。
そこで、今、名古屋市郊外で、ファミリー向けマンションの新たな狙い目エリアとなっているのが、瑞穂区。名古屋駅の東南に位置しトヨタ自動車の本拠地・豊田市に近いのも、名古屋では好まれる立地条件となる。
瑞穂区のなかでも2026年にスタジアムがリニューアルオープンする瑞穂公園に近い場所は、坂のない平坦な場所で緑が多いこともあり、ファミリー向け分譲マンションの新規発売が続いている。たとえば、「ウエリス瑞穂公園」が第1期で即日完売が発生し、めぼしい住戸はすでに売り切れている。
続けて、来年の年明けから「ルネ瑞穂公園」の販売が予定されている。
「ウエリス瑞穂公園」は5000万円前後で購入できる3LDKが中心となり、「ルネ瑞穂公園」も取材時点で価格未定ながら、6000万円を切る価格で3LDKが購入できる見通しだ。
いずれも、重厚な外観、高い省エネ性能など、建物の質を高めているのも特徴となる。
再び価格上昇が始まった名古屋のマンション市況。そのなかで、納得価格のマンション争奪戦が始まっている。