「英次世代戦闘機テンペストは年平均2万人の雇用を生む」開発企業チームがアピール
イギリスの次世代戦闘機「テンペスト」の開発を担当する企業グループの「チーム・テンペスト」は10月15日、この開発計画全体が年平均2万人の雇用を生み、253億ポンド(約3兆4000億円)相当の経済効果をもたらすとの見通しを示した。
イギリスは現行の主力戦闘機「ユーロファイター・タイフーン」の後継として、テンペストの2035年までの実戦配備を目指している。航空自衛隊のF2戦闘機の後継となる次期戦闘機と同じスケジュールでもあり、日英の連携が視野に入っている。このため、テンペスト開発計画の動向は、日本にとっても目が離せないものとなっている。
チーム・テンペストを主導するイギリスの防衛大手BAEシステムズは同日、「2026年から2050年にかけて、年平均2万人の雇用を確保し、同時期に少なくとも253億ポンドの経済効果をイギリスにもたらすだろう」と述べた。
●「若者中心の高度な技術を要する仕事に投資」
「この計画は主要な軍事的要求を満たすとともに、計画存続中はイギリスに多大な貢献をもたらすことが期待されている。主権を守る能力を確保するほか、特に若者を中心に高度な技術を要する仕事に投資することになる。また、技術やインフラを発展させ、イギリス全体の経済と長期的な繁栄を支援することになるだろう」
BAEシステムズは、さらに現在、テンペスト計画をめぐっては、イギリス防衛産業とイギリス国防省で1800人が雇用されているが、来年には2500人に増えるとの見通しを示した。
今回の見通しは、イギリスのコンサルティング世界大手、プライスウォーターハウスクーパースが今後何十年にもわたるテンペスト開発計画の予備調査結果としてまとめたものに基づく。同社は2050年までの期間を想定し、当初予測を示した。ただし、今回は海外輸出の可能性については考慮に入れなかったという。
●チーム・テンペストとは
テンペストは、無人機(UAV)群との連携計画を含むイギリスの「将来航空戦闘システム(FCAS)」の中核をなす。その開発を担うチーム・テンペストは、イギリス空軍(RAF)の緊急能力局(RCO)のほか、BAEシステムズ(航空システム担当)、ロールス・ロイス(エンジン)、MBDA(ミサイル)、イタリアのレオナルド(センサーと通信ネットワーク)で組織されている。イギリスのセキュアクラウド+(ICTシステム)もじきに加わる予定だ。
テンペストはイギリス政府が進める「FCAS技術イニシアティブ(FCAS TI)」の中核にはなっているものの、より広範囲ないわゆるシステム・オブ・システムズ(SoS)の一部にすぎない。SoSには現在と将来の航空アセットと技術が含まれており、有人機となるテンペストの能力を補完するため、UAVの利用も検討されている。
●国防費削減の格好の標的になる可能性も
イギリスの国家財政は、同国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)とコロナ禍の二重苦の影響でぐっと悪化しており、国防費削減に向けた圧力が高まっている。テンペスト計画はまだ緒に就いたばかりで、今後国防費削減の格好の標的になる可能性がある。
イギリスのタイムズ紙は8月、同国海軍のクイーン・エリザベス級空母に搭載する予定の最新鋭ステルス戦闘機F35Bの調達数が、当初の138機から70機にほぼ半減されると報じた。ボーイングのE-7Aウエッジテール早期警戒管制(AEW&C)機も当初の調達予定の5機から3機に減らされると伝えられた。
●日本の次期戦闘機をめぐる日英の連携
日本の次期戦闘機開発をめぐっては、防衛省はアメリカ軍とのインターオペラビリティ(相互運用性)の重要性を強調する一方、イギリスとの国際協力を探っている。英国のパートナー企業としては、BAEシステムズなど数社の名前が挙がっている。
なお、防衛省はF2後継機を国産にし、かりに4兆円が投入された場合、8兆3000億円の経済波及効果と24万人の雇用創出効果があると見込んでいる。
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