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「最近、塩味を感じなくなったな・・・」。それ腎臓病のサインかも、ご注意を!【日本発・最新データ】

黒澤恵(Kei Kurosawa)医学情報レポーター

塩味への感受性で腎臓病の有無が分かる可能性

最近、あちこちでPRもしているようですが、「慢性腎臓病」(CKD)はご存知ですか?その名の通り「腎臓の病気」・・・だけではありません。実は心筋梗塞や脳卒中などの恐ろしい病気の危険性も上がっている状態、それが「CKD」なのです。

普通は血液や尿の検査をしない限り見つからないCKDですが、「塩味」への感受性低下がCKDのサインになるかもしれない、今回はそんな論文をご紹介します。

書いたのは京都府立医科大学の奥野奈津子先生たち。論文が載ったのは「国際腎臓雑誌・報告版」という学術誌。2月26日掲載の最新論文です [文末文献1] 。

「慢性腎臓病」(CKD)は「腎臓」だけの病気ではない

論文の中身に入る前に、簡単にCKDの説明をさせてください。

CKDは軽度の腎臓病です。と書くと「腎臓病ということは悪くなると透析が必要になるんだな」と考えますよね?

でも実際のCKD患者の多くは、透析が必要となるほど腎臓が悪くなる前に亡くなってしまうのです [文末文献2] 。

万国著作権条約にのっとり引用
万国著作権条約にのっとり引用

そして死因の多くは心臓血管疾患(心筋梗塞や脳卒中)だろうと考えられています。と言うのもCKDの人はそうでない人に比べ、心筋梗塞や脳卒中になりやすいからです [文末文献3]。

万国著作権条約にのっとり引用
万国著作権条約にのっとり引用

つまりCKDは「慢性腎臓病」と言う名前ですが、「透析」になりやすいだけでなく、「心筋梗塞」や「脳卒中」を起こしやすい危険な状態でもあるのです。

そしてこのCKDを見つけるヒントが、塩味への感受性に隠れていました

では本題に入りましょう。

CKD患者には海水を飲んでも「塩辛くない」と感じる人が!

奥野先生たちはCKDの人たちとそうでない人たちに塩水を飲んでもらい、塩味をどう感じるか比べてみました。

すると、CKDではない人たちでは7割が「塩の味がする」と答えた塩水でも、CKDの人たちの4割ちょっとは「塩の味がしない」と答えたのです。

さらにCKDのない人たちでは塩水の濃度が「1.5%」を超えると「塩辛い」と感じる人が出てくるのに対し、CKDの人たちは「5%」になって初めて「塩辛い」と感じていました。

海水の食塩濃度が「3.5%」と言われているのを考えると、CKDの人たちでは塩への味覚がどれだけ落ちているかよく分かるでしょう。

味覚異常をヒントにCKDを見つけよう

これを逆に考えれば、塩味に鈍感な人はCKDである可能性が高いということになります。検査が必要かどうか、かかりつけの先生に相談した方が良いでしょう。

またご自身がそうでなくても、まわりに「塩音痴」、あるいは急に塩辛いものが好きになった人がいたら、ぜひこの話を教えてあげてください。

どうしても「減塩」できない人も同様です。意思が弱いのではなくCKDで味覚がおかしくなっているのかもしれません。

まとめ

いかがでしたか?塩味に鈍感な人はCKDである可能性が高いかも、というお話でした。繰り返しになりますが、CKDは腎臓だけの病気ではありません。早めに発見して治療しましょう。

「腎臓」を取り上げるのは今回が初めてですが、「肝臓」なら次のような論文紹介記事を書いています。こちらもぜひ、ご覧ください。ではまた!

今回ご紹介した論文

  1. 慢性腎臓病患者は塩味への感受性が低下している。
  2. 慢性腎臓病患者の多くは、腎機能が低下して透析が必要となる前に他の疾患で死亡する。
  3. 慢性腎臓病があると、心筋梗塞や脳卒中になりやすい。

どれも英語論文ですがDeepLなどの無料翻訳を使ってぜひ、ご自身でもトライしてみてください!

【注意】本記事は医学論文の紹介です。研究結果の文責は「論文筆者」にあります。また論文の解釈は論者により異なる場合もあります。さらにこの論文の内容を否定する論文が存在する可能性もゼロではありません。あくまでも「参考」としてご覧ください。

医学情報レポーター

医療従事者向け書籍の編集者、医師向け新聞の記者を経てフリーランスに。15年以上にわたり、新聞社系媒体や医師向け専門誌、医療業界誌、会員向け情報誌などに寄稿。近年では医師向け書籍も共著で執筆。国会図書館収録記事数は3桁。日本医学ジャーナリスト協会会員(含筆名)。

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