四兄妹の末っ子、健気な妹役に。「大柄なわたしが務めていいのか疑問で最初はお断りしました(笑)」
俳優で劇団主宰者でもある崔哲浩が、自身の体験を基に、ある在日コリアン家族の山あり谷ありの歩みを描いた映画「北風アウトサイダー」。
本作は、確かに在日コリアンに対する偏見や差別といったセンシティブな内容が含まれている。
ひとつの社会派ドラマにもとらえられないことはない。
ただ、それ以上に伝わってくるのは、崔監督の映画に対する情熱にほかならない。
「出し惜しみは一切なし。初監督で自分のやりたいこと、描きたいことはすべて作品に注ぎこんだ!」といった監督の思いのたけが作品にあふれている。
そして、その監督の思いに応えた俳優たちがそれぞれの役で大きな存在感を放つ。
本作についてはすでに崔監督のインタビューを4回(第一回・第二回・第三回・第四回)に渡って届けた。
続いて登場いただくのは、出演者のひとり、櫂作真帆。
「北風アウトサイダー」においてストーリーテラーでありキーパーソンといっていいミョンヒを演じた彼女に訊く。(全四回)
「北風アウトサイダー」崔哲浩監督との出会い
はじめに崔監督との出会いをこう振り返る。
「崔さんが、(わたしが)出演していた舞台をたまたま見に来たことが出会ったきっかけです。
そのとき、わたしは崔さんのことは存じ上げていませんでした。崔さんはたぶんほかに知り合いがいて、その舞台を見に来ていた。
で、その舞台に出演していたわたしをみて気に入ってくれたのか、崔さんの手掛けられる舞台に呼んでくださったんです。それが崔さんとの出会いでした」
ただ、その櫂作が出演した崔監督の舞台は『北風アウトサイダー』のもととなる舞台ではなかった。
でも、その舞台の噂は耳にしていたという。
「わたしは、舞台版の『北風アウトサイダー』(※『ザ・警鐘(シグナル)』『北の風に包まれて』)を見に行くことはできなかったんです。
でも、ちょっとお世話になったことのある監督さんが見に行ってて、『すごくおもしろい舞台だった。映画化したらおもしろいかも』といった話をチラッときいて、その言葉がすごく記憶に残っていたんですね。
それから、出演者に知っている子がいて、彼女からもひじょうに好評の舞台だったことはきいていました」
出演の打診は「ぜひ関わりたい」と思ったけど、最初断ったんです(苦笑)
ゆえに映画化で出演の依頼をうけたときは、「ぜひ関わりたい」と思ったと明かす。
「さきほど触れましたけど、『映画化したら』と、わたしがすごく尊敬している監督さんが言っていたことがずっと頭に残っていたので、崔さんからお話をいただいたときは『ぜひ関わりたい』と思いました。
変な話ですけど、出演することでその監督さんにもわたしが役者として成長している姿を見せられるかもという気持ちもあって。
ただ、崔さんから『ミョンヒ役を』と打診されたんですけど、最初断ったんですよ(苦笑)。生意気にも。
実は、そのときすでに舞台版をDVDでみていたんですけど、すばらしい作品で。
だから、どの役をやるかうんぬんのレベルじゃなくて、まずその作品に関われたらと思いましたし、少しでもわたし自身が力になりたかった。
少しでもいい形の作品にしたいし、最高の形にして世に出したい。
ひとりの演者というよりも、なんか作品全体のことを考える自分がいて、ミョンヒは、わたしじゃないんじゃないかと思ったんです。
DVDで舞台版をみたとき、小柄な女優さんが演じていた。わたしは身長が170センチを超えているので『でかすぎる』だろうと(笑)。
四兄妹の末っ子の妹ということをイメージしたとき、やはりなんとなく小柄な女性が想起される。
だから、わたしじゃ大きすぎるだろうと思って。『ミョンヒ役はわたしじゃないと思うんですけど』とつい口から出てしまった(笑)。
ただ、ほかの役を見回してみると、ほかにもはまる役が見当たらない(苦笑)。で、演じさせていただけるなら、させてほしいです、みたいな感じになりました」
崔さんの言葉を信じようと思いました
また、当時はこんな思いもあったという。
「いまもまだ続いてますけど、コロナ禍の中で、映像でがっつりひとつの役をまっとうするような機会がなかなかなかった。
こんなすばらしい機会をいただけるなら、やってみようと思いました。
あと、崔さんがその時点で、監督をするといっていて。監督がわたしに『ミョンヒをやってほしい』と言っているのだから、その言葉を信じようと思いました」
(※第二回に続く)
「北風アウトサイダー」
監督・脚本・プロデューサー:崔哲浩
出演:崔哲浩 櫂作真帆 伊藤航 上田和光
永倉大輔 松浦健城 竜崎祐優識 並樹史朗 岡崎二朗
全国順次公開中
東京都写真美術館ホールでの上映決定!
4/5(火) 18:00~
4/6(水)〜4/10(日) 13:00~、18:00~
4/12(火)〜4/14(木) 13:00~、18:00~
場面写真は(C)2021ワールドムービーアソシエーション