今年は6月から週休3日に。夏のトライアルを続けるサタケの意図は?
日本マイクロソフトは今週、今年 8 月の金曜日を全て休業日とする「週勤4日&週休3日制トライアル」の実施を発表しました(参考:同社のプレスリリース)
先日「週4日勤務の導入企業が示す、トップ主導の働き方改革のポイント」でも述べた通り、いま「週4日勤務・週休3日」という働き方が世界的にも注目を集めつつあります。
実は日本でも、将来の完全週休3日制実現を目標に、いち早くトライアルを繰り返している会社があります。それは、精米機のトップメーカーで広島県東広島市に本社のあるサタケです。
同社は2017年、2018年の夏季に5週間かけて週休3日制を試行しており、今年も6月の後半から8月の前半にかけて実施予定です。
サタケの執行役員で広報部長の宗貞 毅さんに、取り組みの詳細や、「なぜ週休3日を目指すのか」について伺いました。
1年目は月曜日、2年目は金曜日、今年は水曜日を休みに
サタケの週休3日試験導入は同社とグループ会社2社の約1200名が対象で、スケジュールは以下の通り。
■2017年
7月9日(日)〜8月12日の5週間、毎週月曜日を一斉休日とした。
■2018年
7月1日(日)〜7月7日(土)、7月22日(日)〜8月11日の4週につき、毎週金曜日を一斉休日とした(月曜日に「海の日」がある7月15日の週も合わせて5週間の週休3日が実現)。
■2019年
6月23日(日)〜7月13日(土)、7月21日〜8月10日(土)の6週につき、毎週水曜日に社員の半数が交替で休む予定(月曜日に「海の日」がある7月14日の週も合わせ、各社員につき4週の週休3日になる)。
毎年休む曜日を変え、今年は全員一斉ではなく交替制にしたのはなぜか? 理由のひとつは、毎回のトライアルごとに、社員の意見を聞いて調整しているからです。
月曜日を休みにした初年度は、営業部門から「顧客からの連絡や問合わせの多い月曜日は外して欲しい」という要望が上がりました。そこで、2年目は金曜日を休みとし、顧客に対する通知も早めにするようにしました。その結果、営業部門からは、「月曜日よりは良いが、全員で休むのはお客さんへの影響が大きい」という反応が。3年目は全社員をA班とB班に分けて交替で休むことで、会社としては週5日営業している状態を維持することにしたのです。
また、今年は週末とつなげて3連休にするのではなく週の半ばの水曜日を休みにしました。これには、将来の完全週休3日制の実施に向けて、いろいろなパターンをテストしようという意図があるのだそうです。
5日分の仕事を4日でできる? 社員の反応は?
過去2回のトライアルは社員にも概ね好評で、普段より増えた休日には、家族と過ごしたり、旅行に行ったり、カープ戦を観に行ったり(広島なので)と、各自自由に楽しんだそうです。
しかし、「今年の夏は週休3日」と突然言われたら、最初は社員の方たちもびっくりしたのでは……。忙しい職場だと「できるわけない」みたいな反応もありそうです。
「うちは以前から、社員の働きやすさを向上させる取り組みに積極的なんですよ。例えば2004年に社内保育室を開設し、2005年には男性の育児休職制度も開始しました。今では孫が生まれるときに家事・育児を支援するための特別有休が取れる『イクじい・イクばあ休暇制度』なんていうものもあります。実は私がイクじい休暇取得者第一号なんですけどね。
だいたい初動が早くて、『まずやってみて、問題があったら改善しよう』という社風です。だから、社員も『週休3日』と言われてもそんなに驚かず、『また新しいことをやっとるな』という感じですね」(宗貞さん)
社員が前向きに受け入れたとしても、普段は週5日でやっている仕事を4日で終わらせることができるのでしょうか。
宗貞さんは、「仕事の無駄を省けばできますよ」と断言します。
「10年ほど前、400人くらいの社員を対象に仕事量やその方法を調査したことがあります。そうすると、1日のうちの3割くらいは無駄な仕事をやっているということが分かったんですよ。無駄というのは、本来はやらなくて良い仕事だったり、社内の会議なのに過度に立派な資料を作っていたり、といったこと。そういう無駄を減らせば、仕事の時間は短くできるはずです」(宗貞さん)
とはいえ、展示会対応や顧客との打合せ、プラントの建設現場作業などで期間中にどうしても週休3日を実現できなかった社員も2割ほどいました。今年は交替制で休みを取ることで、課題を解消しようとしているわけです。
完全週休3日を目指す理由と実現のポイント
サタケは、将来的には通年で完全週休3日を実現することを目標にしています。その目的は、「社員とその家族を幸せにする」ということ。同社は「会社を取り巻くすべての人を幸せにする」というのが経営方針で、その中でも「社員とその家族の幸せ」が最上位に位置づけられ、人事部を中心にいろいろな取り組みがなされているのだそうです。
日本でも、週休3日制導入に取り組む会社はいくつもでてきています。しかし、その目的は様々。目的に従って、具体的な方法も異なってきます。
例えば、働ける日数に制限のある人でも雇いたいという意図で、週4日勤務で1日の労働時間は10時間として、週5フルタイムと同等の時間働くことを要求する場合もあります。1日の労働時間は8時間のままで、週5フルタイムの場合と比べて基本給を下げる、というパターンもあります。
サタケの場合は、あくまで社員の生活をよくするためなので、週4日勤務になっても1日の労働時間は伸ばさず、給料は維持することを目指しています。
完全週休3日を実現するために必要なことは何かを尋ねると、宗貞さんはふたつの重要なポイントを挙げました。
「ひとつは、お客さまに迷惑や負担をかけずにやっていくことができるかどうか。
もうひとつは、社内の無駄や無理をどれだけ減らし、意味のある仕事をして、利益を確保できるか、ということですね。それがあって初めて社員の給料を維持できるわけですから」(宗貞さん)
来年以降も、例えば夏以外にも週休3日を実施するとどうなるかなど、いろいろなケースを試したり対象期間を拡大するなどし、徐々に目標に近づけていきたいという意向です。
最後にマイクロソフトの取り組みについて伺ってみたところ、「会社によって歴史も規模も異なるので、他社さんに対して言えることは特にありません」とのことでした。
確かに、一口に「週4日勤務・週休3日」と言っても、そこに向かう背景も目的もそれぞれ。「あの会社でできたからできる」というものではなく、安易に真似するのは危険でしょう。しかし、週休3日のチャレンジは「正社員=週5日勤務」という常識を疑うきっかけを与え、より良い働き方の可能性を見せてくれるという点で、社会的にも意義のあるものだと思います。