中国が月の裏側からのサンプルリターンに世界初の成功、嫦娥6号と中国の将来月面開発計画を解説
■中国が世界で初めて、月の裏側のサンプルリターンに成功
6月25日、中国が打ち上げた月探査機「嫦娥6号」が、月の裏側、南極付近のアポロクレーターからサンプルを採取し、地球へ帰還することに成功しました。サンプルを搭載した再突入カプセルは内モンゴル自治区へ着陸しました。アポロ計画などでも月の裏側の採取は行っておらず、今回の成果は世界で初めての快挙となります。今後の分析により、月の裏側の組成がどのようになっているのか、その結果が注目されます。
NASAを中心として進められている「アルテミス計画」も南極を有人基地候補としています。きっと、中国も月の南極を基地にする狙いがあるのかもしれませんね。
続く2026年に嫦娥7号、2027年に嫦娥8号では、月のレゴリスの分析をはじめ、月での陸上生態系の実験が予定されているとのこと。一体何をしようとしているのか、今から楽しみです。更に、2030年には中国初の有人月面着陸が予定されています。そして、2035年には月面基地を建設することが構想されているようです。
中国の月面探査「嫦娥計画」日本を凌駕するその開発スピードとは
■嫦娥6号の打ち上げから地球帰還までの軌跡をおさらい
嫦娥6号は5月3日に長征5号ロケットで打ち上げられ、5月8日に月周回軌道へ投入されました。嫦娥6号は、軌道船と帰還船、着陸船と離陸船の4つから構成されています。軌道船と帰還船は月周回軌道上で待機し、着陸船と離陸船が月面に着陸します。そして、6月2日7時23分(日本時間)に月の着陸に成功した嫦娥6号からの画像 出典:CNSA裏側に位置する南極のアポロ・クレーターへの着陸に成功しました。
嫦娥6号の着陸船は、ドリルで土を掘る方式と、ロボットアームで砂をかき取る二つの方式で、月の土壌を収集します。サンプル収集装置以外にも、中国に限らず、イタリアの再帰反射器や、ESAとスウェーデンが開発した月面負イオン検出器、フランスのラドン検出器など様々な国のペイロードが搭載されています。
その後、離陸船が月面のサンプルをもって離陸を開始。離陸船は6月8日、軌道上で待機している地球往還機とのドッキングに成功しました。そして、本日6月25日の地球帰還に至りました。
■中国が推進する月探査計画「嫦娥」とは
嫦娥計画とは、中国が国家プロジェクトとして推進する月探査計画です。今までで5機の人工衛星を月に送っており、最初は2007年の嫦娥1号に始まり、以下のように全てのミッションに成功しています。
・嫦娥1号(2007年):月周回軌道への投入に成功
・嫦娥2号(2010年):月周回軌道への投入、小惑星トータティスに到達
・嫦娥3号(2013年):中国初の月面着陸に成功
・嫦娥4号(2019年):世界で初めて月の裏側へ着陸成功
・嫦娥5号(2020年):月からのサンプルリターンに成功
「嫦娥」という名前の由来も解説しておきます。嫦娥とは、中国の古い物語に出てくる女性の名前です。弓の名手「后羿」はある日、飲むと仙人になれるといわれる"仙薬"を崑崙山の伝説の女神から譲り受けます。しかし、后羿は妻の嫦娥を一人残して仙人になるわけにはいかないと、その薬を保管しておくように嫦娥に命じました。しかし、ある時その薬を他人に奪われそうになり、嫦娥はそれを慌てて飲んでしまったのです。その結果、嫦娥は天に舞い上がってしまいました。しかし、后羿のことも気がかりだった嫦娥は、地球に一番近い月に住むことにしたのです。
ちなみに、嫦娥は天に舞い上がった時に一匹のウサギを抱えていました。この子の名前は「玉兎」と言って、いつも嫦娥のそばで木槌をつつき、不老不死の薬を作っています。この玉兎は嫦娥計画の月探査ローバーとしても活躍しています。
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