中国の月面探査「嫦娥計画」日本を凌駕するその開発スピードとは(中国月探査シリーズ前編)
1月20日、JAXAの月探査機「SLIM」が月面着陸に成功しました!これは日本で初めての快挙であり、アメリカ、ソ連、中国、インドに続く世界で5か国目に月着陸に成功した国となりました。
一方で、2000年代からは中国も驚くべきスピードで月探査を加速させています。本記事では、中国の「嫦娥計画」を詳しく解説していきたいと思います。
JAXAの月着陸機「SLIM」を詳しく知りたい方はこちらの記事で
■嫦娥計画とは?
嫦娥計画は中国が国家プロジェクトとして推進する月探査計画です。今までで5機の人工衛星を月に送っており、最初は2007年の嫦娥1号に始まり、2020年には嫦娥5号により月からのサンプルリターンにも成功しています。
■中国初の月探査機「嫦娥1号」
まずは、2007年に打ち上げられた中国初の月探査機「嫦娥1号」です。この探査機は4つの目的があり、地球から月までの宇宙空間環境の調査、月画像の撮影、月の土壌の特性観測、そして物質成分の分析を行います。探査機の重量は2350kg、大きさは約2m四方です。太陽電池パネルを開くと全長18メートルにも達します。
そして、嫦娥1号は長征3Aロケットにより打ち上げられました。嫦娥1号は特殊な試みとして、全国人民投票活動から決められた歌曲を30局ほど搭載しています。そして、宇宙から地上に送信する実験も行われました。
それでは嫦娥1号の成果についてです。嫦娥1号は順調に月周回軌道への投入に成功します。クレーターの密度や分布、月の進化における調査、存在する元素の分布調査、など目的の観測を達成しました。更に、月到達まで順調に進めたため、1年分の燃料を節約できる程の成功ぶりでした。そして、2009年3月1日、嫦娥1号は役目を終え、月面の豊の海に落下しました。
■月着陸地点の選定を担う「嫦娥2号」
嫦娥1号の成功を受けて、中国は嫦娥2号の開発を進めます。嫦娥2号の目的は解像度10メートルの高性能カメラと3Dカメラを搭載し、月の高度100kmで観測を行うことです。この観測により、次に登場する嫦娥3号の着陸地点の選定を行うことも目的の一つです。ちなみに、探査機は嫦娥1号とほぼ同じ設計となっています。
嫦娥1号のミッション終了からわずか1年後の2010年、嫦娥2号は長征3Cロケットで打ち上げられました。無事、月の周回軌道に成功し、なんと高度18.7kmまで接近して虹の入り江地域を撮影しました。
今回も順調にミッションは進んだため、太陽と地球の重力が釣り合うL2点(ラグランジュ点)という場所を目指して宇宙空間の探査も実施しています。2011年、無事にL2点に到達した嫦娥2号は次の目的地を小惑星トータティスに設定し、L2を出発しました。2012年に嫦娥2号はトータティスに接近し、約100km付近の距離から解像度高い写真を地球に送信し、ミッションは大成功を収めました。
■遂に月面着陸へ「嫦娥3号」
続いて中国は、遂に月面着陸機の嫦娥3号の開発を始めます。ちなみに、月への着陸は1976年にソ連により行われたルナ24号のミッション以来、なんと37年ぶりとなります。
2013年、嫦娥3号は長征3号Bロケットにより打ち上げられます。そして、打ち上げから12日後には無事に月面への着陸に成功。この成功により、中国はアメリカ、ソ連に続いて月面着陸を成功させた3か国目になったのです。そして、この嫦娥3号は月の冷たい夜でも活動できるように、エネルギーはプルトニウムの崩壊熱を利用しています。
そして、月面探査ローバーの「玉兎」について説明します。玉兎は重さ約120kg、大きさは長さ1.5m、幅1m程度で、6つの車輪を持っている探査ローバーです。底につけられたレーダーによって月の内部を観測しながら進んでいきます。ただこの玉兎、太陽電池での発電をエネルギー源にしているため、夜は眠っています。そして、玉兎の発車から約1か月後、モーターが壊れてしまい走行不能になってしまいました、恐らく砂が入り込んでしまったと推定されていますが残念ですね。
その後、玉兎が走行した一体を「広寒宮」と命名することが発表されました。ちなみに、その付近の3つのクレータも「紫微」、「天市」、「太微」と命名されています。玉兎は動けなくなった後も引き続き通信を行い、寿命であった9か月を大きく超えて、19か月で稼働が停止しました。
前編では、2007年の月周回探査機投入から、2013年の月着陸成功へと凄まじいスピードで開発を進めた中国を紹介しました。中編では世界で初めて月の裏側に成功した嫦娥4号、後編では月からのサンプルリターンに成功した最近の嫦娥5号を解説させて頂きます。
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