四兄妹の末っ子、しっかり者の妹を演じて。撮影終了後、急遽担当の決まったナレーションに込めた思い
俳優で劇団主宰者でもある崔哲浩が、自身の体験を基に、ある在日コリアン家族の山あり谷ありの歩みを描いた映画「北風アウトサイダー」。
本作は、確かに在日コリアンに対する偏見や差別といったセンシティブな内容が含まれている。
ひとつの社会派ドラマにもとらえられないことはない。
ただ、それ以上に伝わってくるのは、崔監督の映画に対する情熱にほかならない。
「出し惜しみは一切なし。初監督で自分のやりたいこと、描きたいことはすべて作品に注ぎこんだ!」といった監督の思いのたけが作品にあふれている。
そして、その監督の思いに応えた俳優たちがそれぞれの役で大きな存在感を放つ。
本作についてはすでに崔監督のインタビューを4回(第一回・第二回・第三回・第四回)にわたって届けた。
続いて登場いただくのは、出演者のひとり、櫂作真帆。
「北風アウトサイダー」においてストーリーテラーでありキーパーソンといっていいミョンヒを演じた彼女に訊く(第一回・第二回・第三回)。(全四回)
実は、ナレーションをやると決まったのは撮影がすべて終わった後なんです!
前回は、演じた四兄妹の末っ子でしっかり者のミョンヒについてじっくり語ってもらった。
「北風アウトサイダー」において、実はミョンヒはもうひとつ重要な役割を担っている。
それは2時間半にわたるストーリーのナビゲーター。
キム一家の歩みを伝えるナレーションをミョンヒ=櫂作真帆が担当している。
「実は、ナレーションをやると決まったのは撮影がすべて終わった後なんですよ。
クランクアップして、ある程度編集してまとまったときに、ナレーションをつけるということになって。
崔さんから『ナレーションを頼みます』といわれたら、もう断れないじゃないですか(苦笑)。で『わかりました』となって、わたしが担当することになりました(笑)」
兄のヨンギが戻ってくるところとかは、
ちょっとむかついている気分が声に入っている(笑)
ナレーションにはどんな思いを込めたのだろうか?
「一応、用意されたセリフがあったんですけど、ミョンヒだったら、こう言うなとか、逆に、こういう言い方はしない、というところは崔さんに伝えて、わたしの意見を生かしていただきました。
思いとしては、キム一家のこれからの未来に思いを馳せながら、過去の思い出を振り返るような感じが伝わればいいなと。
『あのとき、こんなことあったよね、あんなことあったよね』と過去を懐かしみながら、でも、『いまこうしてみんな幸せに暮らしている。これからまたいろいろなことがあると思うけど、きっといいことがある』。そんな感じが伝わるものになってくれればと語りに思いを込めました。
でも、当然、キム一家の軌跡をミョンヒが振り返る語りですから、物語の場面によって彼女の気持ちは違う。
だから、兄のヨンギが戻ってくるところとかは、ちょっとむかついている気分が声に入っている(笑)。
ミョンヒのその時々の感情が見え隠れするものにもなっているかなと思います」
はじめは数日の撮影で終わると思っていたのが、
ここまでどっぷり入り込むことになるとは(笑)
演じたミョンヒは、登場人物ひとりひとりに目を配り、一家の全体もみわたす存在。
演じた櫂作も当初より、映画全体をみわたして、作品に関わってきた。
そして、ナレーションを担当し、撮影後に再び、「北風アウトサイダー」の物語を振り返り、細部にわたってみることになった。
これらをあわせると、もしかしたら櫂作が一番「北風アウトサイダー」を味わいつくした人物のひとりといってもいいかもしれない。
「そうかもしれないですね。
前にも話しましたけど、はじめは数日の撮影で終わると思っていたのが、ここまでどっぷり入り込むことになるとは(笑)。
でも、深く関われてほんとうによかったです」
キム一家の波乱万丈の軌跡を、劇場で体感してもらえたら
いまはひとりでも多くの人に届くことを願っているという。
「崔監督もおっしゃっていたと思うんですけど、監督のやりたいことが全部入った映画で、ほんとうにてんこ盛りの作品だと思うんです。
そのてんこ盛りの中の要素の中に必ず、その人の心にささるものがあるんじゃないかと思っています。
キム一家の波乱万丈の軌跡を、劇場で体感してもらえたらうれしいです」
「北風アウトサイダー」
監督・脚本・プロデューサー:崔哲浩
出演:崔哲浩 櫂作真帆 伊藤航 上田和光
永倉大輔 松浦健城 竜崎祐優識 並樹史朗 岡崎二朗
5/14(土)より大阪シアター・セブンにて公開、以後全国順次公開中
ポスタービジュアルおよび場面写真は(C)2021ワールドムービーアソシエーション