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国政調査権を第三者委員会より下に見る国会議員の馬鹿さ加減

田中良紹ジャーナリスト

フーテン老人世直し録(469)

神無月某日

 関西電力が3億2千万円に上る金品の受領を認める会見を行ったのは、臨時国会が召集される1週間前の9月27日だった。その日に会見を行ったのは前日に国税内部からの告発が報道されたからである。

 内部告発者は今年3月からメディア等に告発文書を送り付けていたが反応がなく、そのためこの臨時国会をターゲットにメディアへの働きかけを強め、それが9月26日の共同通信をはじめとする報道になり、関西電力は急きょ会見せざるを得なかったと考えられる。

 その会見は常識を超えるものだった。3億2千万円の金品の受領という大問題であるにもかかわらず、具体的な内容には一切触れず、死亡した森山元助役に注目が集まるようなことばかりを言った。

 しかしこの事件が発覚したのは、昨年1月の国税による税務調査によってである。その後、関西電力は税務署の指示通りに修正申告を行い、一応の社内調査は行ったものの、誰も責任を問われることなく事件は闇に葬り去られた。

 これ普通の民間企業ではありえないケースである。電力会社は普通の民間企業ではないからこうなった。国税がなぜ「原発の闇」にメスを入れたのかフーテンは不思議だが、分かることはメスを入れた結果出てきた膿は当局によって公表されず、修正申告だけ行えば事件は闇に葬られる構造の中に関西電力はあるということだ。

 つまり関西電力は不祥事が起きても自らを律することが出来ない。自らが組み込まれた構造の上部から命令されない限り、責任を取ることもできない。最初の27日の会見は急だったために上部からの指示はなく、会見を開かなければ批判が高まるのを恐れただけの対応だった。

 しかし金品受領の具体的な内容が分からなければ話にならない。1週間後の10月2日に二度目の会見を開き具体的な金品と受け取った氏名を公表したが、これは国税がすでに把握しているので隠しようのない事実を言ったに過ぎない。そしてこの時点ではまだ責任の所在に頬かむりだ。上部からの指示がなかったからだ。

 その2日後に臨時国会が召集され、安倍総理はフーテンにとって「?」が連続する所信表明を行ったが、ともかく最後に「憲法改正」を訴えて演説を終えた。そしてこの国会は「日米貿易交渉」と「憲法改正」がテーマだと位置づけられた。しかし野党各党は代表質問で「原発の闇」ともいうべき関西電力の不気味なスキャンダルを取り上げた。

 すると予算委員会が開かれる前日の9日、急に関西電力の会長と社長の辞任が発表され、同時に第三者委員会のメンバーが発表された。自らを律することのできない関西電力に構造の上部から指示が下り、初めて責任を取る形と調査の形とが示されたのである。

 それは当然ながら「原発の闇」を明らかにする目的ではない。国会での野党の追及をかわす目的のためだ。1年以上も「原発の闇」を隠蔽し、外部への公表を行わずに来た国税、そして通常なら国税の告発を受けて捜査に乗り出す検察が動かず、さらに自分では何も決められない関西電力が問題の真相を明らかにするはずはない。

 何より第三者委員会の人選を見れば「目くらまし」であることは明らかだ。元検事総長をトップに裁判官や弁護士の重鎮をそろえたところに狙いが見える。欧米の国民の価値観と日本人のそれとが著しく異なる点が2つある。司法とメディアについてである。

  欧米では裁判所を信ずる者から信じない者を引いた数字がプラスではあるがそれほど高くはない。米国は9.9ポイントと一桁だ。ところが日本では裁判所を信ずる者から信じない者を引いた数字は58ポイントと高い。

 それが新聞やテレビになると欧米では信じない者の方が圧倒的に多く、米国ではマイナス50ポイントを超える。つまり75%が信じていないと答え、25%が信じると答える程度だ。ところが日本ではプラス40ポイントもある。そんな国は欧米には見当たらない。日本と価値観が似ているのは韓国と中国だけである。

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ジャーナリスト

1969年TBS入社。ドキュメンタリー・ディレクターや放送記者としてロッキード事件、田中角栄、日米摩擦などを取材。90年 米国の政治専門テレビC-SPANの配給権を取得。日本に米議会情報を紹介しながら国会の映像公開を提案。98年CS放送で「国会TV」を開局。07年退職し現在はブログ執筆と政治塾を主宰■オンライン「田中塾」の次回日時:11月24日(日)午後3時から4時半まで。パソコンかスマホでご覧いただけます。世界と日本の政治の動きを講義し、皆様からの質問を受け付けます。参加ご希望の方は https://bit.ly/2WUhRgg までお申し込みください。

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