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トランプ氏が勝利宣言「米国民が国の支配権を取り戻した日として永遠に記憶されるだろう」 米大統領選

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 大統領選の決戦の火曜日。

 ロサンゼルスではラティノ系の人々の投票状況が注目されていたことから、ラティノ系住民の人口が多いイースト・ロサンゼルス地区にあるイースト・ロサンゼルス・コミュニティー・カレッジの中の投票所を訪ねた。キャンパスを歩く学生たちはほとんどがラティノ系。投票所に向かう人々もラティノ系の人々ばかりで、アメリカにいることを忘れてしまいそうになった。

 彼らは誰に投票したのか? “I Voted”というステッカーを貼っている、投票を終えた人々に話をきいた。

政策を重視して投票

 多くの人々が政策を重視して投票していた。

「カマラに入れた。彼女はアメリカを分断ではなく団結させようとしている。分断している今、赤であっても青であってもサポートしあうことが重要だ。トランプは関税を上げると言っているのが気になる。関税を上げたら、結局、消費者物価は上がるだろう。トランプはいいビジネスマンとは言えなかった。親の財産を引き継いでビジネスをしていただけだ。彼は普通のアメリカ人の気持ちは理解できていないと思う。今回の選挙では、トランプを支持しているラティノもいるが、全体としてみれば、ラティノコミュニティーはやはりハリス支持が多いと感じる。トランプはプエルトリコに関する暴言を吐いたり、移民を大量国外追放すると言及したりしているからね」

と話したのは学生のクリストファーさん。

 しかし、クリストファーさんと一緒にいた友人のウォンさんはトランプに入れたという。

「トランプに入れた。アメリカは間違った方向へ向かっている。チェンジが必要だと思うんだ。中絶の権利を重視している人は民主党に入れるだろうが、僕は国境問題や外交政策を重視している。ウクライナ支援に予算が行き過ぎだ。それに台湾も攻められるかもしれないから、強いリーダーが求められている。中東で起きている問題もトランプなら今の政権よりは上手く対処できると思う。不法移民が多いのも問題だ」

 ある匿名の学生も「トランプに入れた。トランプは経済状況を良くしてくれると思う。それにラティノのことも好きだと言っているからね」と話した。

女性は中絶の権利をプロテクトするハリス支持

 もっとも、話をきいた多くの人々がハリス氏に入れていた。女性たちは、やはり、ハリス氏が中絶の権利をプロテクトしていることを重視して入れたという。

「カマラに入れた。女性の中絶の権利をプロテクトしているし、アフォーダブル・ケア・アクトもプロテクトしている。銃暴力が頻発しているから銃規制も行おうとしている。カマラは人々のことをケアしていると思う。それに、私は労働者階級だしね。トランプは経済政策の点から支持している人が多いけど、彼らは気づいていないと思う。トランプが大統領だった時に景気が良かったのは、オバマ政権時代のポリシーの影響を受けていたということに。今、インフレが起きているのはトランプ政権時代のポリシーの影響だと思う」

と投票にきたジェイさんは話した。

トランプは金持ちしか助けない

 民主党をずっと支持してきたことを理由に、ハリス氏に入れた人もいた。

「ハリスに入れた。私は共和党には入れたことはこれまでない。ずっと民主党に入れている。今回はトランプに入れている人もいるが、なぜかわからない。金のためだろう。共和党は金持ちのための政党だ。トランプは自分のような金持ちしか助けない。貧困層は助けようとしないんだ」

 「投票しない」と言う学生もいた。

「トランプもハリスもどっちもどっち。それぞれに、良いところ、悪いところがあるから、どっちって決められないんだ」

「政治には興味がないから投票しない。それより、大学の勉強の方に集中したい」

トランプがアメリカの大統領になる未来が怖い

「ロサンゼルス・コミュニティー・カレッジ・ディストリクト」のプレジデント、ニシェル・ヘンダーソン氏。筆者撮影。
「ロサンゼルス・コミュニティー・カレッジ・ディストリクト」のプレジデント、ニシェル・ヘンダーソン氏。筆者撮影。

 投票に消極的な学生たちもいるからだろう。投票所の前には「あなたは投票した?」と行き交う人々に投票を呼びかけている黒人の女性がいた。ロサンゼルス市内に9つあるコミュニティー・カレッジを統括している「ロサンゼルス・コミュニティー・カレッジ・ディストリクト」のプレジデント、ニシェル・ヘンダーソン氏だ。

「投票することが大切。票は社会を変えることができるから」

と話すヘンダーソン氏はハリス氏に入れたという。

「カマラは移民や労働者をサポートしているし、教育政策にも力を入れてくれる。トランプはレイシストで国を分断している。彼は大統領時代、移民の親子を離れ離れにするようなことをした。許されることではない。トランプがアメリカの大統領になる未来が怖い。

 今回は、黒人の男性の中にもトランプを支持している人がいるが、それでも大多数はハリスを支持している。トランプを支持している人はバイデン政権の4年間がいやなのだ。4年一期だけで彼らが望むような社会にするのは難しいものなのに。それに、大統領選の時は、人は現政権の問題を論って非難する傾向もある。また、いろいろな理由で苦しい状況に置かれている人も非難する傾向があると思う。 

 ハリスが勝つと思う。アメリカの有権者は、ヒューマニティーを大切にしている人に自由世界の大統領になってほしいと考えていると思う。そう信じたい」

サンタモニカにある民主党のキャンペーンオフィスで行われた開票ウオッチパーティー。筆者撮影。
サンタモニカにある民主党のキャンペーンオフィスで行われた開票ウオッチパーティー。筆者撮影。
スポーツバーで行われた共和党支持者の開票ウオッチパーティー。筆者撮影。
スポーツバーで行われた共和党支持者の開票ウオッチパーティー。筆者撮影。

トランプ氏が勝利宣言

 有権者はハリス氏を勝利に導いてくれる。そう信じ、願っていたヘンダーソン氏だったが、同氏の願いはかなわなかった。トランプ氏が激戦州のノースカロライナ州、ジョージア州、ペンシルベニア州で勝ち、大統領選勝利まであと3人の選挙人の獲得まで迫って、勝利を確実なものにしたからだ。トランプ氏は一昨日、ABCニュースのインタビューで「火曜日の夜までに国民は勝者を知るだろう」との見方を示していたが、その予測通りになった形だ。

 7つの激戦州ではまだ開票が続いているものの、トランプ氏は残りの激戦州でもハリス氏を凌いでいる状況だ。一方、ハリス氏は明日スピーチを行う予定で、民主党の選挙本部は閑散としている。

 勝利を確実なものにしたトランプ氏は、パームビーチコンベンションセンターで「USA、USA」と大きな掛け声があがる中、勝利宣言を行った。

 トランプ氏は「見たこともないムーブメントだ。素晴らしい政治ムーブメントだった。国境を、国の全てを直す。あなたや家族のために闘う。アメリカを再び偉大にする。我々はあなた方に恩返しする。我々は最高の仕事をする。この日は、アメリカの人々が国の支配権を取り戻した日として永遠に記憶されるだろう」と述べ、選挙のサポートをしたイーロン・マスク氏について「スター誕生だ。彼は素晴らしい」と称賛した。J.D.ヴァンス氏も「たった今、私はアメリカの歴史の中で、最も素晴らしい政治的なカムバックを目撃した」とトランプ氏を讃えた。

 米国史上最高齢で、1期飛びの2期目の大統領にもなるトランプ氏は、スローガンの通り、アメリカを再び偉大にすることができるのか? 

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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