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糖尿病になりにくい人は塩を控えていた。40万人データ解析で明らかになった事実【最新医学論文】

黒澤恵(Kei Kurosawa)医学情報レポーター

「食塩」は「高血圧」だけでなく「糖尿病」とも関係が

「食塩」と聞くと「高血圧」を想起する方が多いと思います。でも今日は高血圧ではなく「糖尿病」のお話。

「塩を控えていた人たちは糖尿病になるリスクが低かった」という論文のご紹介です。報告したのは米国・チューレン大学のスアン・ワン氏たちです。学術誌「メイヨー・クリニック紀要」に10月11日付けで掲載されました [文末文献1]。

今回ワン氏たちが解析したのは、英国在住で糖尿病などのない健康な40万人です。UKバイオバンクという自主参加型の観察研究のデータです。

およそ12年間観察したところ、3.3%が2型糖尿病と診断されていました。

そこでワン氏たちは、観察開始時に調査した食事への食塩添加頻度の高低で分け、2型糖尿病を発症する確率を比較したのです。

食塩を足す回数が多いほど糖尿病になるリスクも高くなっていた

すると食事に食塩を「まずかけない、ほとんどかけない」人たちに比べ「時々かける」人では2型糖尿病になるリスクが相対的に11%高くなっていました(1.11倍)。

さらに「たいていかける」人の糖尿病発症リスクはさらに高く1.18倍、「いつもかける」だと1.28倍にまで増えていました。

このように食塩添加回数が増える(=かける食塩の量が増える)ほど、2型糖尿病になる確率が高くなっていたのです。逆に言えば、糖尿病になりにくい人たちは食塩を控えていたのです。

なおこれらの数字は、「食塩」以外で糖尿病発症に影響を与える様々な要因による影響を、統計学的に除去した(補正した)値です。そのためワン氏たちは「食塩摂取過多そのもの」が2型糖尿病になるリスクを高めていると考えているようです。

そしてその仕組みとしては、食塩摂取過多が引き起こす「肥満」[文末文献2] や「(2型糖尿病の原因となる)全身性の炎症惹起」[文末文献3]を挙げています。

このように糖尿病のリスクを減らすには、食塩の摂取を摂取を減らした方がよさそうです。くわて、食塩を控えて肥満が防げるなら一石二鳥です。

日本人は外食と加工食品に注意しよう

しかしこの結果を見て「今どき、食事に塩をふる人なんているの?」と思われた方も多いのではないでしょうか。日本は世界的に見ても減塩教育が徹底しています。かつて家庭やレストランのテーブルには塩や醤油が当たり前のように置かれていましたが、今では一部のチェーン店を除き珍しい光景となりました(米国では今でも当たり前のように置かれていますが)。

では私たち日本人が食塩摂取を減らすにはどうしたらよいでしょう?グラフをご覧ください。私たちが摂取する食塩(ナトリウム)の半分近くは、加工食品と外食から摂取しています(特に男性)。ならば加工食品と外食で節塩しましょう。

万国著作権条約にのっとり引用
万国著作権条約にのっとり引用

加工食品は成分表を見てできるだけNaの少ないものを選ぶ、外食では味の濃いものを選ばない、などやれることはたくさんあります。ちなみに加工食品中、最も食塩摂取量を増やすのはカップ麺、その次がインスタントラーメンだそうです [医薬基盤・健康・栄養研究所による解析] 。

なかなかつらいものがあるかとは思いますが、それで糖尿病を予防できるなら儲け物と考えましょう・・・・・。

最後に

いかがでしたか?減塩すると糖尿病になるリスクが減るという論文のご紹介でした。やはり食塩は控えた方がよさそうです。減塩が血圧や心臓病に与える影響についても、近いうちに論文をご紹介します。

「糖尿病」については以下のような「論文」紹介記事も書いています。いずれも「医学的な裏打ち」がある話。こちらもぜひ、お読みください。ではまた!

今回ご紹介した論文

  1. 食事に食塩を加える回数が多い人ほど糖尿病になりやすい
  2. 食事への食塩添加が増えると肥満が進む
  3. 食塩摂食増加で炎症性サイトカイン濃度が上昇

すべて英語論文ですが、DeepLを使えば日本語で読めます。

【注意】本記事は最新の医学論文についての紹介あり、研究結果の内容の文責は「論文筆者」にあります。また論文の解釈は論者により異なる可能性もあります。さらにこの論文の内容を否定する論文が存在する可能性もゼロではありません。あくまでもご自身の見解形成の参考としてお読みください。

医学情報レポーター

医療従事者向け書籍の編集者、医師向け新聞の記者を経てフリーランスに。15年以上にわたり、新聞社系媒体や医師向け専門誌、医療業界誌、会員向け情報誌などに寄稿。近年では医師向け書籍も共著で執筆。国会図書館収録記事数は3桁。日本医学ジャーナリスト協会会員(含筆名)。

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