中国が描く月探査計画と、44年ぶりに月からのサンプルリターンに成功した「嫦娥5号」
2024年1月20日、JAXA月着陸機「SLIM」は日本で初となる月面着陸に成功しました。世界では、アメリカ、ソ連、中国、インドに続き、5か国目に月着陸を成功させた国となったのです。
本日は、中国の月探査シリーズ後編に入っていきたいと思います。44年ぶりに月からのサンプルリターンに成功した中国、果たしてどのようなミッションだったのでしょうか。
前編:中国の月面探査「嫦娥計画」日本を凌駕するその開発スピードとは
中編:月の裏側への世界初の着陸成功!中国の月着陸機「嫦娥4号」
■中国が月探査を進める真の目的
まず、中国が月面探査を進める最終的な目的は、ヘリウム3という物質の採取という一説もあります。このヘリウム3というのは太陽風に乗って月面に吹き付けられ、そのうちの100万tonが月の表面に存在していると言われています。昔のアポロ計画で持ち帰った土からもこれが示されているます。一方で、残念ながら地球にはほとんど存在していない物質です。もし全てのヘリウム3を地球に持ち帰ることができ核融合発電ができれば、なんと人類全体の約1万年分のエネルギーを得られると考えられています。
■月からのサンプルリターンに成功した「嫦娥5号」
嫦娥計画の5番目となる「嫦娥5号」の目的は、月の砂を地球に持ち帰るサンプルリターンミッションです。2020年11月24日、嫦娥5号は長征5号ロケットで打ち上げられました。嫦娥5号は、軌道船と帰還船、離陸船と着陸船の4つから構成されており、ドリルで土を掘る方式と、ロボットアームで砂をかき取る二つの方式で、月の土壌を収集します。
11月30日に着陸船と離陸船のモジュールが分離され、12月1日に無事月面への着陸に成功!採取地点は、嵐の大洋にあるリュムケル山付近の台地で、月の表側に位置しています。これまでアメリカやロシアが回収した月の石よりも比較的新しい年代にできた場所である可能性から、科学的意義が期待されています。そして、2日後には離陸船が月面のサンプルをもって離陸を開始します。その後、離陸船は月を周回している軌道船とドッキングし、地球への帰還を始めました。
12月17日、カプセルは無事大気圏に再突入し、モンゴル地区に落下したところを回収されました。後の分析から、月の土壌を約500gを掘り起こしたほか、表面の砂を約1.5kg採取することに成功したことが確認されています。このサンプルにより、月の成因と変化の歴史に対する研究が深まることが期待されています。そして、この成功は人類の44年ぶりの月からのサンプルリターンでもあります。これにより中国は世界で3番目に月からサンプルリターンした国となりました。
ちなみに、嫦娥5号のミッションはちょうどはやぶさ2のサンプルリターン時期と重なってしまったため、しばしばメディアでは両機を比較する報道も見られました。しかし、月と小惑星では難易度の方向性が全然違うため、一概には比較をすることはできませんが、どちらも快挙であったと思います。
■続々と打ち上げが決定している「嫦娥計画」
一連の成功に続き、嫦娥6号が2024年に打ち上げ予定となっています。嫦娥6号は、月の南極付近のアポロクレーターに着陸し、2kgの試料採取・地球への帰還が計画されているとのことです。きっと中国も月の南極を基地にする狙いなのかもしれませんね。
続く2026年に嫦娥7号、2027年に嫦娥8号では、月のレゴリスの分析をはじめ、月での陸上生態系の実験が予定されているとのこと。一体何をしようとしているのか、今から楽しみです。
日本もSLIMの成功に続き、ぜひ月探査に積極的に取り組んで欲しいと思います!
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