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結婚には年収条件が突きつけられるが「年収で恋愛できるかどうかは決まるのか?」東京と地方との差

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:アフロ)

恋愛は年収で決まる?

恋愛相手がいる割合というのは3割である。

いつの時代でも、どこの地域でも、何の集団であっても、性別も関係なく大体その程度である。これを私は以前より「恋愛強者3割の法則」と言っているが、厳密にいえば、恋愛強者3割、中間層4割、恋愛弱者3割と3:4:3に分かれる。

仮に、今まで一度の恋愛経験もない層を恋愛弱者とするならば、20代男性の未恋率が男性で27.3%程度であることからも整合性がある(参照→生まれてから一度も恋愛相手がいたことのない「生涯未恋率」は男女それぞれ何%か?)。

もちろん、恋愛経験があっても恋愛弱者に含まれる者もいるが、少なくとも20-50代の未婚男性を対象とした場合、恋人の有無率で分ければ大体「現在恋人あり3割、今はいないが過去に恋愛経験あり4割、恋愛経験なし3割」と3:4:3に分かれる。

さて、この男性の場合の「恋人の有無」はその稼ぎによって影響されるだろうか。

婚活の現場では「一定以上の年収がないと結婚できない」という話がよく出る。結婚相談所でも入会する場合に、男性は年収の最低ラインが設定されているとも聞く。

「結婚は金次第」は現実

結婚は経済生活であり、ある程度男性の経済力が求められるのは当然だろう。これは是非の問題ではなく現実である。

事実、30代において未婚男性と既婚子無し男性、既婚子有り男性の年収を比べれば、既婚の子無しと子有りに年収の違いはないが、未既婚で大きな差がある

前回の記事でも、年収の男女格差より男の場合だけ未既婚格差があるという話もしている(参照→「金がないから結婚できない」の先にある「結婚したらもっと稼がないとならない」事情【未既婚所得格差】)。

しかし、結婚はともかくとして、「恋愛の場合でも「男の年収」は関係するのだろうか?」が今回のテーマである。

恋人の有無別年収の差

2018年の全都道府県の20-50代未婚男性を対象とした私の調査から、「現在恋人あり・過去に恋愛経験あるが現在はいない・一度も恋愛経験なし」の3つに分類し、それぞれの年収分布を比較してみる。

2018年のデータとしたのは、2020年以降のコロナ禍中のデータだと、コロナによる影響が少なからずあると判断したためである。尚、都道府県別にグラフ化すると見づらくなるため、東京と東京以外とで分けた。

まずは、東京以外の地方の合計である。

(C)ソロ経済・文化研究所 荒川和久
(C)ソロ経済・文化研究所 荒川和久

ご覧の通り、東京以外の地域合計では、現在恋人のいる男性も過去恋愛経験ありの男性も一度も恋愛経験のない男性も、3者とも、多少の差はあれどほぼ年収分布に差はない。結婚とは違って、恋愛においては「男の年収は関係ない」と言えるのかもしれない。東京以外では。

では、東京はどうだろう?

(C)ソロ経済・文化研究所 荒川和久
(C)ソロ経済・文化研究所 荒川和久

明らかに、東京以外の分布とは異なっている。

現在恋人がいる層の最頻値は500万円台、過去にいた層のそれは300万円台だが、600万円以上の割合はむしろ恋人がいる層より多い。しかし、この2者はほとんど同じ程度と見ていいだろう。だが、恋愛経験なしの層だけが、年収最頻値200万円台となって、他の2者より極端に低い。

東京以外の地方と見比べると、東京においてだけは「恋愛にも金が必要」ということになる。

そもそもこの年収低すぎる

気を付けたいのは、これだけで「金がない男はモテない」というわけではない。そもそも恋愛そのものに興味のない層も一定数いる。ここには20-24歳というまだ学生か働き始めたばかりの層も多く含まれる。

しかし、東京在住で300万未満の年収しかないとすれば、それは生活するだけでも精一杯だと思われ、とても恋愛どころではないという話もある。もしかしたら、病気などで働けない環境にある者もいるかもしれない。

ところで、東京で働いていて年収300万未満なんて存在するのか?と思うだろうか。が、2022年の就業構造基本調査によれば、20-50代未婚男性全体で年収300万円未満は20%程度存在する。決して少ないわけではない。

若者の東京一極集中といわれており、それは間違いではないのだが、若者が東京に来る理由は「地方にいるよりずっと高い魅力的な給料が得られるから」のはずなのに、300万に満たない層が2割も存在していることが現実なのである。

提供:イメージマート

記事を書いていて切なくなるのは、年収300万円かどうかということに分岐点があること自体が、30年前から全く年収があがっていない証拠であり、それどころか税金や社保料は30年前より大幅に増えており、手取りは間違いなく減っている。最近の物価高も勘案すれば、生活は30年前より苦しいだろう。とても健全な経済ではない。

「貧すれば鈍する」といわれるように、これから結婚するであろう若者の所得(手取り)を増やしていくことがまず第一優先であり、それなしには若者の恋愛も生まれないし、デートすら誘えない。

「若者の恋愛離れ」などの価値観の問題ではないのだ。

恋愛が生まれなければ結婚も子どもも生まれない。

但し、最後にひとつだけ。東京で1000万円以上稼いでいる未婚男性だけで見ても、恋愛経験なしは一定数存在しているのである。年収だけじゃないことも確かだ。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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