お帰りセレモニーに市民が大挙。名古屋のシンボル・ナナちゃん人形の集客効果
メンテナンスのための引越しが一大イベントに
「引越し、里帰り、そして新衣装の除幕式は名古屋の全テレビ局が取材してくれました。除幕式では一般の見学の方も150人以上は集まってくださり、ナナちゃん人形に対する関心の高さがうかがえました」
こう語るのは名鉄百貨店広報の上村嘉臣さん。開店67周年を迎えて12月1日にリニューアルオープンした名古屋の名鉄百貨店。この話題を大いに盛り上げたのは、店舗前に立つ巨大マネキンのナナちゃん人形(以下「ナナちゃん」)でした。
1973年にデビューしたナナちゃんは時節に合わせて様々な衣装を身にまとい、市民、そして名古屋を訪れる人の目を楽しませてきました。そして先ごろ、百貨店のリスタートに合わせて15年ぶりに本格的なメンテナンスが施されることに。持ち場である名古屋駅を離れ、京都でおよそ3週間をかけてお化粧直しが行われました。
11月9日の移設作業、同30日の設置作業には地元マスコミが大挙。12月1日の除幕式にはさらに多くの市民も加わり、ナナちゃんと名鉄百貨店の周りは大変な熱気に包まれました。(関連記事:「名古屋のシンボル・ナナちゃん人形が消えた!実は深イイその真相」2021年11月10日)
普段からバラエティに富んだ衣装で注目を集めてきたナナちゃんですが、手や足などが取り外され、さらにまた元通りになっていく様子が、事前に告知された上で行われるのは初めてのこと。日ごろのカラフルな衣装よりもさらにレアな姿をこの目で見たいと、多くの人の興味・関心をかき立てたのです。
留守を守った妹・ミナちゃんも人気者に
ナナちゃんが不在の間、ナナちゃんの1/6サイズの妹・ミナちゃんが代理を務めたこともかつてない演出として、たくさんの人出を集めました。「ミナちゃんと記念撮影する人の列がずっと途切れない状態で、途中から列を整理するポールパーテーションを立てたほど。カウントはしていませんが普段以上のお客様が足を運んでくれました」(前出・上村さん)。
それでも「いつも見ていたナナちゃんがいないとさびしい!」という声も多く、不在期間がよりナナちゃんの存在感の大きさを知らしめるという効果も呼び起こしました。
トップも認める町のアイコンとしての存在価値
「ナナちゃんは名鉄百貨店の広報部員であり、名古屋のシンボルであり、当店が地域のお客様に愛着を持っていただいていることが具体的に目に見えるアイコンでもある。他のどこにもないキャラクターを持っていることは名鉄百貨店の強みだと考えています」とは同社の柴田浩社長。
また新衣装のお披露目セレモニーで除幕を担当したのは同社の2人のナナちゃん。「こんな晴れがましい場でナナちゃんをお披露目できてとても光栄です。入社面接の時に人事の方から“ナナちゃんと同じ名前だね”と声をかけていただいたこともあり、ずっと親近感を抱いています」(案内担当の蓑手菜々さん)「きれいになったナナちゃんをお迎えできてうれしいです。お客様から名前を覚えていただきやすく、コミュニケーションにも役立っています」(売場担当の小林菜々さん)と、ナナちゃんへの愛着を揃って口にします。
さらには移設・設置作業とメンテナンスを担当したマネキンメーカーからも、ナナちゃんに対するリスペクトの声が聞かれました。「メンテナンスも、手足を取り外して運ぶのも、基本的な方法は一般のマネキンと同じですが、サイズ感だけが全く違う。例えば高い足場の上で腕を取り外した時の重さもやってみないと分かりません。とにかくナナちゃんに何かあってはいけないと、慎重に作業を進めました」(吉忠マネキン・小野田健さん)「名古屋の町のシンボルなのでやらせてもらえるのは光栄なこと。普通のマネキンとはバランスが違いますし、大きくなるほどきれいに見せるのは難易度が上がるので、毎回いろんな衣装をきれいに着せているのはスゴいことだと思います」(同名古屋営業所所長・関口修一郎さん)
もちろん地元の人からも愛着を持った声が。除幕式当日、豊田市から電車でナナちゃんに会いに来たという60代女性は「シックな衣装で素敵ね。ここにいてくれないと寂しいし、やっぱりこの場所にいるのがしっくり来ますね」とうなずきながらナナちゃんを見上げていました。
企業と住民が手を取り町のシンボルを守るモデルケースに
今回のナナちゃんのお化粧直しは、名鉄百貨店や関係者にとっても、そして地元の人たちにとっても、ナナちゃん人形が地域のシンボルであることをあらためて強く意識する貴重な機会になりました。また、近い将来のリニア開通にともなう名古屋駅の大規模再開発計画で不透明だったその去就にも、明るい展望が開けたことは間違いありません。
メンテナンスのための作業が一大イベントになったという事実は、管理者である企業と住民が一緒になって盛り上げ、町のシンボルを守っていく気運を高めるユニークなモデルケースになったのではないでしょうか。今後も、名古屋市民や観光客の1人1人がナナちゃんに会いに行く、その積み重ねがシンボルとしての存在価値を高めていくことにつながるはずです。
(写真撮影/すべて筆者)