絶対に食べておかねばならない 東京の醤油ラーメン「必食」3軒
東京のご当地ラーメンは「醤油ラーメン」だ
東京は日本はもちろん世界で最も最先端のラーメンが集まる街だ。戦前から愛される老舗のラーメンから、全国各地のご当地ラーメン、さらには最先端のラーメンまで、あらゆるラーメンが揃っている東京だが、数多くのラーメンが集まる場所であるがゆえに、東京のご当地ラーメンとも言うべき、昔ながらの「醤油ラーメン」が埋もれてしまっていた。
しかし最近になって「ネオノスタルジック」とも言うべき、どこか懐かしさを感じさせるような「醤油ラーメン」を出す新店が増えてきた。煮干しが香る醤油味の透明なスープに縮れ麺。海苔やナルトが乗ったそのビジュアルは、誰もが想像するラーメンの姿形であると同時に、一周回って今の人たちには新鮮に映っている。
東京のご当地ラーメンは醤油ラーメンである。長年愛され続けている老舗のラーメンの中には、今食べても全く古さを感じさせない存在感のあるラーメンも数多い。そんな東京の醤油ラーメンを食べる上で、絶対に欠かすことが出来ない「必食店」とも呼べる3軒の老舗をご紹介しよう。
郷愁感あふれる佇まいと味『福壽』(1951年創業)
京王線笹塚駅北口を出てから続く商店街を歩くこと7分ほど。商店街が終わり住宅街へと景色が変わるそのしんがりに、昭和で時が止まったかのような佇まいの店が現れる。この店が、創業1951(昭和26)年の老舗『中華そば 福壽(ふくじゅ)』(東京都渋谷区笹塚3-19-1)だ。
先代の創業者は戦前新宿で日本蕎麦店を開業し「日本一の蕎麦處」と喧伝して人気を博した。戦後になって笹塚に移転する時、すでに商店街には何軒も日本蕎麦店があったことと、中華そばが当時人気を博していたこともあってラーメン店へと業態を変えた。今は二代目店主の小林克也さんが釜の前に立ち、味と暖簾を守り続けている。
動物系の旨味あふれるスープにしっかりと味を主張する日本蕎麦由来の醤油ダレ。麺は昔ながらの縮れた細麺が合わせられる。人気の「五目ラーメン」は玉子や椎茸、かまぼこなどの具が乗る。油分こそ浮かないが、見た目よりも遥かにパンチの効いた味わいは、今のラーメンと食べ比べても負けず劣らずの存在感。ノスタルジックな雰囲気もまた味の一つだ。
学生街で長年愛される店『メルシー』(1958年創業)
学生街、早稲田の老舗『メルシー』(東京都新宿区馬場下町63)は、1958(昭和33)年に早稲田大学南門付近で創業し、1970(昭和45)年に現在の場所へと移転した。古くから早大生たちの「食堂」として愛され続けている店だ。珍しい店名は「感謝」の気持ちを店名につけたいという創業者に、当時の学生客が提案したもの。
先代の創業者は以前喫茶店を営んでおり、今もメニューには「オムライス」や「ポークライス」「ドライカレー」など、ラーメン店には似つかわしくないものも残っているが、一番人気はやはり「ラーメン」。「いつまでも旨くて安い店であり続けたい」と語る、二代目店主の小林一浩さん。今でも一杯500円とワンコインで味わうことが出来る。
優しくも旨味あふれる味わいのスープは、豚骨にモミジ(鶏の足)、キャベツやニンジンの野菜に北海道産昆布がベース。さらに別の寸胴で煮出した煮干しスープをブレンドする、いわゆる「Wスープ」の製法によって厚い旨味が生まれる。レシピは先代から一切変えず、今日もメルシーは早大生や地元客を感謝の気持ちで出迎える。
店名は変われど味は変わらず『みたか』(2010年創業)
三鷹の雑居ビルの地下にある『中華そば みたか』(東京都三鷹市下連雀3-27-9 ニューエミネンスB1)は、2010年と比較的新しい創業ながらも、その佇まいや味わいには歴史と風格が感じられる店。それもそのはず、戦後の固定屋台として1949(昭和24)年に創業し、長年この地で愛されてきた『中華そば 江ぐち』(閉店)の店舗と味を受け継ぐ店なのだ。
店主の橋本重光さんは、三鷹生まれの三鷹育ち。幼い頃から『江ぐち』の味に慣れ親しんできた。その後『江ぐち』で働くようになり、店主の逝去により閉店するまで厨房に立っていた。閉店を惜しむ多くの常連客に背中を押される形で、店舗と味をそのまま受け継いだ『みたか』を創業した。
「学生たちが気軽に食べられるものがラーメン」と語る店主の橋本さん。ラーメンは一杯550円の安さだ。豚骨、鶏ガラ、野菜、煮干しを弱火でじっくりと炊いた優しい味わいのスープは『江ぐち』時代のレシピのまま。武蔵野うどんでも使われる地粉を使った、独特な色合いの自家製麺も変わることはない。戦後から愛されている味と思いは、今もしっかりと変わらず受け継がれている。
今回ご紹介した3軒は、いずれも東京の醤油ラーメンを語る上で欠かせない名店ばかり。流行のラーメンを追いかけるだけではなく、ぜひ長年愛され続けている味も食べてみて欲しい。ラーメンの食べ歩きがさらに楽しくなることだろう。
※写真は筆者によるものです。
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