食塩を摂りすぎで胃ガンのリスクは最大1.9倍に?47万人データ【最新論文】
減ったとはいえまだまだ多い胃ガン
今回は胃ガンのお話です。
かつては、日本人の命を奪うガンとして圧倒的多数でした。しかし早期発見や治療の進歩に伴い、長生きされる方も増えてきました。
とは言え今でも、日本人男性におけるガンによる死亡では、肺ガンに続き2番目に多い原因です(女性では乳ガンに次ぐ6番目)[国立がん研究センター「がん情報サービス」] 。
可能であれば、予防するに越したことはありません。
そこで今回ご紹介するのは「食塩を控えると胃ガンになる危険性を下げられるかもしれない」というデータです。ウィーン大学(オーストリア)のセルマ・クロンシュタイナーギチェヴィッチ氏らが4月17日、国際学術誌「胃ガン」で報告した論文をご紹介します [文末文献1] 。
食卓で「いつも塩をかける」人は胃ガンのリスクが1.4〜1.9倍
今回クロンシュタイナーギチェヴィッチ氏たちが解析したのは、英国在住で胃ガンや腎臓病(塩分制限が必要)のない約47万人です。観察開始時に食卓塩の使用状況を調べ、その後の胃ガン発生との関係を調べました。
すると11年間で640人(0.14%)が胃ガンと診断されていました。
そして食卓で「いつも塩をかける」と答えた人は「めったに/決してかけない」と答えた人たちに比べ、胃ガンになる割合が1.9倍にまで増えていました。
ただ、この2グループ間では、食塩以外にも胃ガン発生に影響を与える因子の保有率が異なっていました。そこでそれらの影響を統計学的に除去(補正)したのですが、やはり1.4倍の高値となっていました。
食塩による胃ガン発生リスク増加は過去にも報告
もちろん、塩と胃ガンの間になんの因果関係はなく、「いつも塩をかける」人たちに共通している何らかの見えない因子が、胃ガンのリスクを上げている可能性もあります。
しかしクロンシュタイナーギチェヴィッチ氏たちは因果関係あり、つまり「食塩をたくさん摂ると胃ガンになるリスクが上がる」と考えています。
というのもそれを示唆する研究がこれまでにもいくつか報告されているからです。
例えば、
塩気の多い食べ物をたくさん摂る人は胃ガンになりやすい(50万名弱データ解析)
食塩摂取量の多い人、塩味が好きな人はいずれも胃ガンになりやすい(3万3千人データ解析)
などです。
ピロリ菌による発ガン性を助長?
ではなぜ食塩で胃ガンのリスクが上がるのでしょう。
クロンシュタイナーギチェヴィッチ氏たちは1つの説明として「胃粘膜を傷つけてピロリ菌の増殖を容易にする」可能性を挙げています。
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)が胃ガンのリスクを上げるという話は聞かれたことがあるでしょう[国立がん研究センター「がん情報サービス」] 。食塩がそのピロリ菌の発ガン性を助けてしまっている可能性があるというのです [根拠となった実験論文] 。
最後に
いかがでしたか?
「食塩」というと「血圧」を思い浮かべる方も多いと思いますが、胃ガンのリスクとも関連があるかも、という論文のご紹介でした。もしも「胃ガンの家系かも」と心配されている方がいらしたら、食事を見直すのも一つの手でしょう。
熱中症に用心しなくてはならない季節が近づいてきましたが、やはり過度の食塩摂取には気をつけた方が良いようです。
塩については次のような論文紹介記事も書いています。こちらもぜひ、ご覧ください。今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。ではまた!
- 「最近、塩味を感じなくなったな・・・」。それ腎臓病のサインかも、ご注意を!
- 【どっちが本当?】「減塩」で血圧は下がる?脳卒中や心筋梗塞は減らせる?臨床試験が示した真実。
- 糖尿病になりにくい人は塩を控えていた。40万人データ解析で明らかになった事実。
今回ご紹介した論文
食卓で食塩をよくかける人は胃ガンになりやすい。英国47万人観察 [2024年4月17日]。
本記事は医学論文の紹介です。データの解釈は論者により異なる場合もあります。さらにこの論文の内容を否定する論文が存在する可能性もゼロではありません。あくまでも「参考」としてご覧ください。