古来から「將を射んと欲すれば馬を射よ」で権力者夫人は狙われる
フーテン老人世直し録(286)
弥生某日
「將を射んと欲すればまず馬を射よ」。古来から言われてきた「攻め方」の鉄則である。敵の大将を屈服させるにはまず大将を支える「周辺から攻めろ」という意味だが、永田町ではしばしば権力者の妻が馬に例えられてきた。
権力者は寄ってくる者を容易には近づけさせない。近づけさせないから権力者でいられる。しかも日々闘争に明け暮れるのが権力者だから他人を見る目は厳しい。普通の人間が権力者と知り合うことも懐に入り込むことも簡単ではない。
しかし権力者の妻はいわば「門前の小僧」で、夫から話を聞かされたり、夫のやることを横で見ているが、自分が直接やった訳ではないから、見方は表面的で物事の裏表を知る経験に欠けるところがある。
ところが権力者の妻であるから下にも置かぬ扱いを受ける。様々な人間がひれ伏してくるので自分に力があると実感する。そのうち自分の貢献で権力の座を掴むことが出来たと錯覚することもある。権力者を篭絡させようと考える側は権力者の妻を篭絡する方が容易だと考える。そこで権力者の妻は狙われる。
正確に言うと最も狙われやすいのは妻だが、親兄弟や親せきもターゲットにされる。相手は甘言を弄して接近し、喜ばせて貸しを作り、それを利用して権力者に取り入っていくのである。フーテンはこれまでそうした事例を数多く見てきた。そして権力者の失墜につながった例も数多く知っている。
将来の総理候補と目された自民党議員に取り入ろうとしたゴルフ場経営者は、議員の妻がゴルフを始めたことを知り、自分のゴルフ場のコンペにその妻を招待する。初めてコースに出た妻はプロに囲まれプレイしてスコアもプロ任せ、終わってみたらハンデのおかげで優勝した。妻は感激し議員の後援会でそれを語る。こうしてゴルフ場経営者と議員との関係が生まれ、議員はその後「政治と金」の問題で議員辞職に追い込まれた。
政界実力者の17歳年下の妻は、先に夫が死ぬと思い、夫に内緒で老後の蓄財に励んだ。実力者の妻には銀行や証券会社が日参して蓄財方法を教える。ところが先に妻が死んでしまい、国税が遺産相続の税務調査に入ったことから実力者の脱税疑惑に発展し、実力者は逮捕され晩節を汚した。
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