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アジア圏に顕著な薄切り肉文化が日本で花開いた理由

松浦達也編集者、ライター、フードアクティビスト
(写真:イメージマート)

なぜ日本に薄切り肉文化が花開いたのか。

焼肉、すき焼き、しゃぶしゃぶなど、日本でには薄切り肉を前提とした料理がある。だから日常では薄切り肉を手にする機会が多い。だが、日本人が海外で生活すると驚くことがある。

「スーパーに薄切り肉がない!」

近年では、食の世界でも国境の溶融が起きていて、欧米などの精肉店でも場合によっては、薄く切ってくれるケースもあるというが、基本的には日系、韓国系、それに一部中国系スーパーでないと薄切り肉の入手は難しい。それも薄切り肉が生活の中心にあるのは、焼肉の盛んな日本と韓国で、実は広大な中国では、地域によっては薄切り肉が入手しづらかったりもするという。

東アジアでなぜ薄切り肉が広まり、定着したのか。そして薄切り肉文化はなぜ日本で花開いたのか。その話の前に、まず歴史上に登場する薄切り肉の歴史について触れておきたい。

日式焼肉の端緒は1500年前の中国にあった

肉食は、日本を含む世界中で連綿と継がれてきた食文化だ。だが宗教による禁忌や領土争い、植民地化が複雑に絡み合い、様々な制約のもと、各国の肉食・食肉文化はそれぞれの形に発展していった。

小さい肉、切った肉の炙り焼きの歴史をさぐると、中国最古の農業書「斉民要術」(540年頃)にもその端緒――というか、ほぼ現代の焼肉にも近い料理が記録されている

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編集者、ライター、フードアクティビスト

東京都武蔵野市生まれ。食専門誌から新聞、雑誌、Webなどで「調理の仕組みと科学」「大衆食文化」「食から見た地方論/メディア論」などをテーマに広く執筆・編集業務に携わる。テレビ、ラジオで食トレンドやニュースの解説なども。新刊は『教養としての「焼肉」大全』(扶桑社)。他『大人の肉ドリル』『新しい卵ドリル』(マガジンハウス)ほか。共著のレストラン年鑑『東京最高のレストラン』(ぴあ)審査員、『マンガ大賞』の選考員もつとめる。経営者や政治家、アーティストなど多様な分野のコンテンツを手がけ、近年は「生産者と消費者の分断」、「高齢者の食事情」などにも関心を向ける。日本BBQ協会公認BBQ上級インストラクター

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