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『おいハンサム!!2』父と三姉妹“答え合わせ”スタイルのおもしろさ健在 でも映画版は見たいか

武井保之ライター, 編集者
土ドラ『おいハンサム!!2』(東海テレビ・フジテレビ系)公式サイトより

前作がコアファンの熱い支持を受けた深夜ドラマの続編、土ドラ『おいハンサム!!2』(東海テレビ・フジテレビ系)の第1話が放送された。伊藤家の父母と三姉妹は、前作から変わらぬ掛け合いを見せ、誰からも愛されるであろう心和むおもしろさは健在だった。が、気になることもある。

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笑いのなかに社会性を内包するホームドラマ

ちょっと暑苦しいけどお説教がハンサムなお父さん・源太郎(吉田鋼太郎)と何事もキレイに受け流す裏回しが上手いお母さん・千鶴(MEGUMI)、やさぐれ気味で不倫体質の長女・由香(木南晴夏)、バツイチで恋の仕方を忘れた次女・里香(佐久間由衣)、漫画家と父公認の同棲中で色気のある三女・美香(武田玲奈)というにぎやかな伊藤家が帰ってきた。

前作の空気感そのままに、三姉妹それぞれ個性を光らせながらお父さんのおやじ言動をツッコミ、お父さんは娘たちから辛辣に口撃されてもおおらかに包み込む。お母さんは達観してすべてを見守る。

そんなホームドラマだが、笑いのポイントがふんだんに盛り込まれるコメディ要素の強いなかで、現代社会におけるさまざまな問題を指摘する社会性も内包している。

お父さんのハンサムな説教はドラマメッセージの解説

本作が特徴的なのは、毎話のラストでお父さんがハンサムに娘たちに説教するのだが、そこで、その回のストーリーのなかで取り上げた社会に対するメッセージを、お父さんの言葉でわかりやすく解説しているのだ。

第1話では、ビジネスコンペでプレゼンが下手で地味に見えていた人が実は中身がいちばん伴っている人であったり、いつも近所で見かける親元で暮らす独身女性を気の毒に思っていたが実は自分なりの幸せな生活を送っていた、というシーンがあった。

ラストで家族会議を招集したお父さんは「寝違えて首にコルセットをつけていたおかげで、限定された視野と耳だけから情報が入り、物事の本質を見ることができた」と切り出す。

娘たちから「偉そうに」(長女)「疑心暗鬼になってただけでしょ」(三女)とツッコまれるが、「娘たちよ、いい男を見極められているか。人は見かけではわからない」(お父さん)。

「ツッコミどころ満載の昭和発言」(長女)「いいこと言おうとしなくていいんじゃないの」(お母さん)とガヤが入るが、「ピカピカつるつるしたものには目を奪われがち。しかしそれだけを求めると見失うものもある。その影に大量のゴミや無駄が生み出されているかもしれない。視野を広く持て」(お父さん)と締めた。

若い世代に親和性の高い現代的な映像コンテンツのスタイル

一般的なドラマでは、メッセージを番組中に声高に説明したりはしない。ふつうは視聴者それぞれに感じ取ってもらうものだろう。

ところが本作は、父と母、娘たちとの掛け合いをおもしろおかしく入れながら、この回の伝えていることはこれ、と“答え合わせ”をする。そこにカタルシスや感動はとくにないのだが、見終わったあとのスッキリ感はある。

そのわかりやすさは、現代的な映像コンテンツのひとつの見せ方になるだろう。とくに若い世代に親和性の高いスタイルになるのかもしれない。前作の人気の理由のひとつとなっていることがうかがえる。

“答え合わせ”スタイルは映画文化になじむか

一方、気になることがある。本作の映画版(6月21日公開)はどうなるのか。

10年前であれば、前作が人気があったから続編はドラマと一緒に映画も撮ろうという流れや、原作50万部ほどの物語に佐藤健や長澤まさみクラスの人気俳優をキャスティングして海外ロケで壮大感を出せばヒットするといった方程式が成立していたが、いまは時代がすっかり変わっている。

そういった企画が、コロナ禍を経て目の肥えた観客に通用しないのは火を見るより明らか。当然制作陣はそれを踏まえたうえでの映画化企画を進めてきたことだろう。

“答え合わせ”スタイルは、劇場の余韻を楽しむ映画文化とはなじみにくい気がするが、あえてそこに挑戦するのか。45分のドラマとは異なる映画版のおもしろさをどう作り上げているのか注目される。

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ライター, 編集者

音楽ビジネス週刊誌、芸能ニュースWEBメディア、米映画専門紙日本版WEBメディア、通信ネットワーク専門誌などの編集者を経てフリーランスの編集者、ライターとして活動中。映画、テレビ、音楽、お笑い、エンタメビジネスを中心にエンタテインメントシーンのトレンドを取材、分析、執筆する。takeiy@ymail.ne.jp

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