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元インターンが見たハリス氏の“おぞましい一面” 目も合わせられなかった! 暴露記事が指摘 米大統領選

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 米大統領選は、いよいよ、投票日までのカウントダウンに入った。

 様々な世論調査サイトの結果をもとに総合的に支持率を割り出している「リアル・クリア・ポリティクス」によると、米国時間11月1日時点での支持率は、トランプ氏48.4%、ハリス氏48.1%と接戦が続いており、激戦州7州では、ウィスコンシン州とミシガン州以外の5州でトランプ氏が優位に立っている状況だ。

人格的にはハリス氏の方がポイントが高い

 大統領選では、有権者は、政策はもちろん、大統領候補が大統領職に相応しい人格を持っているかどうかにも注目する。ピューリサーチセンターが9月に報告した世論調査の結果によると、パーソナル・トレイト(個人の性格的特性)においては、冷静さ、誠実さ、良いロールモデルか、現実的か、人々のニーズをケアしているかなど多くの点でハリス氏がトランプ氏を凌いでいる。人格的には、ハリス氏の方がトランプ氏よりも大統領職に相応しいと評価されていることがわかる。

 トランプ氏が10月27日、ニューヨークで行った選挙集会では、登壇したコメディアンのトニー・ヒンチクリフ氏が「プエルトリコはゴミの浮島」と発言して非難されたが、同氏から人種差別的発言が飛び出したのは、トランプ氏がこれまで人種差別的発言を重ねてきたことを反映してのことだろう。そんな発言をしてきたトランプ氏は、ハリス氏よりも大統領職に相応しい人格を持っているとは考えられていないのだ。

 では、ハリス氏はどうだろう? ハリス氏は、部下に対して厳しく、部下の離職率が高いという問題が指摘されていた。副大統領就任後の3年間で、スタッフ47人中43人が辞め、スタッフの離職率は92%とも報じられた。元スタッフは「カマラの場合は、絶えず心を打ち砕かれるほどの批判に耐えなければならない」とも言及している。ハリス氏もまた、人格的に問題があるのだろうか?

元インターンが見た、“おぞましい一面”

 ハリス氏の“知られざる一面”を暴露している意見記事がある。カリフォルニア州ネバダ郡で発行されている新聞「ザ・ユニオン」に2019年11月に掲載された記事で、有力紙ワシントン・ポストでも取り上げられた。当時、カリフォルニア州選出の連邦上院議員を務めていたハリス氏は、2020年米大統領選の民主党大統領候補を選出する予備選挙に立候補していた。「カマラ・ハリスにあるもう一つの側面」と題されたその意見記事には、ハリス氏がカリフォルニア州司法長官を務めていた時代に、同氏の事務所でインターンとして働いたグレゴリー・マカティア氏の体験が記されている。記事を書いたのは、グレゴリー・マカティア氏の父親で、カリフォルニア州ネバダ郡元教育長のテリー・マカティア氏。テリー・マカティア氏の父親はサンフランシスコ行政官及び州上院議員を務めていた。マカティア家はサンフランシスコで政治に関わる仕事をしてきたわけである。

 テリー・マカティア氏は記事の中で、「ハリス上院議員は優れた演説家で、公職に就いている間、素晴らしい業績を残してきたので、私は今のハリス上院議員に異を唱えるつもりはありません。しかし、彼女がスタッフをどう扱うかは、彼女の立法上の業績と同じくらい重要だと思います。大統領職に就きたい人にとって、人格はおそらく最も重要な資質の1つだからです」と人格の重要性を説きつつ、「ハリス氏には、一般の人々が知らない別の側面がある」と述べ、息子のグレゴリー・マカティア氏がハリス氏の事務所で1ヶ月間インターンを務めた際に体験した4つのエピソードを以下のように紹介している。

「グレゴリーは、ハリス氏の事務所で、誰も予想していなかった驚くべき体験をしました。彼にとって、その1ヶ月は早く過ぎ去ってほしいものだったのです。

 ハリス氏は、スタッフや他の人々を叱責する際に、常に“Fワード(Fで始まる罵り言葉)”や汚い言葉を口にしています。スタッフはハリス氏を完全に恐れており、彼女は一日中汚い言葉を使っています。

 司法長官のハリス上院議員は、毎朝オフィスに入ってきたら、立ち上がって『グッド・モーニング、ジェネラル(将軍、長官などトップの役職のこと)』と言うよう、スタッフ全員に指示していました。

 1ヶ月間のインターンシップ中、ハリス氏は1度も息子に自己紹介をしませんでした (息子は20 人の有給の従業員がいる事務所でただ1人のインターンでした)。スタッフは彼女に怖気づいており、息子を彼女に紹介できなかったのです。息子は、勤務最終日にハリス氏が署名した感謝文をもらっただけでした。

 グレゴリーはまた、ハリス氏に話しかけたり、目を合わせたりしないよう指示されていました。その特権は上級スタッフにのみ認められていたからです。

 そこはスタッフをリスペクトする人の職場とは言えません。有色人種の女性が部屋に入ってきた時に従業員を立たせるのは、私たちアメリカ人が嘆き、屈辱的だと感じる、過ぎ去った時代の匂いがします。さらに、彼女が質の高いリーダーシップスキルや、まともな上司であることさえ示さなかったこと、ましてやグレゴリーに月に1度も『こんにちは、私はカマラ・ハリスです。私の事務所でボランティアをしてくれてありがとう』と声をかける“品格”さえ示さなかったことは、本当に困ったものです。最後に『彼女の目を見てはいけない』という指示はいったい何なのでしょうか? 私はそんな敵対的な環境で働きたくないと思います」

 最後に、同氏は、「誠実さと人格は、私たちの政治家や政治が守るべき美徳です。ただ、私たちはしばらくそれを目にしていないだけなのです」と嘆いている。

ハリス氏はトランプ氏を「ファシスト」と非難したが...

 先日、ハリス氏は、トランプ氏が大統領在任中、ヒトラーは「良いこともやった」と発言したと元高官が暴露したことに対し、トランプ氏を「ファシスト」と非難した。しかし、暴露記事とも言うべきこの記事を読む限り、トランプ氏のようなあからさまな暴言や差別的発言は吐かないものの、ハリス氏自身もファシストが持つ権威主義的な“おぞましい一面”を内包しているということだろうか。

 もっとも、同氏の記事に反論する声もある。ハリス氏の司法長官事務所で補佐官を務めていたダニエル・スバー氏は、マカティア氏のこの意見記事を取り上げた有力紙ワシントン・ポストの中で、「彼女は自分自身に非常に高いスタンダードを課している。従って、チームにも非常に高いスタンダードを課しているのだ」「マカティア氏の主張は完全なる虚偽だ。彼女はスタッフから“ジェネラル”と呼ばれるのを嫌がっていた」とハリス氏を擁護している。

“大統領選のノストラダムス”はハリス氏勝利を予測

 ところで、有権者は人格にどのくらい重きを置いて投票するのだろうか?

 “大統領選のノストラダムス”というニックネームを持つ、アメリカン大学歴史学教授のアラン・リクトマン氏は13の指標をベースに1984年以降の大統領選の勝者を的中させてきたが、13の指標中、大統領候補の人格にフォーカスしているのは2つだけで、4つは与党の現状に関する指標、7つは与党の政権運営に関する指標と人格にはあまり比重を置いていない。

 そのリクトマン氏は、9月、ハリス氏が勝利するとの予測を出したが、投票日直前の今も、ハリス氏勝利という予測を変えていない。

 同氏は、13の指標のうち、6つ以上が、与党候補にとってネガティブなものとなった場合、与党候補は負けると見ている。今回の大統領選では、中間選挙、現職大統領、外交政策、カリスマ性の4つが与党候補にとってネガティブなものとなっているというのが同氏の見方だ。与党民主党は2022年の中間選挙で下院は共和党に奪還されて敗北し、与党候補は現職大統領ではなく、民主党は中東で起きている紛争に対処できていないことから外交政策で失敗し、与党候補にはカリスマ性がないからだ。しかし、13の指標のうち、与党候補にネガティブなものは6つ以下であることから、同氏は与党候補、つまり、民主党のハリス氏が勝利すると見ているのである。

 人格の点では、同氏は、「大統領候補がカリスマ性があるか、または、英雄視されているか」を見ているが、ハリス氏も、チャレンジャーのトランプ氏もカリスマ性がないと分析している。もっとも、人により見方は異なるし、バイアスもかかるものだ。トランプ支持者の多くは、ことに、暗殺未遂事件で見せたトランプ氏の勇姿を脳裏に焼き付け、同氏について「カリスマ性があり、英雄視されている」という見方をしているのではないだろうか。

 トランプ氏は、ハリス氏にはない“それ”を持っているという見方もある。「好むと好まざるとにかかわらず、認めると認めないにかかわらず、トランプ氏にはつかみどころのない“それ”がある。“それ”は買うことも、作り出すことも、偽ることもできない。持っているか、持っていないかのどちらかだ」とホワイトハウスとペンタゴンで高官を務めたダグラス・マッキノン氏は米ニュースサイトThe Hillに寄稿している。

 果たして、アメリカの有権者は大統領候補の人格をどれほど重視して、投票日にどのような判断を下すのか? 

(飯塚真紀子・著 米大統領選関連記事:Yahoo!ニュース エキスパート )

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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