『アンチヒーロー』そこまでダークではなかったヒーロー 闇が深そうな予兆も…
TBS日曜劇場『アンチヒーロー』がスタートした。公式サイトの打ち出しなどから、ダークヒーローのアイコンとなるような突き抜けた弁護士ドラマを想像していたが、第1話はアンチ的な視点を強調した正統派弁護士の物語だった。
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アンチの設定が目立たなかった第1話
長谷川博己演じる弁護士・明墨の主張は「過ちを犯してもやり直せるような、日本はそんな甘い国ではない」。
冒頭から「法律というルールでは罪を償って許されても、一度罪を犯した人間は現実の社会ではどんなに心を入れ替えても、出所した先に自分の居場所はない。幸せになれるわけはない」と犯罪者を取り巻く厳しい社会の現実を説く。
そしてはじまった第1話では、無罪を主張する殺人事件の被疑者を弁護する。
ドラマ公式サイトでは「殺人犯へ、あなたを無罪にして差し上げます」とするが、無罪を主張する被疑者はそもそも殺人犯ではなく、どこがアンチなのか、はてなマークが浮かぶ。
その被疑者を信じて裁判で争う姿は、従来通りの正統派の弁護士ドラマ。裁判の過程で、法に触れない範囲で手段を選ばない弁護活動も見せるが、そこまでの異端という印象ではなかった。
また、部下の新人弁護士が主人公のやり方に対して声高に正論をぶつけることでアウトサイダーに見せる演出も、よくあるドラマそのもの。第1話の全体のなかでの細かな部分になり、アンチの設定がほとんど目立たなかった。
闇の深い物語を想像させたラスト
しかし、ドラマはまだはじまったばかり。本作の公式サイトが謳うのは、“前代未聞の逆転パラドックスエンターテインメント”。
いまはまだ隠されたアンチヒーローのアンチな側面がこれから回を経て大きくフィーチャーされていくのだろう。そしてそれは、悪のように見えるが、視点を変えれば正義に映るはず。
第1話で主人公の娘が登場したが、彼女の過去がアンチヒーローの誕生につながるのは間違いないだろう。それが検察のトップである検事正の過去とも重なってくることを思わせるラストだった。闇の深そうな物語を想像させる。
これからストーリーが進むにつれて、物語は深く込み入って複雑になることだろう。日本の司法を舞台にした正義と悪のあり方に、何をどう新しく示すのか。アンチヒーローのアンチの真価を見届けるべく、この先の展開に注目したい。
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