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名古屋のシンボル・ナナちゃん人形が消えた!実は深イイその真相

大竹敏之名古屋ネタライター
巨大マネキン・ナナちゃんはどこへ? 替わりにそっくりのミニサイズナナちゃんが!

人気急上昇中だったのになぜ消えた…?

「えっ!ナナちゃんがおらん!!」「何で?どこ行ったの!?」…。

「探さないで下さい。」——、そんなメッセージを残して、名古屋のシンボル・ナナちゃん人形が11月9日、突如姿を消しました。現場の名古屋駅では、見慣れた風景が一変したのを目の当たりにした市民から、驚きとショックの声が相次ぎました。

ナナちゃん人形とは名古屋駅の高さ6・1mの巨大マネキン人形。1973年に名鉄百貨店セブン館(当時)のシンボル兼広報部員としてデビューしました。以来、水着やクリスマスドレス、セールの法被、ドラゴンズのユニフォームなどのコスチュームで市民の目を楽しませ、季節の風物詩的存在にもなってきました。さらに2012年に一般企業の広告使用にも解禁されると、映画やアニメ、企業の商品パッケージ風のバラエティに富んだコスチュームを着用するケースが増え、それにともないSNS投稿するファンも増えて人気が急上昇しています

クリスマスのドレス、初売りの着物、オリジナルワンピなど、人々の目を楽しませてきたナナちゃん。その時々のトレンドも巧みに取り入れたファッションリーダーでもある
クリスマスのドレス、初売りの着物、オリジナルワンピなど、人々の目を楽しませてきたナナちゃん。その時々のトレンドも巧みに取り入れたファッションリーダーでもある

デビュー以来2度目、15年ぶりのお化粧直し

そんな話題性が高まる一方だった中での突然の“蒸発”。ナナちゃんに一体何があったのでしょうか?

お化粧直しのために引越しし、その間しばらく留守にするんです」とあっさり真相を明かしてくれたのは、ナナちゃんが“所属”する名鉄百貨店の広報・保田めぐみさん。「ずっと屋外に立ちっぱなしで、少し汚れや痛みも目につくようになっていたので、しっかりケアしてきれいになってもらうことにしました」

引越しのための身づくろいは11月9日午後3時にスタート。衣装を脱がし、足場を組んで腕などのパーツを上から順番に7分割して取り外し、およそ3時間で完了
引越しのための身づくろいは11月9日午後3時にスタート。衣装を脱がし、足場を組んで腕などのパーツを上から順番に7分割して取り外し、およそ3時間で完了

引越し用トラックに身を納められるようコンパクトになったナナちゃん。「15年前は記録を取っていなかったので、今後のためにも今回は作業手順などもしっかり記録していきたい」と広報・保田さん
引越し用トラックに身を納められるようコンパクトになったナナちゃん。「15年前は記録を取っていなかったので、今後のためにも今回は作業手順などもしっかり記録していきたい」と広報・保田さん

ナナちゃんが定位置の名古屋駅前を離れるのは、半世紀近い歴史の中で2度目。2006年以来、15年ぶりのこととなります。頭や腕などを分割してコンパクトになった状態で京都へ引越し、現地のマネキンメーカーで3週間念入りにボディメンテナンスを行うのだといいます。

2006年のお化粧直しの際は、愛知県芸術文化センター(名古屋市東区)内にしばらくの間引っ越した。普段は絶対に見られないナナちゃんの後頭部を見られる貴重な機会だった
2006年のお化粧直しの際は、愛知県芸術文化センター(名古屋市東区)内にしばらくの間引っ越した。普段は絶対に見られないナナちゃんの後頭部を見られる貴重な機会だった

今回の引越しは一般にはアナウンスされていなかったため、作業状況を目の当たりにした通行人は一様にナナちゃんの身を案じ、あくまで一時的な不在だと知ると、ほっとした表情を見せていました。

「下校の時に毎日通るので、いつも衣装などチェックしています。今日は“えっ、ナナちゃんどうなるの?”とびっくりしました。でも、きれいになって戻ってくると聞いて、“だったらよかった”と安心しました」(名古屋市内の女子高生)

「ビルを建て替えると聞いてたから、その準備として撤去されるのかと思って記録として動画を録っていました。いなくなると寂しいよね。あ、またすぐに戻って来るのかね。それは楽しみだね。ついこの前も鬼滅(の刃)の服を着てたから孫に写真を送ってやったら喜んでくれてね。連絡を取るいいきっかけになるんだよ」(春日井市の70代男性)

ナナちゃんの留守中は妹のミナちゃんとツーショットを

「ナナちゃんとは一心同体!京都へもついていきます」という名鉄百貨店広報・保田めぐみさん。留守をあずかる“ミニナナ=”ミナちゃんは、普段は百貨店内でのPR活動にいそしんでいる
「ナナちゃんとは一心同体!京都へもついていきます」という名鉄百貨店広報・保田めぐみさん。留守をあずかる“ミニナナ=”ミナちゃんは、普段は百貨店内でのPR活動にいそしんでいる

ナナちゃんの留守を守るのは妹のミナちゃん。身長はナナちゃんのおよそ1/6の約1m。11月末までお姉さんのピンチヒッターを務めます。

いつもは見上げていたナナちゃんをこの期間だけは見下ろすことができる、がコンセプト。ツーショットの写真を撮るなど、この機会によりナナちゃんに親しみを感じてもらえたらと思います」(保田さん)

15年前は取材ゼロ。地元メディアのフィーバーに見る人気の高まり

引越し当日には名古屋の民放6局が勢ぞろい。夕方のニュースでの現場からの生中継もあり、前週の“立浪ドラゴンズ・秋季キャンプ開幕”もかくや、といった盛り上がりでした。

「15年前の引越しの際は広報もせず、マスコミの取材もなかったと記憶しています。ここ数年、ナナちゃんへの注目度や市民の皆様の関心が高まったことをあらためて実感しています」と名鉄百貨店関係者。

作業に合わせて地元報道陣が大挙押し寄せた。15年前の引越し・お化粧直しは告知されることもなくひっそりと行われたそう。名古屋でのナナちゃんのニュースバリューの高さを証明するフィーバーだった
作業に合わせて地元報道陣が大挙押し寄せた。15年前の引越し・お化粧直しは告知されることもなくひっそりと行われたそう。名古屋でのナナちゃんのニュースバリューの高さを証明するフィーバーだった

リニア開通を見こし、“みんなのナナちゃん”フォーエバーの気運高める

こうしたメディアの熱気もさることながら、当の名鉄百貨店の熱意が何より印象的でした。「同じ名鉄百貨店の仲間として、これからもずっときれいで、元気でいてもらいたいんです!」という広報・保田さんの言葉は、まさにそんなナナちゃんに対する社内の愛情の深さを物語っています。また、15年前のお化粧直しは周辺の通路などの改修に合わせたものでしたが、今回はナナちゃん単独の企画。その分、路面の養生など作業はよりデリケートになるといい、それをあえて断行したところにも並々ならぬ思い入れを感じます。

実はナナちゃん、近年の人気の高まりの一方で、コアなファンの間ではその去就にも関心が寄せられていました。というのも近い将来のリニア中央新幹線の開通に合わせて名古屋駅の大規模再開発が計画されていて、名鉄百貨店もその対象エリアに含まれるため、ナナちゃんの処遇については不透明な部分もあるのです。

名鉄百貨店のインパクト抜群のナナちゃん演出の数々。セールの安さに驚きあごが伸びて地面も突き破る、何とおじぎをする、鼻息ブシューなどなど。これを見るだけでナナちゃんへの力の注ぎぶりがうかがえる
名鉄百貨店のインパクト抜群のナナちゃん演出の数々。セールの安さに驚きあごが伸びて地面も突き破る、何とおじぎをする、鼻息ブシューなどなど。これを見るだけでナナちゃんへの力の注ぎぶりがうかがえる

リニア中央新幹線の名古屋駅開業は当初予定では2027年。工事の遅れなどもあってこちらもやや先行き不透明ですが、順調に進めば向こう10年前後での開業が見込まれます。それだけにこのタイミングでのナナちゃんの大がかりなメンテナンスは、“この先もずっとナナちゃんを名古屋のシンボルに!”という関係者の決意表明と取ることもできるのです

そう考えると今回の化粧直しは、ナナちゃんのこれからを考える上で、非常に意味の大きなプロジェクトといえます。今や地元の人たちが地域のシンボルとして愛着を持ち、写真を撮ったり送ったりとみんなで楽しむソーシャル・パブリックアートになっているナナちゃん。それを未来へとつなぐ可能性を広げる企画だったともいえるのではないでしょうか。

ナナちゃんが再び名古屋駅に戻ってくるのは2021年11月30日。名鉄百貨店67周年のグランドオープンに合わせた翌12月1日が勤務復帰初日となります。記念の日に合わせた衣装や演出への期待も高まるところ。フォーエバーな美しさを手に入れたナナちゃんに会いに、名古屋へ、名古屋駅へお出かけください。

(写真撮影/すべて筆者)

【追記】

※12月1日のナナちゃん人形お帰りセレモニーの模様はこちら

□ 「お帰りセレモニーに市民が大挙。名古屋のシンボル・ナナちゃん人形の集客効果」

※ナナちゃん愛は名鉄百貨店スタッフにも負けない!と自負する筆者の過去記事もご覧下さい。

□ 「衣替えは最速30分!名古屋のシンボル・ナナちゃん人形の舞台裏」(2020年10月8日)

□ 「名古屋のシンボル『ナナちゃん人形』が45歳に!愛され続ける理由」(2018年4月27日)

名古屋ネタライター

名古屋在住のフリーライター。名古屋メシと中日ドラゴンズをこよなく愛する。最新刊は『間違いだらけの名古屋めし』。2017年発行の『なごやじまん』は、当サイトに寄稿した「なぜ週刊ポスト『名古屋ぎらい』特集は組まれたのか?」をきっかけに書籍化したもの。著書は他に『サンデージャーナルのデータで解析!名古屋・愛知』『名古屋の酒場』『名古屋の喫茶店 完全版』『名古屋めし』『名古屋メン』『名古屋の商店街』『東海の和菓子名店』等がある。コンクリート造型師、浅野祥雲の研究をライフワークとし、“日本唯一の浅野祥雲研究家”を自称。作品の修復活動も主宰する。『コンクリート魂 浅野祥雲大全』はその研究の集大成的1冊。

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