北朝鮮、新型ICBM「火星17」発射成功と発表 金正恩総書記は現地指導に妻と娘を同伴
北朝鮮国営メディアの労働新聞は11月19日、金正恩(キム・ジョンウン)総書記の現地指導の下、新型で世界最大級の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の「火星17」の発射に成功したと報じた。金正恩氏は李雪主(リ・ソルジュ)夫人と娘を同伴した。金正恩氏の娘の姿が公開されるのは初めて。
北朝鮮は、アメリカ全土を射程に収める新型ICBMの発射成功という軍事力の後ろ盾を得て、日米韓に対してさらに強硬になり、7回目の核実験に踏み切る可能性がある。一方、日米韓は北朝鮮の軍事的な挑発活動に対峙するため、さらなる合同軍事演習や国連安全保障理事会での対北朝鮮制裁の推進など強力な対応を取ることが予想される。
労働新聞は、「核には核で、正面対決には正面対決で」との見出しを付けた記事とともに火星17の発射シーンを含む数々の写真を掲載した。そして、金正恩氏の娘も発射現場に立ち会ったことを明らかにした。金正恩氏と手を繋いで歩いたり、李雪主夫人のそばに立ったりしている白い服を着た少女が写真に写っている。愛国心があふれて祖国と家族を大事にする「北朝鮮版ロイヤルファミリー」を演出する狙いがあるとみられる。建国の父、金日成(キム・イルソン)から続く「白頭山の血統」のアピールの一環だ。
労働新聞は娘の名前に言及しなかった。しかし、米プロバスケットボール協会(NBA)の元スター選手、デニス・ロッドマン氏は2013年、金正恩氏の家族と「リラックスした時間」を過ごした後、金正恩氏には「ジュエ(Ju Ae)」という名前の娘がいることを明らかにした。
労働新聞は、平壌国際飛行場で18日に発射された火星17が最高高度6040.9キロまで上昇し、距離999.2キロを4135秒(約69分)間飛行して朝鮮半島東側の東海(日本海)公海上の予定水域に正確に着弾したと報じた。
これは防衛省が18日に発表した内容とほぼ一致する。防衛省は今回のICBMの軌道が飛行距離が約1000キロ、最高高度が約6000キロ、飛翔時間69分と推定していた。
米カーネギー国際平和基金のシニアフェロー、アンキット・パンダ氏は19日、NKニュースの取材に対し、火星17の発射成功は「一種の世界記録」であると述べた。
パンダ氏は「統合的な移動式発射台(TEL)からこれほど大きな液体推進剤ミサイルを発射した人はこれまで誰もいない」と指摘、「火星17は、多くの点で実践的でないほどに大きい」と述べた。
韓国軍によると、北朝鮮は今年に入り、今回を含め、合計8回のICBMを発射した。2月27日と3月5日、3月16日には火星17を発射した。3月24日には北朝鮮は火星17と称するICBMを発射し、初めて成功したと発表した。しかし、韓国軍はこのICBMが既存の火星15と判断した。また、5月4日と25日にもICBMを発射した。
労働新聞は「試射の結果を通じて、わが国家戦略武力を代表することになる新型重要戦略兵器システムに対する信頼性と世界最強の戦略兵器としての威力ある戦闘的性能がはっきり検証された」と強調した。
さらに、労働新聞は「(金正恩氏が)試射成果について激励しながら、われわれの核戦力がいかなる核威嚇も抑止できる信頼するに足るもう1つの最強の能力を確保したことについて再三確認するようになったと述べた」と伝えた。さらに、「(金正恩氏が)敵が核打撃手段を頻繁に引き入れながら引き続き威嚇を加えてくるなら、わが党と共和国政府は断固として、核には核で、正面対決には正面対決で応えるだろうと厳かに宣明した」と報じ、日米韓の3カ国連携に強く対峙していく姿勢を示した。
今後の方針については、金正恩氏が核戦略武器を絶えず拡大強化していく方針を改めて表明。「陸間弾道ミサイル部隊と全ての戦術核運用部隊では高度の警戒心を持って訓練を強化し、任意の状況と時刻にも自らの重大な戦略的任務を完璧に遂行していかなければならない」と述べた。
労働新聞によれば、火星17の試射には趙甬元(チョ・ヨンウォン)朝鮮労働党組織書記、李日煥(リ・イルファン)党書記、全賢哲(チョン・ヒョンチョル)党書記、李忠吉(リ・チュンギル)党科学教育部長、金正植(キム・ジョンシク)党軍需工業部副部長をはじめとする党中央委員会の主要幹部らが参加した。
●金正恩氏「戦略・戦術兵器の実戦配備を不断に推進する」
「戦略・戦術兵器の実戦配備を不断に推し進め、戦争抑止力を一段と強化するために総力を集中すべきだ」。北朝鮮の金正恩総書記は9月8日、最高人民会議でこう述べた。
北朝鮮はかつてない異例の頻度で同国の東西両岸など様々な場所から日本海と黄海、太平洋に向けてミサイル発射を繰り返し、戦略核兵器と戦術核兵器の実戦配備を急いでいる。このため、今後も短距離弾道ミサイルや中距離弾道ミサイル(IRBM)、ICBMなど韓国、日本、グアム、米本土を仮想標的としたミサイル発射を続ける可能性が高い。北としては核先制使用の戦争ができる実戦力を得て誇示したい。戦術核兵器搭載のための核弾頭のさらなる軽量化や小型化を目指し、7回目の核実験が予想される。
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