小倉トースト「どえりゃあ盛」がまさかの激バズ! 完食率ほぼ100%の秘密とは?
GW限定で売り出すやたちまち行列が!
ピラミッドのようにそびえ立つあんこの山! その高さ実に15cm!
名古屋喫茶グルメの定番が異常進化したその名も「小倉トーストどえりゃあ盛」。冗談のようなこのメニューがまさかの激バズ! 今年のGWに期間限定で売り出すやネットニュースで取り上げられ、これを目当てのお客で店には行列ができるほどに。その後もしばしば期間限定で販売され、この風変わりなメニューが、名古屋の新たな珍・名物になっています。
開発者インタビュー! 「喫茶マウンテンを越えるなんてトンデモない!」
今回はその調理法を本邦初公開! 同時に開発秘話や、意外や深イイ思いに迫ります。小倉トーストどえりゃあ盛が食べられるのは名古屋市北区の「喫茶はじまり」、そしてメニュー考案者は店長の高野仁美さんです。
――名古屋喫茶の甘いデカ盛りメニューというと「喫茶マウンテン」が思い浮かびます
高野仁美さん(以下「高野」)「いえいえそんな、恐れ多いです!(いきなり焦る) SNSでも『マウンテン越えだ!』と投稿してくれた方がいらっしゃったんですが、めっそうもない。越えたくないです・・・!!」
――マウンテンの名物として全国に知られる甘口抹茶小倉スパの向こうを張ったワケではない?
高野「うちみたいなオープン1年目の店があの有名店に対抗しよう、だなんて考えてもいません。もともとこのメニュー、私は半分乗り気じゃなかったんです」
――マウンテンみたいにはなりたくない、と?
高野「そういうワケではなくて・・・!(また焦る) 喫茶店として日常の場でありたいと思っているので、奇抜な方向に行くつもりはなかったんです。でも、GWで名古屋に帰省される人、遊びに来る人に、ここへ来る目的にしてもらえるものを提供したいと思い、『どえりゃあ盛』という名前を思いついたんです」
あんこは一般的な小倉トーストのおよそ6倍!
――その時点で既にウケ狙いに走っている気も・・・?
高野「名前ありきで、じゃあどれくらい盛ったら『どえりゃあ』と思ってもらえるかと考え、あんこ100gの並盛、200gの山盛、300gのどえりゃあ盛とあんこの量が先に決まりました。一般的な小倉トーストはあんこ50gくらいなのでおよそ6倍になります」
――パンの上に収まり切らない量とはいえ、流行りのこぼれいくら丼のようにはしたくなかった?
高野「パンとあんこのハーモニーを楽しむのが小倉トーストなので、そのイメージはなかったです。小倉トーストは粒あんを使う店が多いんですが、それだとそんなにたくさん食べられないのでなめらかなこしあんをメインに。また、一見あんこの固まりに見えますがそうではなく、飽きさせないために味変できるようフルーツなどの具材も盛り込むことにしました」
あんこの山の秘密は牛乳パックをカットした自作の型
――ピラミッドのような形になったのは?
高野「開発段階では、パフェみたいにフルーツが顔を出しているかわいい盛りつけも考えたんですが、スタッフに『中途半端にかわいいよりも全部茶色い“ちょいダサ”の方がうちらしいです!』といわれて、具材は全部あんこの中に閉じ込めることにしました。メニュー名通り『どえりゃあ』と思ってもらうには高さ15cmは必要だと思って、グラスやカップで試したり、ケーキ用などの型をさがしたんですが、既製品でそんなに大きいのはないんですよ。だったら自作するしかない、と段ボールを切って内側にアルミホイルを貼ったりしてみたんですがどうもうまくいかない。そんな時に牛乳パックの四角い底とうちの食パンがほぼ同じサイズだと気づいて、これをカットしたらうまく行きました」
あんこの山の中に文字通り隠し味が!
――他に試作段階で難しかったことは?
高野「あんこに詰める具の順番はいろいろ考えました。クリームチーズの塩味、白玉のもっちり感、フルーツの酸味、アイスクリームのひんやり感。味や食感で変化をつけられるよう、この順番になりました」
――単なるバカ盛りかと思いきや考えられているんですね
高野「そうなんです! 映えてバズればいい、というわけではなくてちゃんと全部食べてもらいたいですから」
予想外のヒットで腱鞘炎に・・・!?
――バズるのが目的ではなかったとのことですが、ネットニュースに取り上げられてバズりましたね
高野「その影響もあってか、GWの9日間で100食以上、第2弾のお盆休みには8日間で130食以上、一日最大20食が出て、開店前から行列ができる日もありました。あんこの盛りつけ過ぎで腱鞘炎になりかけました(涙)」
――こんなにウケると想像していましたか?
高野「少しは話題になって店の名前だけでもおぼえてもらえればと思っていましたけど、こんなにあんこを食べる人がいっぱいいるとは・・・(笑)」
スイーツ好きの女性じゃない!? 意外な客層
――お客さんの傾向と完食率は?
高野「シェアして食べていただく想定だったんですが、圧倒的におひとり様、しかも30~40代の男性が多いです。甘党の男性にとっては、おしゃれなカフェでパフェよりも、うちはちょいダサで入りやすいんだと思います。私自身はオシャレな店を目指しているんですが・・・(涙)。完食率はほぼ100%。残された方はGWとお盆でおひとりずつだけです」
――最近は写真をSNSにアップするのが目的で食べるのは二の次、というお客さんも多いとも聞きますが、食べ残しがほとんどないのはいいことですね
高野「1800円という価格もちゃんと食べてもらいたいからの値付けなんです。決して安くはないので、食べなきゃもったいないと思ってもらえますから」
――他にも予想外の効果などはありましたか?
高野「行列ができたことで、商店街の皆さんが心配して『何か手伝おうか?』と声をかけてくれたり、お店が盛り上がることで地域の人も喜んでくれたのはうれしかったです。お客さんとのコミュニケーションのきっかけにもなるし、どえりゃあ盛を食べに来て以来常連になってくれた人、あんこを気に入ってうちが仕入れているあんこ屋さんに買いに行ってくれた人もいらっしゃいました。でも一番驚いたのは、食べ終わった後で『もう一個くらい食べられそう』というお客さんがいたことでした(笑)」
11月の週末に第3弾の限定販売が!
――どえりゃあ盛は連休期間など向けの期間限定メニューですが、近々3度目の販売が始まるとか
高野「11月22~24日の3日間、販売します。麗麗-reirei-さんという名古屋で1番名古屋を推すV系バンドの名古屋公演が23日にあり、ライブを観に名古屋に来てくれるファンの人に食べてもらいたいと思って再発することにしました」
――今後も連休などに期間限定販売していく予定でしょうか?
高野「はい。次はX’masに販売したいと思っています。せっかくなのでX’masツリーバージョンにしたいんですが、緑色の抹茶あんだと実は甘みが強いので300gも食べ切れなさそう。オーナメント風のクッキーなどのトッピングも考えたんですが盛りつけに時間がかかると中のアイスクリームがとけちゃうし、アイスがないと味の変化が減って食べ切りにくくなってしまう。どうすればツリーらしさ、食べ切れるおいしさを両立できるか悩み中。意外とちゃんと考えてつくってるんです!」
「どえりゃあ」に秘められた小倉トースト&喫茶店愛
高野さんは小倉トースト普及委員会委員長という肩書きももつ、あんこ&小倉トーストをこよなく愛する人物。それだけにこのどえりゃあ盛も、見た目のインパクトだけでは決してなく、あんことパンのハーモニーで最後までおいしく食べられることを考え抜いた上でつくっているのです。筆者も実食しましたが、あんこの甘みが上品であっさりしているため、途中でくどくなったりはせず、後半おなかがふくれてちょっと苦しくなりながらも、残さずきっちり食べ切れました(しばらくあんこはいらない、という気持ちにはなりましたが)。
販売期間中は予約も可。今後も冬休み、春休みなど長期休暇期間のたびに発売されることになるはず。甘党の人、名古屋喫茶に興味のある人は、どえりゃあ一品を目当てに名古屋に来て下さい!
(写真撮影/すべて筆者 ※小倉トーストのポップは喫茶はじまり提供)